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PROTECT Prophylaxis for Thromboembolism in Critical Care Trial
結論 ICUに入院中の重症患者における近位部深部静脈血栓症予防について,dalteparinの未分画heparinに対する優位性は示されなかった。
コメント ICUで管理される患者では,鎮静薬使用や麻痺などに伴う高度の安静臥床や,人工呼吸器装着,多臓器不全,多くのカテーテル留置といった危険因子が重なり,VTE発症の危険性が高くなりやすい。今回のICU患者を対象とした検討では一次エンドポイントである近位部深部静脈血栓症の発生頻度に差はなく,予防薬としての低分子量へパリンdalteparinの未分画へパリンに対する優位性は示されなかった。しかし,二次エンドポイントである肺塞栓症はdalteparin群で有意に低頻度であり,今後の検討に期待がもたれる。(山田典一

目的 これまでの先行研究では,重症患者に対する低分子量heparinと未分画heparin(UFH)の血栓塞栓症予防効果についての明確な結論は得られていない。本試験では,ICUに入院中の重症患者における静脈血栓症(VTE)予防について,低分子量ヘパリンdalteparinの有効性をUFHと比較する。一次エンドポイント:下肢近位部深部静脈血栓症(ランダム化の3日後以降に新規発症した血栓。圧迫超音波検査による診断は入院から2日以内およびその後週2回行い,臨床的な必要性が認められた場合にも追加で実施)。
デザイン ランダム化,二重盲検。intention-to-treat解析。NCT00182143。
セッティング 多施設(ICU 67カ所),6カ国(カナダ,オーストラリア,ブラジル,サウジアラビア,米国,英国)。
期間 登録開始は2006年5月。追跡は院内死または退院まで。試験薬投与期間中央値は両群とも7日(IQR 4~12)。
対象患者 3764例。18歳以上,体重45kg以上で,ICUでの治療が3日以上になると予測される患者。
【除外基準】重度外傷,神経外科または整形外科手術,治療用量の抗凝固療法を必要とする,ICUでの3日以上のheparin投与,heparinまたは血液製剤禁忌など。
【患者背景】年齢はdalteparin群61.1±16.5歳,UFH群61.7±16.4歳。各群の女性43.6%,43.0%。APACHE IIスコア21.4±7.8,21.7±7.8。BMI 28.3±8.1,28.2±7.3。内科入院75.2%,75.9%。VTE既往3.2%,3.2%,同家族歴1.4%,1.6%。癌既往4.4%,3.7%。入院時の診断:心血管疾患8.9%,9.1%,呼吸器疾患45.8%,45.4%,消化管疾患14.2%,13.7%,腎疾患2.1%,1.3%,神経学的疾患6.2%,6.1%,敗血症14.6%,14.9%,代謝性疾患3.9%,3.8%,その他(内科)1.7%,1.8%,その他(外科)2.6%,3.8%。生命維持:人工呼吸器89.3%,91.1%,昇圧剤43.2%,46.8%,透析6.7%,5.4%,中心静脈カテーテル82.9%,84.9%。
治療法 施設,入院のタイプ(内科または外科)により層別化後,以下の2群にランダム化し,ICU入院期間中皮下投与を行った。
dalteparin群:1873例。dalteparin 5000単位,1日1回+プラセボ1日1回。
UFH群:1873例。UFH 5000単位,1日2回。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
一次エンドポイント(下肢近位部深部静脈血栓症)はdalteparin群96例(5.1%),UFH群109例(5.8%)と同等であった(HR 0.92,95%CI 0.68-1.23,p=0.57)。
肺塞栓症はdalteparin群で抑制された;24例(1.3%)vs. 43例(2.3%),HR 0.51,95%CI 0.30-0.88,p=0.01。
その他の項目について,有意差は認められなかった。
全深部静脈血栓症:138例(7.4%)vs. 161例(8.6%),HR 0.93,95%CI 0.72-1.19,p=0.54。
全VTE:154例(8.2%)vs. 186例(9.9%),HR 0.87,95%CI 0.69-1.10,p=0.24。
院内死:414例(22.1%)vs. 459例(24.5%),HR 0.92,95%CI 0.80-1.05,p=0.21。
VTE+死亡の複合:530例(28.3%)vs. 589例(31.4%),HR 0.89,95%CI 0.79-1.01,p=0.07。
per protocol解析でも結果は主解析と同様であったが,ヘパリン起因性血小板減少症はdalteparin群の方が少なかった;3例(0.2%)vs. 12例(0.8%),HR 0.27,95%CI 0.08-0.98,p=0.046。

●有害事象
大出血は両群同等であった;dalteparin群103例(5.5%),UFH群105例(5.6%),HR 1.00,95%CI 0.75-1.34,p=0.98。

文献: Cook D, et al., PROTECT Investigators for the Canadian Critical Care Trials Group and the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group Dalteparin versus unfractionated heparin in critically ill patients. N Engl J Med 2011; 364: 1305-14. pubmed
関連トライアル ADOPT, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, FIDO, FRIC, Hokusai-VTE, ISAR-REACT 3, ISCVT, Kucher N et al, LIFENOX, Matisse Study, PREVAIL, PREVENT 2004, RECORD1, RECORD3, SAVE-ONCO, THRIVE III, van Gogh Studies, Wells PS et al, 長期VKA療法患者における周術期橋渡し療法
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