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JASAP Japanese Aggrenox (Extended-Release Dipyridamole plus Aspirin) Stroke Prevention versus Aspirin Programme
結論 虚血性脳卒中(脳梗塞)患者の再発予防において,徐放性dipyridamole+aspirin合剤(ER-DP+ASA)のaspirin単独に対する非劣性は認められなかった。ただし,サンプルサイズが小さく,イベント発症率が低く,試験期間が短かったため,結論を出すには至らなかった。
コメント 脳梗塞再発予防を目的に欧米で広く投与されているaggrenox(extended-release dipyridamole + aspirin)のアスピリンに対する非劣性試験が本邦で行われたが,非劣性を証明できなかった。理由としてサンプルサイズが小さく,イベント発症率が低く,試験期間が短かった事が挙げられている。イベント発症率の低さには両剤の効果や本研究参加医師のリスク管理が優れていたことが関連しているかもしれない。欧米で広く使われているaggrenoxを本邦で選択できないことは残念である。(矢坂正弘

目的 治療の進歩にもかかわらず,アジアにおいて脳卒中は依然として死亡,障害を多く引き起こす疾患であり,また欧米とは病態生理学上の差違が存在することが示唆されている。ER-DP+ASAは欧米諸国ではすでに虚血性脳卒中(脳梗塞)再発予防に用いられているが,日本では本適応での多数例での検討はまだ行われていなかった。本試験は,虚血性脳卒中(脳梗塞)再発予防について,ER-DP+ASAがaspirinに比し非劣性を有するか検討する。一次エンドポイント:致死的/非致死的虚血性脳卒中(脳梗塞)再発。
デザイン ランダム化,二重盲検,非劣性試験(非劣性限界HR 1.37)。有効性の解析対象は full analysis set(ランダム割り付けされた患者のうちER-DP+ASA群3例を除く)。NCT00311402。
セッティング 多施設(157施設),日本。
期間 平均治療期間はER-DP+ASA群447日,aspirin群471日。
対象患者 1294例。50歳以上の虚血性脳卒中(脳梗塞)患者で,NINDS診断基準の脳血管疾患IIIに該当;発症からの期間が1週以上6カ月以内(初発/再発は問わない);神経学的症状が安定;CTまたはMRIで責任病変部を確認;リスク因子*を複数有する症例。
*:糖尿病,≧140/90mmHgまたは治療中の高血圧,発症時の喫煙,BMI>25,血管疾患既往,末期臓器障害,脂質異常症。
【除外基準】心原性脳塞栓症,出血リスクをともなう脳疾患,心原性塞栓の原因となり得る心疾患を併発,登録前6カ月以内の急性冠症候群(ACS),過去3年以内の消化性潰瘍,虚血性脳卒中発症後動脈再建術を施行,重度の障害[modified Rankin Score(mRS) 4または5],出血または出血傾向,重度の高血圧(≧180/120mmHg),重篤な心/腎/肝疾患併発,悪性腫瘍または5年以内に癌治療など。
【患者背景】平均年齢はER-DP+ASA群66.2±8.1歳,aspirin群66.0±8.6歳。各群の男性72.1%,70.9%。BMI 24.08±3.24,24.14±3.08。喫煙歴:未経験32.1%,32.6%,過去喫煙49.3%,48.4%,現喫煙18.6%,19.1%。血圧141.4±18.5/81.5±12.0mmHg,140.4±17.6/81.4±11.5mmHg。発症から登録までの期間:1カ月以内43.5%,42.9%,1カ月超3カ月以内37.4%,38.8%,3カ月超6カ月以内19.1%,18.3%。脳卒中の病型:大血管アテローム性27.9%,27.4%,ラクナ梗塞67.6%,68.4%。リスク因子数;2:29.6%,29.4%,3:34.4%,37.2%,4:25.5%,20.7%,5:8.7%,9.4%,6~7:1.8%,3.3%。高血圧88.7%,87.9%。糖尿病42.0%,38.8%。脂質異常症68.4%,63.8%。肥満37.3%,40.2%。末期臓器障害16.2%,19.7%。血管疾患既往22.1%,24.1%。喫煙歴44.4%,45.4%。ARB併用45.6%,47.6%。
治療法 対象患者を最初の脳卒中発症からの期間および年齢により層別化し,ER-DP+ASA群,aspirin群にランダム化。
ER-DP+ASA群:655例。固定用量合剤(徐放性dipyridamole 200mg+aspirin 25mg)を1日2回経口投与。
aspirin群:639例。aspirin 81mgを1日1回経口投与。
投与期間は52週以上,最長124週(1週間の導入期間を含む)。導入期間中,ER-DPの頭痛の可能性を最小限にするため,aspirin 81mgを朝1回,ER-DP+ASAを就寝前1回投与した。
抗凝固薬,抗血小板薬は導入期間から治療中止までの間,線溶療法,tPA,urokinaseはweek 0から治療中止までの間,いずれも禁止とした。
追跡完了率 試験完了は907/1294例(ER-DP+ASA群445例,aspirin群462例)。
結果

