抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
Claeys MJ et al Contemporary Mortality Differences Between Primary Percutaneous Coronary Intervention and Thrombolysis in ST-Segment Elevation Myocardial Infarction
結論 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者における最新の線溶療法での比較では,primary PCI(PPCI)の従来の線溶療法に比した死亡率抑制のベネフィットは弱められた。PPCI施行例の死亡率を低く保つためには,door-to-balloon timeが60分未満になるようにすべきである。
コメント 心筋梗塞急性期の予後は再灌流療法の普及とともに急速に改善した。われわれの認識は,CCUの普及により不整脈のコントロールが可能になって,30%の死亡率が15%程度に軽減,次は再灌流療法によりさらに半減したというものであった。経静脈的な線溶療法は,容易であるが効果を把握する確実な手段がない。効果を実感できるprimary PCIは循環器医向きの治療法であった。本研究は,一般医が広く施行可能な線溶療法と,複数の循環器医と高度な設備を要するprimary PCIの効果に差がないとのインパクトの大きな報告である。線溶療法群,primary PCI群,いずれの死亡率も7%を下回っている。比較的小さな島国である本邦であっても,door-to-balloon timeが60分を下回るケースは決して多くはない。ベースの治療が進歩してイベントの発症率が低減した現代社会では,高額の投資をして設備を整え,複数の循環器専門医が当直,オンコールをして心筋梗塞に備える必要がなくなったことが事実であれば,今後の医療の方向性を大きく変えるインパクトがある。(後藤信哉

目的 STEMIにおいて,いくつかの先行研究でPPCIの方が線溶療法より死亡リスクを抑制したことから,現行のガイドラインでは,ただちに施行可能である場合はPPCIが推奨されている。しかし薬物療法の進歩,線溶療法後の定期的侵襲的評価の適用などにより,最新の比較検討が求められている。本論文では,死亡率の抑制について,PPCIと最新の線溶療法との比較をTIMIリスクスコア別に行う。
デザイン 前向き観察研究。
セッティング 多施設(73施設:PCI施行施設25+施行不能施設48),ベルギー。
期間 データベース登録期間は2007年7月1日~2009年12月31日。
対象患者 5295例。全ベルギーSTEMIデータベース(NCT00727623)から抽出されたSTEMIまたは新規左脚ブロックと推測される患者で,症状発現から12時間以内に再灌流療法を受けた症例。
【除外基準】再灌流療法非施行かつ/または胸痛発現の12時間以上後に入院した患者。
【患者背景】平均年齢はPPCI群62.2±12.9歳,線溶療法群62.0±12.7歳。男性77.2%,75.5%。心血管疾患既往20.0%,17.2%。末梢動脈疾患既往9.9%,7.9%。高血圧43.3%,45.3%。糖尿病13.9%,14.4%。症状発現から治療まで(p<0.001):<4時間68.4%,79.1%,4~8時間23.7%,15.7%,8~12時間7.8%,5.3%。door-to-needle/balloon time(p<0.001):60分未満56.0%,48.0%,60~120分33.1%,18.6%,120分超8.6%,19.8%。TIMIリスクスコア4.1±2.8,3.8±2.7。
治療法 治療法の決定は担当医の裁量で行われた。
1998例はPCI施行不能施設に入院し,うち566例(28.3%)には線溶療法が行われたが,1432例(71.7%)はPCI施行可能施設に搬送された。
3297例はPCI施行可能施設に入院し,3142例(95.3%)はPPCIを受けたが,155例(4.7%)は線溶療法を受けた。
したがって,PPCIは4574例(86.4%),線溶療法は721例(13.6%)に行われた。線溶療法群のうち603例(83.6%)にはその後侵襲的評価が行われた。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
院内死亡率はPPCI群5.9%,線溶療法群6.6%であった(p=0.40)。
ベースラインリスクを調整後,死亡率の抑制はTIMIリスクスコアの高リスク群のみ認められた。
高リスク群(TIMIリスクスコア7~14):PPCI群23.7% vs. 線溶療法群30.6%,p=0.03。
中等度リスク群(スコア3~6):2.9% vs 3.1%,p=0.30。
低リスク群(スコア0~2):0.3% vs 0.4%,p=0.60。
院内死の予測因子は以下の項目であった。
年齢:OR 1.04,95%CI 1.03-1.06。
Killip class>1:OR 6.5;4.3-9.9。
心肺停止後の蘇生救急:OR 5.1;3.7-7.0。
血圧<100mg:OR 2.2;1.5-3.2。
末梢動脈疾患既往:OR 2.3;1.6-3.3。
女性:OR 1.8;1.3-2.5。
前壁梗塞:OR 1.35;1.01-1.80。
治療までの時間;60分未満 vs. 60~120分:OR 0.7;0.5-1.0,60分未満 vs. 120分超:OR 0.5;0.3-0.7,60~120分vs. 120分超:OR 0.7;0.4-1.1。
サブグループ解析によると,PPCI群の死亡率抑制はdoor-to-balloon timeが60分を超えると消失した。

●有害事象

文献: Claeys MJ, et al. Contemporary Mortality Differences Between Primary Percutaneous Coronary Intervention and Thrombolysis in ST-Segment Elevation Myocardial Infarction. Arch Intern Med 2011; 171: 544-9. pubmed
関連トライアル ExTRACT-TIMI 25 PCI, NORDISTEMI , STEMI患者における早期侵襲治療と標準保存治療の比較
関連記事