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Jung S et al Three-month and long-term outcomes and their predictors in acute basilar artery occlusion treated with intra-arterial thrombolysis
結論 脳底動脈閉塞に対する動脈内血栓溶解療法は安全であった。入院時のNIHSSスコアおよび年齢は転帰の予測因子であった。
コメント 長期予後に注目した脳底動脈閉塞症に対する動脈内血栓溶解療法の予後予測では年齢,入院時NIHSSが重要な因子となる。本研究で再開通は治療決断後の事象であるため分析に加えていないが,有意な転帰改善の要素であり,糖尿病の存在は再開通率を低下させる。2004年以降の治療成績はそれ以前に比べて良好となっており,薬物およびデバイスの複合治療の進歩が予後改善に関連していることが示唆される。(岡田靖

目的 脳底動脈閉塞に対する動脈内血栓溶解療法は大規模ランダム化試験が行われておらず,治療後の転帰には幅があるとされている。本論文は,その治療効果および臨床転帰の予測因子を同定する。
デザイン 前向き登録研究。
セッティング 単施設,スイス。
期間 患者登録期間は1992年5月1日~2010年5月31日。
対象患者 106例。1992年5月1日~2010年5月31日の間に動脈内血栓溶解療法を行った脳底動脈閉塞患者。
【除外基準】―
【患者背景】平均年齢は61.6±15.1歳。女性38.7%。リスク因子:高血圧61.9%,糖尿病14.3%,喫煙17.1%,高コレステロール血症45.2%,心房細動16.7%,冠動脈疾患14.4%,一過性脳虚血発作既往19.2%,脳卒中既往10.4%。脳卒中の病型:大血管疾患26.4%,心原性30.2%,その他8.5%,不明34.9%。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア中央値18.5(3~36)。脳底動脈閉塞のタイプ:近位側41.5%,中間部24.5%,遠位側34.0%。症状発現から治療までの時間中央値330(80~1472)分。
治療法 CTまたはMRI撮影後,以下の場合に動脈内urokinaseかつ/または機械的インターベンションを施行した。(1)脳底動脈閉塞と確診,(2)NIHSSスコア≧4または片側視野欠損がある,(3)頭蓋CTまたはMRIで出血を除外,(4)デジタル・サブトラクション血管造影で神経学的欠損に関連する脳底動脈閉塞,(5)症状持続時間が24時間を超えていない,(6)血栓溶解療法施行を不可とする状態や所見がない。
椎骨動脈狭窄および対側形成不全患者では椎骨動脈ステントを,動脈内血栓溶解療法直後の血管造影で重篤な血行動態障害が残存する場合は脳底動脈ステントを施行。
動脈内血栓溶解療法後は全例にASA 250~500mgを静注したが,抗血栓薬追加投与は行わなかった。
追跡完了率 3カ月の追跡終了は生存者全例(95例),長期追跡終了は94例。
結果

●評価項目
3カ月後の転帰良好[modified Rankin Score(mRS) 0~2]は35例(33.0%),中等度の障害(mRS 3)は12例(11.3%),死亡は43例(40.6%)であった。部分/完全再開通(TIMI血流分類 2~3)は74例(69.8%)で得られた。症候性頭蓋内出血は1例(0.9%)であった。
3カ月後と長期(12カ月以上)追跡後の間に転帰が変化した(p<0.0001)。生存者22例(40.8%)がmRS 1点以上の改善を示し,機能的不変は29例(53.7%),3例(5.7%)は悪化した。
多変量解析によると,予測因子は以下の通りであった。
[血管再開通不良の予測因子]
糖尿病:OR 0.273;95%CI 0.086-0.867,p=0.028。
[3カ月後の良好/中等度の転帰(mRS 0~3)の予測因子]
NIHSS:OR 1.085;95%CI 1.042-1.130,p<0.0001。
[長期の良好/中等度の転帰(mRS 0~3)の予測因子]
NIHSS:OR 1.095;95%CI 1.045-1.148,p<0.0001。
年齢:OR 1.043;95%CI 1.007-1.080,p=0.018。
[3カ月後の生存の予測因子]
NIHSS:OR 1.071;95%CI 1.029-1.114,p=0.001。
年齢:OR 1.044;95%CI 1.010-1.079,p=0.012。

●有害事象

文献: Jung S, et al. Three-month and long-term outcomes and their predictors in acute basilar artery occlusion treated with intra-arterial thrombolysis. Stroke 2011; 42: 1946-51. pubmed
関連トライアル Mikulik R et al 2009
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