抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
ISCVT International Study of Cerebral Vein and Dural Sinus Thrombosis
結論 非ランダム化試験による検討ではあるが,脳静脈血栓症患者において,低分子量heparin(LMWH)は未分画heparin(UFH)に比し有効かつ安全であると示唆された。脳静脈血栓症の初期治療として,LMWHのほうがUFHより良好のようである。
コメント 脳静脈血栓症に対する初期治療は未だ一定した治療法は確立していない。低分子量ヘパリンが未分画ヘパリンより転帰や脳出血発現防止に,より有効であることを示唆した初めての研究である。非ランダム化の観察研究ではあるが,稀な病態である脳静脈血栓症では最大の前向きコホートの検討であり,注目される。(岡田靖

目的 ヘパリンによる抗凝固療法は急性脳静脈血栓症に対する初期標準治療として広く認識されているが,ヘパリンの種類(LMWH/UFH)については直接の比較は行われていない。本解析ではいずれかの投与を受けた患者の転帰を比較検討する。一次エンドポイント:6カ月後の機能的独立[modified Rankin Score(mRS) 0~2]。
デザイン 観察研究。
セッティング 多施設,複数国。
期間 登録期間は1998~2001年。
対象患者 [一次解析]421例。[二次解析]517例。成人の症候性脳静脈血栓症患者連続例。
【除外基準】治療用量のヘパリン投与を受けていない症例。一次解析では上記に加え,入院中にヘパリンの種類を変更された患者(UFHからLMWHへ,またはその逆)も除外。
【一次解析の患者背景】年齢はLMWH群41(29~51)歳,UFH群36(27~48)歳(p=0.02)。女性74%,75%。症状発現から入院までの期間4(1~15)日,4(1~9)日。症状発現から診断までの期間7(3~18)日,7(3~13)日。リスク因子:女性特有のリスク因子(妊娠など)64%,67%,遺伝性血栓性素因24%,24%,後天性血栓形成傾向(ネフローゼ症候群など)20%,17%,何らかの感染症18%,10%(p=0.04),中枢神経系感染症4%,1%(p=0.03),悪性腫瘍8%,7%,リスク因子は特定されず9%,14%。診断からヘパリン開始までの期間0(0~1)日,0(0~0)日。入院期間16(10~23)日,17(11~26)日。血栓溶解薬2%,2%。抗けいれん剤45%,43%。ステロイド27%,25%。追跡期間中の抗凝固薬81%,85%。
治療法 ヘパリンを投与するかどうか,投与する場合の種類は担当医の裁量とされた。
追跡完了率 6カ月の追跡完了はLMWH群108例(91%),UFH群277例(92%)。
結果

●評価項目
[一次解析]
LMWHを投与されたのは119例(28%),UFHを投与されたのは302例(72%)であった。
6カ月後の機能的独立はLMWH群92%と,UFH群84%に比し多かった(単変量解析OR 2.1,95%CI 1.0-4.2,p=0.04,補正後OR 2.4,95%CI 1.0-5.7,p=0.04)。
新規の脳内出血は10% vs. 16%に発生し(補正後OR 0.29,95%CI 0.07-1.3,p=0.10),開始時に脳内に病変があった患者(出血性/虚血性を問わない)ではLMWH群で少なかった(調整OR 0.19,95%CI 0.04-0.99,p=0.05)。
完全回復(mRS 0~1)は78% vs. 78%(補正後OR 0.94,95%CI 0.55-1.9,p=0.94),死亡は6% vs. 8%(補正後OR 0.81,95%CI 0.29-2.3,p=0.70)と,いずれも有意差は認められなかった。
[二次解析]
LMWH,UFHの両方を投与された99例のうち,先にLMWHを投与されたのは14例,UFHは82例,不明3例であった。これら96例を含めた解析では,6カ月後の機能的独立はLMWH群91%,UFH群86%であった(補正後OR 1.7,95%CI 0.80-3.6,p=0.17)。

●有害事象

文献: Coutinho JM, et al.; ISCVT Investigators. Unfractionated or low-molecular weight heparin for the treatment of cerebral venous thrombosis. Stroke 2010; 41: 2575-80. pubmed
関連トライアル FIDO, PREVAIL, PROTECT, THRIVE, van Gogh Studies
関連記事