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Tsivgoulis G et al Safety and outcomes of intravenous thrombolysis in stroke mimics: a 6-year, single-care center study and a pooled analysis of reported series
結論 虚血性脳卒中類似症(stroke mimics:SM)例に対する血栓溶解療法は安全で,転帰は良好であった。
コメント 虚血性脳卒中類似症への緊急かつ積極的な治療はt-PA医療体制の充実とともにわが国でも増加しつつある。その臨床的特徴と血栓溶解療法の安全性について分析した点で救急医療上意義深い。(岡田靖

目的 多くの虚血性脳卒中患者に対しスピーディーに血栓溶解療法を行うことは,一方で,脳卒中ではないが脳卒中類似症状を呈するSM例に対して血栓溶解療法を行ってしまう潜在的リスクをともなう。本解析では,SM例に対する血栓溶解療法の安全性とその転帰を検討する。
デザイン 後ろ向きコホート研究。
セッティング 単施設,米国。
期間 登録期間は2003年1月~2008年12月。
対象患者 539例。現行のAHAガイドラインにしたがい,発症から3時間以内にtPA 0.9mg/kg静注を受けた虚血性脳卒中患者連続例。
【除外基準】表記なし。
【患者背景】年齢はSM例56±13歳,虚血性脳卒中確診例67±14歳(p<0.001)。男性45%,56%。入院時National Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア 6(IQR 4~8),8(4~14)(p<0.001)。発症から治療までの時間中央値135(107~170)分,125(99~162)分。高血圧55%,64%。糖尿病14%,25%。高コレステロール血症52%,37%(p=0.030)。心房細動11%,30%(p=0.002)。現喫煙32%,33%。治療前SBP 140±22mmHg,154±34mmHg(p=0.002)。治療前DBP 79±14mmHg,81±20mmHg。治療前血糖値107(97~121)mg/dL,125(106~162)mg/dL(p=0.001)。
治療法 急性脳卒中患者全例に対しtPA 0.9mg/kgを静注した。静注前に標準的な神経学的検査,心電図,血液化学検査,noncontrast CT,頭部および頸部のCT血管造影を実施し,臨床状態はNIHSSで評価した。脳MRI(すべてDWIを含む)は精密検査の一部として発症から24~72時間後に行った。ペースメーカーなどMRI禁忌の患者に対しては発症から24~72時間後に2度目の脳CTを行った。SMの最終診断はDWIで虚血病変が認められず,退院時に別の診断がついた場合とした。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
血栓溶解療法は539例に施行した。虚血性脳卒中の誤診は56例(10.4%,95%CI 7.9%-13.3%)で,SMの最終診断で多かったのは転換性疾患(26.8%),複雑型片頭痛(19.6%),てんかん発作(19.6%)であった。
SM例は虚血性脳卒中確診例に比し若く,開始時の脳卒中重症度が軽かった(いずれもp<0.001,患者背景の欄参照)。
SM例のうち54例(96%)は退院時機能的自立(mRS 0~1)であった。
[pooled解析]
SM例に対する血栓溶解療法の安全性について検討した文献は4件検索された。これに本解析をあわせて検討したところ,SMの診断は147/1706例(9%)と本解析と同程度で,症候性脳内出血(0%,95%CI 0%-2.3%),舌の血管性浮腫(0%,95%CI 0%-2.4%)はいずれも認められなかった。SM例における機能的自立は121/147例(88%,95%CI 81%-93%)であった。

●有害事象
SM例において症候性脳内出血(0%,95%CI 0%-5.5%),舌の血管性浮腫(0%,95%CI 0%-5.5%)は認められなかった。

文献: Tsivgoulis G, et al. Safety and outcomes of intravenous thrombolysis in stroke mimics: a 6-year, single-care center study and a pooled analysis of reported series. Stroke 2011; 42: 1771-4. pubmed
関連トライアル CASES elderly patients, Erlangen Stroke and Thrombolysis Database -posterior cerebral artery, Kruetzelmann A et al, Masjuan J et al, Mattle HP et al, rtPA血栓溶解療法の転帰における性差, Schellinger PD et al, SITS-ISTR 2010, SITS-ISTR blood pressure, SITS-MOST multivariable analysis, Zinkstok SM et al, 脳梗塞発症後3~4.5時間の時間枠におけるrt-PA静注の有効性および安全性
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