抗血栓トライアルデータベース
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Greater Cincinnati/Northern Kentucky Stroke Study
結論 虚血性脳卒中発症前60日以内の抗血小板薬,抗凝固薬の中止は虚血性脳卒中の5.2%に関連していた。周術期の抗血栓療法について慎重に判断すること,患者のコンプライアンスを改善することが必要である。
コメント 地域の虚血性脳卒中患者に占める抗血栓薬中断の関与を頻度で具体的に分析した興味深い論文である。虚血性脳卒中患者の5.2%に中断の影響があることや,その半数がワルファリンであり,退院時転帰が不良で死亡率が高いことなどが明らかにされた。今後,新しい抗凝固薬や抗血小板薬が数多く登場しつつある状況において,周術期管理や服薬コンプライアンスの貴重な参照研究となろう。(岡田靖

目的 抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬)を中止すると虚血性脳卒中や他の血栓事象リスクが上昇することが先行研究で報告されているが,その発症頻度は明確になっていない。本論文では,Greater Cincinnati/Northern Kentucky Stroke Studyの患者記録から2005年に発症した虚血性脳卒中を同定し,虚血性脳卒中と抗血栓薬中止の時間的関連を検討する。
デザイン 集団ベース研究。
セッティング 多施設(17施設),米国。
期間 試験期間は2005年。
対象患者 2090例。本研究対象地域(オハイオ州およびケンタッキー州の合計5つの郡)において2005年に発症した初発/再発の虚血性脳卒中患者。
【除外基準】―
【患者背景】平均年齢は非抗血栓療法群67.3±0.49歳*1,服用群73.1±0.40歳,中止群72.4±1.03歳。各群の女性55.6%,56.1%*2,40.3%。虚血性脳卒中既往10.5%*1,31.3%,37.7%。心房細動8.2%*1,22.9%*3,41.2%。ベースライン時のNIHSS幾何平均4.8(95%CI 4.5-5.0),5.0(4.8-5.3),5.7(4.9-6.7)。
*1p<0.0001(非抗血栓療法群 vs. 服用群+中止群),*2p=0.001(服用群 vs. 中止群),*3p<0.0001(服用群 vs. 中止群)
治療法
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
虚血性脳卒中は2090例,2197件(初発1710件+再発487件)同定された。
発症時の抗血栓薬服用状況により以下の3群に分け,比較を行った。
非抗血栓療法群:999件(45.5%)。発症前60日以内に抗血栓療法を受けていない症例。
服用群:1084件(49.3%)。発症時抗血栓薬を服用していた症例。
中止群:114件(5.2%)。発症前60日以内に抗血栓薬服用を中止した症例。
中止群の虚血性脳卒中は初発71例(62.3%),再発43例(37.7%)。抗血栓療法の内訳はwarfarinが61例(53.5%),残りは抗血小板薬(aspirin,clopidogrel,aspirin+徐放性dipyridamole)であった。
中止群において,抗血栓療法の中止が医師の指示によるものは79件(手技のため54件,出血のため15件など),患者理由による中止は35件(ノンコンプライアンス19件,経済的理由10件など)であった。虚血性脳卒中の発症は中止後2週間の間が多かった(手技のため中止した54件では第1週に30件,第2週に14件発症)。
退院時のmodified Rankin Score(mRS) 0~2またはベースライン時への回復は非抗血栓療法群41.3%,服用群43.9%,中止群33.3%で,服用群は中止群に比し高かった(p=0.03)。
90日後の死亡率は16.0%,18.7%,28.1%で,非抗血栓療法群は服用群+中止群に比し(p=0.03),服用群は中止群に比し(p=0.02)低かった。
1年後の死亡率は24.9%,29.2%,42.1%で,90日後の死亡率と同様に非抗血栓療法群は服用群+中止群に比し(p=0.004),服用群は中止群に比し(p=0.005)低かった。

●有害事象

文献: Broderick JP, et al. Withdrawal of antithrombotic agents and its impact on ischemic stroke occurrence. Stroke 2011; 42: 2509-14. pubmed
関連トライアル BAT, Béjot Y et al, Flaherty ML et al, GWTG-Stroke Registry risk of sICH, Hylek EM et al, North Dublin Population Stroke Study, SPAF I-III 1999, SPAF I-III 2000, WASID subgroup analysis, WASID antithrombotic failures
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