抗血栓トライアルデータベース
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Erlangen Stroke and Thrombolysis Database -posterior cerebral artery
結論 テント上後大脳動脈領域の虚血性脳卒中患者において,血栓溶解療法後の転帰は前方循環梗塞患者との実質的な差異は認められなかった。後大脳動脈領域梗塞患者では機能障害にかかわらずNational Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコアが自然に低くなることを考慮すると,血栓溶解療法はNIHSSスコアのみでなく機能的影響にもとづいて行うべきである。
コメント テント上後大脳動脈領域梗塞(PCAI)へのt-PAの効果を検討した論文である。前方循環領域梗塞より入院時NIHSSが平均6.5(2~15点)と低く,転帰は同等である点などが明らかになり,PCAIにおいてはNIHSSの下限を設けることなく機能障害に従ってt-PA治療を決断することが重要と考えられる。(岡田靖

目的 後大脳動脈領域梗塞は全虚血性脳卒中の約5~10%を占めるが,急性期ではNIHSSスコアが機能障害を過小評価しがちであることなどから,血栓溶解療法が行われないことが多い。しかし治療が行われれば,その転帰は前方循環梗塞と異なることはまれである。本論文では,テント上後大脳動脈領域梗塞患者の転帰を,同時期にtPA静注を受けた前方循環梗塞患者と比較検討する。
デザイン 後ろ向きコホート研究。
セッティング 単施設,ドイツ。
期間 対象患者治療期間は2006年1月~2010年1月。
対象患者 457例。2006年1月~2010年1月に血栓溶解療法静注を受けた虚血性脳卒中患者全例。
【除外基準】テント下後大脳動脈領域梗塞。
【患者背景】年齢中央値(範囲)はテント上後大脳動脈領域梗塞群72(62.5~80)歳,前方循環梗塞群73(63~81)歳。各群の男性71.4%,54.4%。リスク因子:高血圧90.5%,82.4%,高コレステロール血症66.7%,53.8%,糖尿病42.9%,33.4%,冠動脈疾患33.3%,23%,心房細動38.1%,43.7%,脳卒中既往14.3%,16.9%,ニコチン19%,13.3%,心筋梗塞既往4.8%,10.8%,末梢動脈疾患9.5%,10.8%。開始時の血糖値110±36mg/dL,127±48mg/dL(p=0.036)。NIHSSスコア中央値(範囲):開始時6.5(2~15),9(0~27)(p=0.016),24時間後3.5(0~19),5(0~28),退院時3(0~22),4(0~28)。TOAST分類:大血管4.8%,7.8%,心原性42.9%,44.5%,ラクナ0%,0.5%,その他4.8%,5%,不明47.6%,42.2%。
治療法 すべての患者は欧州ガイドラインにしたがい治療を受けた。国際ガイドライン(ESO,AHA)にしたがい,NIHSS下限による制限は行わなかった。入院時のNIHSSにかかわらず,専門医により障害が認められた患者を治療対象とした。CTにもとづく発作後3時間以内の治療に加え,時間が超過している患者や経過時間不明の患者に対しては多様なCTおよびMRIミスマッチにもとづくアルゴリズムを用いた。
テント上後大脳動脈領域梗塞患者21例と前方循環梗塞(中大脳動脈/前大脳動脈)患者398例を比較。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
テント上後大脳動脈領域梗塞群は開始時血糖値,開始時NIHSSスコアが前方循環梗塞群に比し低かった。
3カ月後の転帰良好[modified Rankin Score(mRS) 0~2]はテント上後大脳動脈領域梗塞群12例(57.1%),前方循環梗塞群191例(48.6%)と同等であった(p=0.445)。
3カ月後の死亡は0例 vs. 49例(12.3%)(p=0.153)。

●有害事象
脳内出血(ECASS II定義)発生率は同等であった。
無症候性脳内出血は2例(9.5%)vs. 27例(6.8%)(p=0.649)。
症候性脳内出血は0例 vs. 14例(3.5%)(p=0.632)

文献: Breuer L, et al. Intravenous Thrombolysis in Posterior Cerebral Artery Infarctions. Cerebrovasc Dis 2011; 31: 448-54. pubmed
関連トライアル Kellert L et al, Mattle HP et al, Mikulik R et al 2009, Schellinger PD et al, SITS-ISTR antiplatelet therapy, SITS-MOST multivariable analysis, Toni D et al, Tsivgoulis G et al
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