抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
COGENT Clopidogrel and the Optimization of Gastrointestinal Events Trial
結論 抗血小板薬併用療法を受けている心疾患患者において,プロトンポンプ阻害薬(PPI)omeprazoleの予防的使用により上部消化管出血が抑制された。clopidogrelとomeprazoleの間に明らかな心血管交互作用はみられなかったが,本試験結果は,PPI の使用により心血管イベントに臨床的に意味のある差異が生じることを否定するものではない。
コメント クロピドグレルの代謝経路が明らかになったのち,クロピドグレルとその主要代謝酵素であるチトクロームP450のCYP2C19の役割が過剰注目された。CYP2C19により代謝されるオメプラゾールのようなプロトンポンプ阻害薬がクロピドグレルの薬効を減弱させるのではないかとの危惧が表明された。米国は厳しい競争社会であるためオメプラゾールが特許切れして,オメプラゾールを支える資本がなくなると,オメプラゾールに対して容赦ない攻撃がなされる。クロピドグレルとの相互作用なども実臨床の観点から懸念を感じている臨床医は少ないと想定される。ノイズは著しく膨らまされた。本試験はクロピドグレルとオメプラゾールの合剤の開発を目指すCogentus Pharmaceuticalsというメーカーにより主導された試験である。本試験の主要エンドポイントは消化管の合併症である。本試験はスポンサーの都合により中止されたが,すでに消化管のエンドポイントについては明確な差異が示された。本試験の対象は心血管イベントリスクの高い急性冠症候群,ステント治療群であるから,もしオメプラゾールがクロピドグレルの薬効を減弱させることが事実であれば,心血管イベントについては試験の中途であってもクロピドグレル群とクロピドグレル/オメプラゾール群に差異が出たはずである。しかし,カプランマイヤー曲線をみるかぎりオメプラゾールの追加により心血管イベントが増加する徴候はまったくみえない。臨床試験を科学的に評価するとの意味で,本試験は完遂された試験ではないが,マーケット的に作られた「オメプラゾールによるクロピドグレルの薬効の減弱」というノイズを止める意味では十分な規模の試験であると筆者は評価している。(後藤信哉

目的 抗血小板薬併用療法(clopidogrel+aspirin)を受ける心疾患患者において,clopidogrel+omeprazole併用の有効性,安全性を検討。消化管関連の一次エンドポイント:顕性または不顕性出血,症候性胃十二指腸潰瘍またはびらん,閉塞,穿孔の複合。心血管関連の一次エンドポイント:心血管死,非致死的心筋梗塞,冠血管血行再建術,虚血性脳卒中の複合。
デザイン ランダム化,二重盲検,ダブルダミー。NCT00557921。
セッティング 多施設(393施設),15カ国。
期間 登録期間は2008年1月~12月。追跡期間中央値は106(55~166)日。本試験はスポンサーの事情により早期中止となった。
対象患者 3761例。21歳以上,clopidogrel+aspirin併用が12カ月以上予期される急性冠症候群(ACS)またはステント植込み施行患者。
【除外基準】ランダム化から48時間以内の退院が予測されない;短期または長期のPPI,H 2受容体拮抗薬,抗潰瘍薬,胃酸抑制薬の使用が必要;既存のびらん性食道炎,食道/胃静脈瘤疾患,非内視鏡的消化管手術既往;ランダム化より21日前以内のclopidogrelまたは他のチエノピリジン系薬剤使用;試験期間中安全に中止することができない抗血栓薬使用者;最近の線溶療法。
【患者背景】年齢中央値は合剤群68.5(60.7~74.4)歳,clopidogrel単独群68.7(60.6~74.7)歳。各群の男性66.9%,69.5%。白人93.5%,93.9%。心血管病歴:PCI 71.7%,71.4%,ACS 42.2%,42.6%,心筋梗塞30.5%,28.5%,末梢動脈疾患12.0%,12.0%,脳卒中7.3%,8.1%,他の血管疾患49.4%,50.9%。リスク因子:高血圧80.1%,81.4%,糖尿病31.7%,28.6%,高コレステロール血症79.1%,77.1%,その他41.3%,40.4%。消化管出血または潰瘍の既往4.2%,4.1%。
治療法 血清学的所見(Helicobacter pylori陽性/陰性),aspirin以外の非ステロイド性抗炎症薬併用の有無により層別化後,合剤群(1876例。CGT-2168;clopidogrel 75mg+omeprazole 20mg)またはclopidogrel単独群(1885例)にランダム化。
全例にaspirin腸溶錠75~325mg/日を投与。
追跡完了率
結果

●評価項目
180日後の消化管イベント発生は合剤群13例(1.1%)と,clopidogrel単独群38例(2.9%)に比し抑制された(HR 0.34,95%CI 0.18-0.63,p<0.001)。サブグループおよび層別化(Helicobacter pylori,非ステロイド性抗炎症薬併用の有無)による交互作用はみられなかった。
上部消化管顕性出血は合剤群で抑制された(HR 0.13,95%CI 0.03-0.56,p=0.001)。
心血管イベントは合剤群55例(4.9%),clopidogrel単独群54例(5.7%)と同等であった(HR 0.99,95%CI 0.68-1.44,p=0.96)。
心筋梗塞(HR 0.92,95%CI 0.44-1.90,p=0.81),血行再建術(HR 0.91,95%CI 0.59-1.38,p=0.64)は同等であった。

●有害事象
合剤群で下痢のリスクが上昇したが(3.0% vs. 1.8%,p=0.01),重篤な有害作用は同等であった(10.1% vs. 9.4%,p=0.48)。

文献: Bhatt DL, et al.; the COGENT Investigators. Clopidogrel with or without Omeprazole in Coronary Artery Disease. N Engl J Med 2010; 363: 1909-17. pubmed
関連トライアル 3T/2R, ACTIVE A, APPRAISE, APPRAISE-2, CASPAR , CHAMPION PHOENIX, Chan FK et al, CHARISMA, CHARISMA bleeding complications, CHARISMA post hoc analysis, CHARISMA secondary analysis, CHARISMA subgroup analysis, CLARITY-TIMI 28, COMPASS, CREDO, CURE, DES LATE, FAST-MI CYP2C19 and PPI, Ho PM et al, Müller C et al, OCLA, PCI-CLARITY, PLATO, PLATO renal function, PRoFESS, Rassen JA et al, REAL-LATE / ZEST-LATE, SPS3, TOSS-2, TRA 2P-TIMI 50, TRACER, TRILOGY ACS, TRITON-TIMI 38, WAVE, WHS
関連記事