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EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension
結論 静脈血栓塞栓症(VTE)に対する急性期治療および再発予防のための延長投与において,rivaroxabanは検査値のモニターの必要がない,有効かつ安全な単剤アプローチを示した。
コメント 急性期深部静脈血栓症に対する標準的治療である急性期のヘパリンに続くワルファリン治療に,リバーロキサバン単独治療が同等以上の効果を持って,静脈血栓症の再発を抑制した。さらに,慢性期管理においても,リバーロキサバンはプラセボと比較して,静脈血栓症の再発をきわめて有効に抑制している。出血合併症も,急性期と慢性期ともに有意な増加はみられていない。
リバーロキサバンは経口・直接第Xa因子阻害薬である。大きな特徴として,食事の影響や薬剤相互作用はほとんどなく,抗凝固能のモニタリングが必要ない。本薬剤により,静脈血栓症の治療が急性期から慢性期にかけて,安全,有効,簡便に経口治療による達成し得ることになる。わが国では,ヘパリンは静脈注射で使用されることが大半である。しかし,今後,深部静脈血栓症の急性期に経口薬リバーロキサバンが使用可能となれば,比較的早期より外来治療に切り替えられる可能性がある。(苅尾七臣

目的 急性VTEの標準治療は2種類の薬剤(heparin皮下注後ビタミンK拮抗薬投与)が用いられるが,ビタミンK拮抗薬は検査値のモニターや用量調整が必要である。また,急性期治療終了後1年以内の再発リスクは5~10%であるのに対し,出血リスクとのバランスについては議論が残るなど課題が多く,シンプルな経口抗凝固薬が求められている。EINSTEINは3つの臨床試験(EINSTEIN-DVT,EINSTEIN-PE,EINSTEIN-Extension)からなる臨床試験プログラムで,整形外科手術後のVTE予防効果がすでに認められているrivaroxabanについて,その有用性を検討する。本論文は,EINSTEIN-DVT[急性症候性深部静脈血栓症(DVT)患者における有用性および安全性を標準治療(enoxaparin+ビタミンK拮抗薬)と比較]およびEINSTEIN-Extension(急性期標準治療に6カ月または12カ月の再発予防投与を追加することの有用性を検討)の結果を報告する。
有効性の一次エンドポイント[両試験]:症候性VTE再発[DVT,非致死性/致死性肺塞栓症(PE)の複合]。
安全性の一次エンドポイント[EINSTEIN-DVT]:臨床的に問題のある出血(大出血,大出血ではないが臨床的に問題のある出血の複合)。[EINSTEIN-Extension]:大出血。
デザイン [EINSTEIN-DVT]
PROBE(prospective,randomized,open,blinded-endpoint),非劣性試験(非劣性マージン2.0)。NCT00440193。
[EINSTEIN-Extension]
ランダム化,二重盲検,優越性試験。NCT00439725。
両試験とも有効性についてはintention-to-treat解析,安全性についてはper protocol解析。
セッティング 本論文には表記なし。
期間 [EINSTEIN-DVT]
ランダム化期間は2007年3月~2009年9月。
[EINSTEIN-Extension]
登録期間は2007年2月~2009年3月。
対象患者 [EINSTEIN-DVT]
3449例。試験参加合意の法定年齢に達している確診された急性症候性近位部DVT患者で,症候性PEのない症例。
[EINSTEIN-Extension]
1197例。確診された症候性DVTまたはPE患者で,warfarin,acenocoumarol(EINSTEIN参加またはルーチンケア)あるいはrivaroxaban(EINSTEIN参加)を6または12カ月投与されており,抗凝固薬の延長投与が妥当と考えられる症例。
【除外基準】
[EINSTEIN-DVT]
治療用量の低分子量heparin,fondaparinux,未分画heparinを48時間以上投与されているか,ランダム化前にビタミンK拮抗薬を単回投与以上受けている;血栓症の今回のエピソードに対し血栓切除術,大静脈フィルター,線溶薬投与を受けている;enoxaparin,warfarin,acenocoumarol禁忌。
[両試験共通]
他にビタミンK拮抗薬の適応がある;クレアチニンクリアランス<30mL/分;臨床的に重篤な肝疾患(急性肝炎,慢性活動性肝炎,肝硬変など)またはALTが正常値上限の3倍以上;細菌性心内膜炎;活動性出血または出血高リスク,抗凝固薬禁忌;血圧>180/110mmHg;出産の可能性(適切な避妊のない),妊娠,授乳;強力なシトクロムP-450 3A4阻害剤,誘発剤併用など。
【患者背景】
[EINSTEIN-DVT]
平均年齢はrivaroxaban群55.8±16.4歳,標準治療群56.4±16.3歳。各群の男性57.4%,56.3%。初期診断:DVT 1708例,1697例(1例のみ遠位部),PE 12例,11例。発症からランダム化までの期間中央値(IQR)5日(3~10),5日(3~10)。VTEの原因:自発性60.9%,63.0%,最近の手術または外傷19.5%,19.5%,臥床15.3%,15.1%,エストロゲン治療8.1%,6.7%,活動性癌6.8%,5.2%,産褥期0.3%,0.6%。VTE既往19.4%,19.2%。予定治療期間:3カ月12.0%,11.8%,6カ月62.6%,63.0%,12カ月25.4%,25.1%。
[EINSTEIN-Extension]
平均年齢はrivaroxaban群58.2±15.6歳,プラセボ群58.4±16歳。各群の男性58.8%,57.1%。初期診断:DVT 386例,356例,PE 216例,238例。発症からランダム化までの期間中央値(IQR)204日(188~302),206日(189~307)。VTEの原因:自発性73.1%,74.2%,最近の手術または外傷3.5%,4.7%,臥床14.8%,13.0%,エストロゲン治療3.8%,3.7%,活動性癌4.7%,4.4%,産褥期0.2%,0%。VTE既往17.9%,14.1%。6~12カ月のビタミンK拮抗薬投与71.3%,73.1%。6~12カ月のrivaroxaban投与28.7%,26.9%。
治療法 [EINSTEIN-DVT]
rivaroxaban群(1731例),標準治療群(1718例)にランダム化。
rivaroxaban群:最初の3週間はrivaroxaban 15mg,1日2回投与し,その後症例により3,6,12カ月間20mg,1日1回投与。
標準治療群:enoxaparin 1.0mg/kg,1日2回皮下注およびwarfarinまたはacenocoumarolをランダム化から48時間以内に投与。enoxaparinは5日以上投与した場合,PT-INR値が2日以上連続して2.0以上となった場合に中止。ビタミンK拮抗薬はPT-INR値が2.0~3.0となるよう用量調整した。PT-INR値は月1回以上測定した。
[EINSTEIN-Extension]
rivaroxaban群(602例),プラセボ群(595例)にランダム化。
rivaroxaban群:最初の治療終了後,症例により6または12カ月間,rivaroxaban 20mg,1日1回を延長投与。
両試験とも,非ステロイド性抗炎症薬および抗血小板薬の投与は中止としたが,適応がある場合はaspirin(100mg/日まで),clopidogrel(75mg/日),またはその併用を許可した。
追跡完了率 [EINSTEIN- DVT]
追跡不能はrivaroxaban群15例(0.9%),標準治療群18例(1.0%)。
[EINSTEIN-Extention]
追跡不能はrivaroxaban群1例(0.2%),プラセボ群1例(0.2%)。
結果

