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Sibbing D et al(2010) Cytochrome 2C19*17 allelic variant, platelet aggregation, bleeding events, and stent thrombosis in clopidogrel-treated patients with coronary stent placement
結論 CYP2C19*17はclopidogrelの血小板凝集抑制作用の増強および出血リスク上昇と関連する。
コメント クロピドグレルの活性代謝物の産生が肝臓におけるチトクロームP450,特にCYP2C19の遺伝子型により影響を受けると報告されて以来,CYP2C19の遺伝子多型とクロピドグレルの薬効の関係に関する論文が多数発表されている。本研究ではCYP2C19*17という遺伝子多型のホモ,ヘテロの群と,野生型の症例における血小板凝集率,出血,血栓イベントが検討された。試験は前向きコホート試験であるが,症例数は1524例と多くなく,観察期間も30日にすぎない。それでもCYP2C19*17を有する症例では出血リスクが増加すると結論された。ADP惹起血小板凝集率もCYP2C19*17を有する症例で低いとされ,ストーリーは論理的に完結している。論文中図1,図2で示されている結果は本論文の結論を支持する傾向があったが,実際の計測値には大きなばらつきがあることが容易に想像できる。通常,このqualityの論文はCirculationに採択されることはないであろう。それでも実際に採択されているのであるから,後日の研究者が今の時代を振り返ると「2010年前後には狂ったようにCYP2C19とクロピドグレルの関係が注目された異常な時代があったね」と判断されるだろう。(後藤信哉

目的 PCIを施行するclopidogrel投与患者において,近年発見されたCYP2C19の変異アレル*17 がADP誘発性血小板凝集,出血リスク,ステント血栓症に及ぼす影響を検討。安全性の一次エンドポイント:30日の大/小出血(TIMI出血基準)。有効性の一次エンドポイント:30日のステント血栓症(ステント血栓症(ARC基準)定義definiteまたはprobable)。
デザイン 前向きコホート研究。
セッティング 単施設,ドイツ。
期間 登録期間は2007年2月~2008年4月。追跡期間は30日。
対象患者 1524例。Multiplate analyzerの試験のために登録された,薬剤溶出性ステント植込みを予定されている冠動脈疾患(安定/不安定狭心症,ST上昇型/非ST上昇型心筋梗塞)患者連続例1608例のうち,遺伝子型データを入手できた症例。
【除外基準】aspirinまたはclopidogrel禁忌,PCI前10日以内のGP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与歴。
【患者背景】年齢は野生型ホモ接合型(*wt/*wt)群67.5±10.7歳,ヘテロ接合型(*wt/*17)群67.2±10.4歳,ホモ接合型(*17/*17)群67.4±9.6歳。各群の女性21.5%,23.8%,26.3%。糖尿病26.5%,31.1%,27.6%。現喫煙14.5%,11.2%,19.7%。高血圧91.4%,91.4%,90.8%。高コレステロール血症70.2%,69.6%,72.4%。冠動脈疾患家族歴41.7%,41.6%,51.3%。心筋梗塞既往31.7%,32.8%,27.6%。多枝疾患84.9%,84.9%,81.6%。入院時の薬物療法:aspirin 75.4%,76.6%,75.0%,thienopyridine 43.3%,41.9%,31.6%,クマリン誘導体11.0%,10.8%,7.9%,プロトンポンプ阻害薬18.9%,17.6%,13.2%。
治療法 全例に,手技前(推奨は2時間以上前)にclopidogrel 600mgを前投与。冠インターベンションは現行のガイドラインにしたがって行われた。大多数の患者に未分画heparinが静注され,一部の患者にbivalirudinが投与された。少数例(5%未満)にはheparinを減量したうえでabciximab(0.25mg/kgボーラス投与後,0.125μg/kg/分を12時間投与)が静注された。手技後は抗血小板薬併用療法(clopidogrel 75mg,1日1回およびaspirin 100mg,1日2回)を受け退院した。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
CYP2C19*17遺伝子型はヘテロ接合型(*wt/*17)群546例,ホモ接合型(*17/*17)群76例,野生型ホモ接合型(*wt/*wt)群902例であった。
Multiplate analyzerによるADP誘発性血小板凝集値は*wt/*17群215(IQR 140~342)AU×分(p=0.039),*17/*17群186(IQR 119~301)AU×分(p=0.008)と,いずれも*wt/*wt群238(IQR 146~388)AU×分に比し低かった。
出血は51例(3.3%,大出血12例+小出血39例)に発生し,CYP2C19*17を有する例では出血リスクが上昇した(*wt/*17群+*17/*17 vs. *wt/*wt群:OR 1.80,95%CI 1.03-3.14)。出血リスクが最も高かったのは*17/*17群であった(傾向p=0.01;vs. *wt/*wt群:OR 3.27,95%CI 1.33-8.10)。大出血のうち致死性頭蓋内出血は2例で,いずれもCYP2C19*17を有する例であった。
ステント血栓症は14例(3.3%,definite 10例+probable 4例)に発生したが,遺伝子型別の有意差は認められなかった。死亡,心筋梗塞も同様に有意差は認められなかった。
CYP2C19*17は血小板凝集(p=0.0006),出血リスク(p=0.006)と独立して関連していたが,ステント血栓症との関連は認められなかった(p=0.79)。

●有害事象

文献: Sibbing D, et al. Cytochrome 2C19*17 allelic variant, platelet aggregation, bleeding events, and stent thrombosis in clopidogrel-treated patients with coronary stent placement. Circulation 2010; 121: 512-8. pubmed
関連トライアル 3T/2R, AFIJI CYP2C19, Berger PB et al 1999, CLASSICS, clopidogrel投与患者におけるCYP2C19*2機能喪失変異またはPPI併用にもとづく心血管リスク, Cuisset T et al, EXCELSIOR CYP2C19, FAST-MI CYP2C19 and PPI, FAST-MI genetic determinants, Mega JL et al, Migliorini A et al, Mishkel GJ et al, Moussa I et al, Müller C et al, POPular CYP2C19*2, Shuldiner AR et al(PAPI/Sinai病院研究), Sibbing D et al (2009, Eur Heart J), Sibbing D et al (2009, JACC), TRITON-TIMI 38 early and late benefits, TRITON-TIMI 38 PCI
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