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Sadanaga T et al Evidence that D-dimer levels predict subsequent thromboembolic and cardiovascular events in patients with atrial fibrillation during oral anticoagulant therapy
結論 経口抗凝固療法を受けている心房細動患者において,D-dimer は血栓塞栓イベント,心血管イベント両方の有用なマーカーかもしれない。
コメント D-dimer上昇例の背景を見ると,より高齢(平均79歳)で,心不全,脳梗塞既往の率が高く,CHADS2スコアが高いことがわかる。血栓塞栓イベントは,その多くがPT-INR<1.5で生じていること,2.0以上ではほとんど生じていないことから,よりTTRに配慮したINRコントロールが重要であることが示された。D-dimer上昇例では,高齢者においてもPT-INRを2.0以上に保つ方がよいかもしれないことが示唆される。大出血がD-dimer上昇例で多いことについては,背景因子なども考慮し,慎重に解決する必要がある。(是恒之宏

目的 心房細動患者ではD-dimerが上昇する。warfarinの投与により低下するが,一部の症例では投与しても上昇がみられる。本研究では,経口抗凝固療法を受けている心房細動患者において,D-dimerの上昇が続発性血栓塞栓イベントおよび心血管イベントを予測するか検討する。エンドポイント:血栓塞栓イベント(虚血性脳卒中,一過性脳虚血発作,末梢塞栓),心血管イベント(血栓塞栓イベント,脳出血,心筋梗塞,心血管死)。
デザイン 前向き観察研究。
セッティング 単施設,日本。
期間 登録期間は2006年1月~2007年4月。追跡終了は2008年12月。平均追跡期間756±221日。
対象患者 269例。標的PT-INR 1.5~3.0にてwarfarin投与を受けている心房細動患者。
【除外】認知症,悪性腫瘍,大動脈瘤,肺塞栓症をともなう深部静脈血栓症,閉塞性動脈硬化症など。
【患者背景】症例数はD-dimer上昇群(≧0.5μg/mL)63例,非上昇群206例。各群の平均年齢は79±8歳,72±9歳(p<0.01)。男性56%,57%。慢性心房細動49%,39%。うっ血性心不全67%,35%(p<0.01)。高血圧52%,57%。糖尿病25%,23%。脳卒中既往21%,9%(p<0.01)。
治療法 全例にwarfarinを投与。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
登録時のPT-INRは1.93±0.53(中央値1.82),治療域内(1.5~3.0)であったのは230例(86%),追跡終了時は1.94±0.60(中央値1.86),82%であった。
ROC曲線によるD-dimer上昇の至適カットオフ値は0.5μg/mLで,この値以上の上昇は63例(23%)でみられた。D-dimer中央値はD-dimer上昇群0.86μg/mL,非上昇群0μg/mL。PT-INRはD-dimer上昇群1.99±0.74(中央値1.82),非上昇群1.92±0.45(中央値1.82)と同等であった(p=0.83)。

血栓塞栓イベントは 10例(1.8%/年)に発生し,D-dimer上昇群は8例で,非上昇群2例に比し多かった(p<0.01,HR 15.8,95%CI 3.33-75.5)。内訳は,虚血性脳卒中8例,一過性脳虚血発作1例,末梢塞栓1例。なお発生時のPT-INRは5例(50%)が<1.5で,2.0を超えていたのは1例のみであった。
心血管イベントは 27例(4.8%/年)に発生し,D-dimer上昇群は18例で,非上昇群9例に比し多かった(p<0.01,HR 7.64,95%CI 3.42-17.1)。内訳は,血栓塞栓症8例 vs. 2例(p<0.01),心不全死6例 vs.3例(p<0.01),突然死0例 vs. 3例(p=0.34),心筋梗塞2例 vs. 0例(p=0.010),脳出血2例 vs. 1例(p=0.075)。

●有害事象
大出血は9例(1.6%/年)発生し,D-dimer上昇群は8例で,非上昇群1例に比し多かった(p<0.01,HR 29.3,95%CI 3.65-235)。内訳は,脳出血3例,硬膜下血腫1例,輸血を必要とする消化管出血5例。発生時のPT-INRは4例(44%)が>3.0,3例(33%)が<2.0であった。

文献: Sadanaga T, et al. Evidence that D-dimer levels predict subsequent thromboembolic and cardiovascular events in patients with atrial fibrillation during oral anticoagulant therapy. J Am Coll Cardiol 2010; 55: 2225-31. pubmed
関連トライアル ACE , ACTIVE W INR control, AFASAK 2 1999, EAFT 1995, J-RHYTHM target INR values, Lamberts M et al, NASPEAF, NASPEAF stratified analysis, Palareti G et al, Pengo V et al, Poli D et al, PROTECT AF, Roldan V et al, SPAF III 1998, SPORTIF V, Themistoclakis S et al, Torn M et al
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