●評価項目
スクリーニング前の12週にaspirin投与を受けていたのは71.9%であった。他の使用抗血小板薬はDP 1.4%,cilostazol 18.8%,ticlopidine 4.9%,clopidogrel 12.9%。
中間解析の結果を受け,目標症例数が当初の1000例から1250例に変更された。
一次エンドポイント(脳梗塞再発)はER-DP+ASA群45例(6.9%),aspirin群32例(5.0%)(HR 1.47,95%CI 0.93-2.31)で,ER-DP+ASAのaspirinに対する非劣性は認められなかった。
aspirin 群のイベント発症率は想定よりも低く,また日本で同時期に行われた他の臨床試験における発症率よりも低かった(JASAP:想定8.5%/年,実測3.9%/年,S-ACCESS:4.9%/年)。
脳内出血:ER-DP+ASA群12例(1.8%)vs. aspirin群7例(1.1%)(HR 1.79,95%CI 0.70-4.54)。
くも膜下出血:0例vs. 1例(0.2%)(HR 0)。
一過性脳虚血発作:3例(0.5%)vs. 3例(0.5%)(HR 1.02;0.21-5.07)。
ACS:9例(1.4%)vs. 16例(2.5%)(HR 0.58;0.26-1.31)。
他の血管イベント:11例(1.7%)vs. 6例(0.9%)(HR 1.88;0.69-5.07)。
複合虚血イベント:57例(8.7%)vs. 51例(8.0%)(HR 1.16;0.79-1.69)。
脳卒中:57例(8.7%)vs. 39例(6.1%)(HR 1.52;1.01-2.29)。
死亡: 4例(0.6%)vs. 10例(1.6%)(p=0.1125)。

●有害事象
大出血イベントおよび頭蓋内出血は両群同等であった。
大出血:ER-DP+ASA群26/655例(4.0%)vs. aspirin群24/639例(3.8%)(p=0.8859)。
頭蓋内出血:13/652例(2.0%)vs. 13/639例(2.0%)。
試験薬による有害事象はER-DP+ASA群265例(40.5%)とaspirin群171例(26.8%)に比し多かった(p<0.0001)。これは主に試験早期(<7日)の頭痛によるものであった(32.8% vs. 12.4%,p<0.0001)。

文献: Uchiyama S, et al. The Japanese Aggrenox (Extended-Release Dipyridamole plus Aspirin) Stroke Prevention versus Aspirin Programme (JASAP) Study: A Randomized, Double-Blind, Controlled Trial. Cerebrovasc Dis 2011; 31: 601-3. pubmed
関連トライアル CASISP, DAC, EARLY, ESPRIT 2006, ESPS-2 1996, ESPS-2 1997, MATCH, PRoFESS, PRoFESS acute ischemic stroke, SITS-ISTR antiplatelet therapy
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