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メタ解析
VTE再発予防療法の至適期間
Influence of preceding length of anticoagulant treatment and initial presentation of venous thromboembolism on risk of recurrence after stopping treatment: analysis of individual participants' data from seven trials
結論 静脈血栓塞栓症(VTE)再発予防について,抗凝固療法を3カ月で終了した場合の再発リスクは,それ以上継続した場合と同等であった。特発性の近位側深部静脈血栓症(DVT),肺塞栓症(PE)は抗凝固療法終了時期にかかわらず再発リスクが高かった。
コメント 本検討からは,これまでのガイドラインに記載されているように,明らかな誘発因子を有して発症したVTEでは3カ月間の抗凝固療法の継続が最適であること,特発性VTEでは抗凝固療法の継続期間に関わらず中止すれば再発のリスクが高いことを考慮した投与期間の設定が求められることを裏付けした形となった。また,明らかな誘発因子を有した遠位側限局DVTでは,抗凝固療法中止後の再発率が近位側DVTや肺血栓塞栓症に比べ有意に低く,至適継続期間については改めて検討が必要と思われた。(山田典一

目的 急性期治療が終了したVTE患者において,再発予防のための抗凝固療法(ビタミンK拮抗薬)の期間と治療のベネフィット/リスクの関係を検討した無作為化試験(RCT)はこれまで複数行われているが,抗凝固療法の至適期間は明らかになっていない。本解析では,抗凝固療法の期間およびVTEの臨床所見が抗凝固療法終了後の再発リスクに及ぼす影響を検討し,再発リスクを最小化する抗凝固療法の最短期間を同定する。
方法 VTE治療のための抗凝固療法について,さまざまな治療期間の比較を行ったRCT 7件についてプール解析を行った。
対象 RCT 7件*(ODAC,DOTAVK,DURAC 1,LAFIT,WODIT DVT,WODIT PE,SOFAST)。
[各試験の対象患者]2925例。確定診断のついた初発のDVTまたはPE患者;診断時に癌が認められなかった症例(ODACは癌患者も対象に含めたが,本解析からは除外);異なる期間の抗凝固療法を施行(標的INRは2.0~3.0または2.0~2.85);抗凝固療法終了後前向きに追跡;客観的検査にてVTE再発を診断。
[患者背景]平均年齢60.5±16.2歳。男性52%。診断:遠位側限局DVT 20%,近位側DVT 52%,PE 29%。一時的な誘発因子(手術,下肢のギプス固定,入院など)の有無別:あり40%,なし59%。治療期間:1または1.5カ月25%,3カ月36%,6カ月27%,12または27カ月12%。
[追跡期間]24カ月。
*:ODACでは無作為割付群のほかに,診断から1カ月後のインピーダンスプレスチモグラフィーで異常がみられたため3カ月間の治療を行った近位側DVT患者142例を本解析に加えた。
主な結果 4023例・年(患者1例あたり平均1.4年追跡)において,再発は312件(7.8%,95%CI 6.9-8.7%/100例・年)発生した。抗凝固療法終了からの期間別では,最初の6カ月:12.2%;10.5-14.2%/100例・年,7~24カ月:5.5%;4.7-6.5%/100例・年であった。

[VTE初発部位別の検討]
遠位側限局DVT患者における抗凝固療法終了後24カ月のVTE再発リスクは,近位側患者(HR 0.49;0.34-0.71,p<0.001),PE患者(HR 0.41;0.27-0.63,p<0.001)のいずれとの比較でも低かった。
PE患者と近位側DVT患者との比較では,最初の6カ月はPEの方が高かったが(HR 1.65;1.12-2.43),7~24カ月では同等で,全追跡期間(24カ月)での検討でも同等であった(HR 1.19;0.87-1.63,p=0.27)。

誘発因子の有無別の検討では,誘発因子を有するVTE患者は特発性VTE患者に比し再発リスクが低かった(HR 0.55;0.41-0.74,p=0.0001)。

[治療終了後の期間別の検討]
抗凝固療法終了後24カ月のVTE再発リスクは治療期間(1または1.5カ月,3カ月,6カ月,12または27カ月)により異なり,1または1.5カ月群は3カ月群に比し再発リスクが高かった(HR 1.52;1.14-2.02,p=0.004)。3カ月群と6カ月以上継続した群の間に有意差は認められなかった(HR 1.19;0.86-1.65,p=0.29)。

初回のVTEが誘発因子を有するものであった患者における再発リスクについて,治療終了後24カ月の検討では投与期間による差は認められなかった。しかし最初の6カ月間には有意差が認められ,1または1.5カ月群は3カ月以上群に比し再発リスクが高かった(HR 2.89;1.25-6.69,p=0.013)。3カ月群と6カ月以上群との有意差は認められなかった(HR 0.34;0.10-1.12)。

特発性の患者では,治療終了後24カ月の再発リスクは投与期間により差がみられ,1または1.5カ月群は3カ月以上群に比し再発リスクが高かった(HR 1.52;1.09-2.12,p=0.014)。リスク上昇は主に最初の6カ月間にみられ(HR 2.00;1.27-3.17,p=0.003),7~24カ月間では有意差は認められなかった。3カ月群と6カ月以上群との比較では,24カ月間では同等であったが(HR 1.39;0.96-2.01,p=0.08)最初の6カ月間では3カ月群の方が高かった(HR 1.70;1.02-2.82,p=0.041)。
文献: Boutitie F, et al. Influence of preceding length of anticoagulant treatment and initial presentation of venous thromboembolism on risk of recurrence after stopping treatment: analysis of individual participants' data from seven trials. BMJ 2011; 342: d3036. pubmed
関連トライアル Campbell IA et al, DURAC, ELATE, González-Fajardo JA et al, Martinelli I et al, Palareti G et al, Poli D et al, REVERSE, WARFASA, 単回の下肢全体CUSで結果が陰性であった患者のVTEリスク
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