抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
Helsinki Stroke Thrombolysis Registry
結論 虚血性脳卒中患者におけるalteplaseのオフラベル使用は,年齢>80歳のみ転帰不良と関連していたが,症候性脳内出血(sICH)リスク上昇と関連していたものはなかった。
コメント 脳梗塞急性期のアルテプラーゼによる血栓溶解療法におけるオフラベル使用の予後や症候性脳内出血への影響をしらべた研究である。ヨーロッパにおけるオフラベル使用として高齢(>80歳),軽症脳梗塞(NIHSSスコア<5),治療前の静注降圧薬使用,発症から治療までが3時間を超えること,高血圧>185/110mmHg,経口抗凝固薬使用などが検討された。結果,高齢(>80歳)のみが転帰不良と関連していたが,いずれの検討項目も症候性脳内出血とは関連しなかった。この研究を受けて欧州におけるオフラベル使用,特に3時間を超えるアルテプラーゼ投与を本邦で勧めることはできないが,高齢者,軽症脳梗塞例,治療前の静注降圧薬使用と転帰や症候性脳出血との関連に関する結果は,本邦で高齢者,主幹動脈閉塞を伴う比較的軽症脳梗塞,治療前の静注降圧薬使用例へアルテプラーゼ投与を考慮する際に参照すべき結果と思われる。(矢坂正弘

目的 欧州でのalteplaseのライセンスには多数の禁忌が含まれている。そのほとんどは科学的エビデンスにもとづいたものではないが,alteplase治療適応を制限している。本研究では,虚血性脳卒中患者におけるalteplaseのオフラベル使用はオンラベル使用に比し,臨床転帰不良,sICHリスク上昇と関連するか検討。一次エンドポイント:3ヵ月後の転帰不良(modified Rankin Score(mRS) 3~6と定義)。安全性のエンドポイント:sICH( NINDS定義ECASS II定義SITS-MOST定義)。
デザイン 観察研究。
セッティング 単施設,フィンランド。
期間 登録期間は1995年6月8日~2008年12月31日。追跡期間は3ヵ月。
対象患者 985例。当該施設の基準にしたがい,緊急治療室にてalteplase静注投与を受けた急性虚血性脳卒中患者連続例。
【除外基準】脳底動脈閉塞。
【患者背景】平均年齢はオフラベル群70.7±13.2歳,オンラベル群64.5±11.2歳。各群の脳卒中発症前のmRS 2~5 8%,6%,高血圧64%,54%,糖尿病15%,13%,心房細動33%,26%,脳卒中既往16%,9%。脳卒中発症前のASA使用41%,38%,ASA以外の抗血小板薬使用10%,9%。発症から治療までの平均時間137±53分,113±36分。ベースライン時の平均National Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア 10±6.0,12±5.1。
治療法 欧州でのalteplaseのライセンスについて,1つ以上の違反が認められた症例をオフラベル群(499例),ライセンスにしたがって治療を受けた症例をオンラベル群(486例)として比較。
追跡完了率 追跡不能は28例(2.8%)。
【脱落理由】外国人観光客4例,国外居住者8例,アルコール依存症3例,12~19日後に退院2例,リハビリテーション病院への退院など。
結果

●評価項目
オフラベル群における主なライセンス違反は,年齢>80歳:159例(16%),軽症脳卒中(NIHSSスコア<5):129例(13%),治療前の静注降圧薬使用:112例(11%),発症から治療までの時間が>3時間:95例(10%),血圧>185/110mmHg:47例(5%),経口抗凝固薬使用:39例(4%)であった。
ライセンス違反の数は2つ:114例(12%),3つ:3例(33%),4つ:3例(0.3%)。

3ヵ月後の転帰良好(mRS 0~2)はオフラベル群272例(55.9%),オンラベル群284例(60.4%),死亡は59例(12.1%) vs 41例(8.7%)で,オフラベル使用と3ヵ月後の転帰不良との関連は認められなかった(OR 1.37,95%CI 0.95-1.97)。
多変量解析によると,ライセンス違反のうち転帰不良と独立して関連していたのは>80歳(OR 2.18,95%CI 1.27-3.73,p<0.005)のみであった。

●有害事象
sICH(ECASS定義)発症はオフラベル群33例(6.6%),オンラベル群36例(7.4%)で,sICHリスクとオフラベル使用との関連は認められなかった(OR 0.80,95%CI 0.43-1.48)。
sICH(NINDS定義):43例(8.6%)vs 50例(10.3%)。
sICH(SITS定義):12例(2.4%)vs 9例(1.9%)。
なお年齢>80歳はOR 1.21,95%CI 0.52-2.78であった。

文献: Meretoja A, et al. Off-label thrombolysis is not associated with poor outcome in patients with stroke. Stroke 2010; 41: 1450-8. pubmed
関連トライアル Alshekhlee A et al, Bern Stroke Project, Bichat Clinical Registry, Cappellari M et al, CASES elderly patients, Cronin CA et al, ECASS, J-MARS, Kellert L et al, Madrid Stroke Network, Manawadu D et al, Mikulik R et al 2009, Ruecker M et al, SAINT postthrombolysis ICH, SAMURAI, Saposnik G et al, Saqqur M et al, Sarikaya H et al, Sarikaya H et al (posterior circulation stroke), Schellinger PD et al, Seet RC et al, SITS-ISTR, SITS-ISTR 2010, SITS-ISTR antiplatelet therapy, SITS-ISTR blood pressure, SITS-ISTR elderly, SITS-ISTR within-day and weekly variations, SITS-ISTR young patients, SITS-ISTR/VISTA, SITS-MOST multivariable analysis, Toni D et al, Tsivgoulis G et al, TTT-AIS, VISTA contraindications, VISTA impact of atrial fibrillation, VISTA influence of age
関連記事