●評価項目
[EINSTEIN- DVT]
標準治療群におけるenoxaparin投与期間中央値は8日(IQR 6~11),投与終了時のPT-INR値が≧2.0であったのは80.8%であった。全体としてPT-INR治療域内(2.0~3.0)時間は57.7%であった。
有効性の一次エンドポイントはrivaroxaban群36例(2.1%),標準治療群51例(3.0%)に発生し,rivaroxabanの非劣性が示された(HR 0.68,95%CI 0.44-1.04,非劣性p<0.001,優越性p=0.08)。
正味の転帰(症候性VTE再発+大出血)は51例(2.9%)vs. 73例(4.2%)(HR 0.67,95%CI 0.47-0.95,p=0.03)。
[EINSTEIN-Extention]
有効性の一次エンドポイントはrivaroxaban群8例(1.3%),プラセボ群42例(7.1%)に発生し,rivaroxabanの優越性が示された(HR 0.18,95%CI 0.09-0.39,p<0.001)。
正味の転帰は12例(2.0%)vs. 42例(7.1%)に発生した(HR 0.28,95%CI 0.15-0.53,p<0.001)。

●有害事象
[EINSTEIN- DVT]
安全性の一次エンドポイントはrivaroxaban群139例(8.1%),標準治療群138例(8.1%)と,有意差は認められなかった(HR 0.97,95%CI 0.76-1.22,p=0.77)。
[EINSTEIN-Extention]
安全性の一次エンドポイントはrivaroxaban 群4例(0.7%),プラセボ群0例と,有意差は認められなかった(p=0.11)。

文献: EINSTEIN Investigators. Oral rivaroxaban for symptomatic venous thromboembolism. N Engl J Med 2010; 363: 2499-510. pubmed
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