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Kellert L et al Frequency of increased blood pressure levels during systemic thrombolysis and risk of intracerebral hemorrhage
結論 脳梗塞患者に対する血栓溶解療法について,治療前,治療中の血圧プロトコール違反(血圧上昇)は多くみられたが,プロトコール違反の頻度,血圧値はいずれも脳内出血,症候性脳内出血の予測因子ではなかった。
コメント tPA血栓溶解療法前,治療中の血圧プロトコール違反(血圧上昇)が脳内出血や症候性脳内出血の予測因子にならなかったという結論は,他の強い予測因子があり得ること,プロトコール違反で投与しなかった症例との対比が行われていないこと,血圧と脳内出血の関連を指摘する他の報告があることから,tPA血栓溶解療法前や治療中の血圧コントロールの重要性を否定するものではないことに注意を払いたい。(矢坂正弘

目的 初期の血栓溶解療法パイロット研究で血圧上昇は症候性脳内出血リスクを上昇させることが示されたが,血栓溶解療法中における血圧上昇の頻度,またそれが脳内出血リスクを上昇させるかは明確になっていない。本論文では,血栓溶解療法施行の脳梗塞患者において,静注前後の血圧上昇の頻度と,脳内出血との関連について検討する。
デザイン 前向き登録研究,後ろ向き解析。
セッティング 単施設,ドイツ。
期間 対象患者治療期間は2007~2009年。
対象患者 427例。2007~2009年に血栓溶解療法静注を受けた脳梗塞患者連続例のうち,血圧データが入手できた症例。
【除外基準】表記なし。
【患者背景】平均年齢は症候性脳内出血発生群74.9±14.6歳,全脳内出血発生群73.2±11歳,非発生群72.7±12.8歳。女性80%,49%,51.8%。高血圧100%,80.4%,80.6%。糖尿病30%,19.6%,24.2%。高コレステロール血症30%,25.5%,24.5%。心房細動50%,47.1%,32.7%(p=0.041)。喫煙10%,15.7%,17.6%。抗血小板薬使用50%,47.1%,43.4%。抗凝固薬使用0%,7.8%,5.6%。心血管事象既往40%,19.6%,16.2%。経過時間179.7±55.5分,170.5±94.4分,168.4±102.8分。入院時のNational Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア 15.5±12,14±8,10.5±9(p=0.015)。血圧プロトコール違反:治療前20%,13.7%,12.5%,治療後50%,39.2%,41.2%。オフラベル治療70%,43.1%,53.7%。
p値は全脳内出血発生群 vs. 非発生群を示す。
治療法 欧州の基準を満たした脳梗塞患者に対しては標準療法として血栓溶解療法を施行したが,80歳超,発症からの経過時間が3時間以上,血圧上昇などの患者にもオフラベルとして血栓溶解療法を行った。治療前の血圧は≦185/110mmHgを必須とし,これより高い場合は降圧薬(通常urapidil 5~50mg静注)投与を推奨した。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
血圧プロトコール違反(SBP>185mmHgかつ/またはDBP>110mmHg)は静注前12.6%,静注中40.1%に認められた。
脳内出血は51例(11.9%)に発生,うち症候性脳内出血(ECASS基準)は10例(2.3%)であった。
血圧プロトコール違反の割合は全脳内出血発症例2.8%,症候性脳内出血発症例3.2%,脳内出血非発症例3.1%と同等であった。SBP(180mmHg vs. 178mmHg vs. 180mmHg)および平均動脈圧[(SBP+2×DBP)/3](103mmHg vs. 104mmHg vs. 99mmHg)も有意差は認められなかった。
多変量解析によると,早期CT所見のみが脳内出血の独立予測因子であった(OR 2.39,95%CI 1.25-4.61,p=0.009)。

●有害事象

文献: Kellert L, et al. Frequency of increased blood pressure levels during systemic thrombolysis and risk of intracerebral hemorrhage. Stroke 2011; 42: 1702-6. pubmed
関連トライアル Alshekhlee A et al, BAT retrospective study, Bravo Y et al, Erlangen Stroke and Thrombolysis Database -posterior cerebral artery, Kellert L et al, Mikulik R et al 2009, SAINT postthrombolysis ICH, Schellinger PD et al, SITS-ISTR antiplatelet therapy, SITS-ISTR blood pressure, SITS-ISTR elderly, SITS-MOST multivariable analysis, TIMI II Pilot and Clinical Trial, TIMI II Pilot and Randomized Clinical Trial, Tsivgoulis G et al, ultrasound-enhanced thrombolysisの安全性および有効性
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