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MERCI and Multi MERCI previous IV tPA
結論 tPA静注不成功または静注不適格の虚血性脳卒中患者において,機械的血栓除去術施行後の出血および手技関連合併症リスクは,tPA前投与に関し差異は認められなかった。血栓閉塞部位により層別化すると,tPA静注後の血栓除去術は同等の転帰良好をもたらし,死亡率は低い傾向がみられ,再開通率は同等であった。tPAノンレスポンダーの内頸動脈閉塞患者を除き,転帰良好は血行再建成功と関連していた。
コメント 本研究は脳梗塞発症後8時間以内の血管内機械的血栓除去術の効果をtPA静注療法不成功例とtPA静注療法不適格例間で比較したものである。両群間で出血や手技関連合併症に差違はみられなかった。閉塞部位別解析ではtPA静注療法不適格例と比較してtPA静注療法不成功例でも血栓除去術によって同等の転帰良好効果が示され,死亡率も同等に低い傾向がみられ,再開通率は同等であった。内頸動脈閉塞のtPA静注療法不成功例を除き,転帰良好は血行再建成功の有無と関連していた。本結果はtPA静注療法不成功例における発症8時間までの血管内機械的血栓除去術の効果を示したもので,その積極的な臨床応用がtPA血栓溶解療法が行われている本邦でも期待される。(矢坂正弘

目的 発症後8時間以内の虚血性脳卒中患者に対する血栓除去術の有効性と安全性を検討したMERCI試験(Stroke 2005;36:1432)およびMulti MERCI試験(Stroke 2008;39:1205)のデータを結合し,転帰および血行再建率について,tPA静注不成功例と静注不適格例(非静注例)を閉塞部位により層別化して比較。
デザイン MERCI試験,Multi MERCI試験とも前向き試験。
セッティング 多施設。
期間
対象患者 305例。発症後8時間以内に血管内血栓除去術を施行した虚血性脳卒中患者。
[MERCI]tPA静注不適格者。
[Multi MERCI]血管造影で閉塞部位を確定できた,脳卒中発症から3時間以内にtPA 0.6mg/kgまたは0.9mg/kg静注を受けた患者。tPA動注は血栓除去術が6回通過後,または近位部の血栓除去術成功後遠位部塞栓治療が不成功の場合のみ可とした。
【除外基準】表記なし。
【患者背景】平均年齢はtPA静注不成功例67.8±12.7歳,静注不適格例(非静注例)67.6±16.3歳。女性56.3%,51.4%。高血圧79.2%,70.7%。糖尿病19.1%,20.4%。脂質異常症46.8%,31.6%(p<0.05)。冠動脈疾患43.5%,40.8%。うっ血性心不全15.6%,19.3%。喫煙23.4%,22.8%。心房細動45.8%,41.7%。ベースライン時のNational Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア 19.1±5.5,19.8±6.7。症状発現から動脈内アクセスまでの時間3.95±1.16時間,4.43±1.84時間。閉塞部位:内頸動脈2.1%,10.5%,内頸動脈終末部35.4%,21.0%,中大脳動脈M1 43.8%,50.2%,同M2 12.5%,8.6%,椎骨脳底6.3%,9.7%。
治療法 tPA静注不成功または静注不適格の虚血性脳卒中患者に対し,発症後8時間以内に血管内血栓除去術を施行。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
対象患者305例のうち,tPA静注不成功は48例(15.7%),静注不適格例(非静注例)は257例(84.3%)であった。
最終血行再建率:tPA静注不成功例35例(72.9%),非静注例162例(63.0%)。
死亡率:13例(27.7%),101例(40.1%)(p=0.08)。
症候性頭蓋内出血発生率:5例(10.4%),22例(8.6%)。
手技関連合併症発生率:2例(4.2%),17例(6.6%)。
90日後の転帰良好(modified Rankin Score;mRS 0~2):18例(38.3%),76例(31.3%)。
(内頸動脈29.4%,28.8%,中大脳動脈40.7%,33.3%,椎骨脳底66.7%,28.0%)。
[術後の血行再建状態別の検討]
tPA静注不成功例;
転帰良好:血行再建例16例(47.1%)vs. 非血行再建例2例(15.4%)(p=0.09)。
死亡率:23.5% vs. 38.5%。
tPA非静注例;
転帰良好:血行再建例72例(47.4%)vs. 非血行再建例4例(4.4%)(p<0.001)。
死亡率28.5% vs. 59.6%(p<0.001)。

●有害事象
[評価項目]に表記。

文献: Shi ZS, et al.; MERCI and Multi MERCI Investigators. Endovascular thrombectomy for acute ischemic stroke in failed intravenous tissue plasminogen activator versus non-intravenous tissue plasminogen activator patients: revascularization and outcomes stratified by the site of arterial occlusions. Stroke 2010; 41: 1185-92. pubmed
関連トライアル De Marchis GM et al, GWTG-Stroke Registry risk of sICH, GWTG-Stroke time to treatment, IMS III, Machumpurath B et al, Mendonça N et al, MERCI and Multi MERCI, MR RESCUE, Pervez MA et al, RECANALISE, Registry of the Canadian Stroke Network, SAINT postthrombolysis ICH, Sarikaya H et al, Sarikaya H et al (posterior circulation stroke), SPOTRIAS, 虚血性脳卒中患者に対するIV/IA併用療法, 内頸動脈閉塞に続発する脳梗塞に対するtPA静注および動脈内血管内療法
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