抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
AAA Aspirin for Asymptomatic Atherosclerosis
結論 心血管疾患既往のない足首上腕血圧比(ABI)低下者において,aspirinはプラセボに比し血管イベント発生を低減させなかった。
コメント アスピリンの有効性は,既に疾患を発症した急性期もしくは慢性期の脳・心虚血疾患においては22%のリスク減少が証明されている。一方,未だ疾患を発症していないリスク因子のみの患者においては,一次エンドポイントの減少を証明し得ておらず,それらを訴求する臨床試験が現在遂行中である。本試験はABIの低下という潜在性末梢動脈硬化症を有する患者を対象にしているが,疾患未発症者の一次予防に相当し,その限りでは従来の試験結果の延長線上にあると考えられる。確かに疾患発症率は一次エンドポイントで13.5/1000人・年,2次複合エンドポイントで22.8/1000人・年と日本の高齢者/ハイリスク患者のリスクレベルに相当し,スコットランドで行われた試験にしては極めてリスクの低い集団といえる。ABI≦0.95という基準も甘く,糖尿病罹患率や降圧薬/スタチン服用率も数パーセントで,たとえ末梢動脈硬化症が疑われるといっても,決してハイリスク集団とは言えない。これらの集団では,アスピリンは利益よりも薬剤のリスクが優る可能性がある。我が国での疾患発症率や出血リスクは欧米と異なっており,今後どの程度のリスク集団においてアスピリンによる利益/リスク比が妥当となるか,日本人自身のデータで示さなくてはならない。(島田和幸

目的 ABIの低下はアテローム性動脈硬化の兆候,また心/脳血管イベントリスク上昇を示唆する。そのため,ABI低下者をスクリーニングすることは,潜在的に予防的治療に適している無症候性高リスクグループを特定することができる。本試験では,一般集団におけるABI低下者スクリーニングが,aspirinによる予防効果を享受できる高リスクグループを同定できるか検討する。一次エンドポイント:初回の致死性/非致死性の冠動脈イベント,脳卒中,血行再建術の複合。二次エンドポイント:(1)初回の全血管イベント(一次エンドポイントまたは狭心症,間欠性跛行または一過性脳虚血性発作の複合,(2)全死亡。
デザイン ランダム化,二重盲検,プラセボ対照試験。intention-to-treat解析。ISRCTN66587262。
セッティング 多施設,英国(スコットランド)。
期間 実施期間1998年4月~2008年10月。平均追跡期間8.2±1.6年。
対象患者 3350例。ABI低下者スクリーニングに協力した,心血管疾患既往のないボランティア28980例のうち,50~75歳でABI≦0.95の者。
【除外基準】心筋梗塞,脳卒中,狭心症,末梢動脈疾患の既往;aspirin,他の抗血小板薬,抗凝固薬投与中;重度の消化不良;慢性肝/腎疾患;化学療法中;aspirin禁忌;ヘマトクリット値の異常(スクリーニング後に測定)。
【患者背景】平均年齢はaspirin群62.2±6.7歳,プラセボ群61.7±6.6歳。男性29%,28%。ABI 0.86±0.09,0.86±0.09。血圧148±22/84±11mmHg,147±22/84±11mmHg。血清総コレステロール238.7±41.3mg/dL,238.2±42.4mg/dL。現喫煙33%,32%。糖尿病3%,3%。薬物療法:利尿薬15.5%,15.0%,β遮断薬10.0%,9.6%,硝酸剤/Ca拮抗薬6.6%,6.3%,ACE阻害薬/AII拮抗薬6.3%,6.1%,脂質低下薬4.1%,4.4%。
治療法 aspirin群(1675例。aspirin腸溶錠100mg投与),プラセボ群(1675例)にランダム化。
追跡完了率 追跡不能は各群5例,計10例(0.3%)。
結果

●評価項目
一次エンドポイントはaspirin群13.7(95%CI 11.8-15.9)/1000患者・年,プラセボ群13.3(95%CI 11.4-15.4)/1000患者・年で,有意差は認められなかった(HR 1.03,95%CI 0.84-1.27)。ベースラインの患者特性で調整しても同じ結果であった(HR 1.00,95%CI 0.81-1.23)。
二次エンドポイントも22.8(95%CI 20.2-25.6)/1000患者・年 vs 22.9(95%CI 20.3-25.7)/1000患者・年と,有意差は認められなかった(HR 1.00,95% CI 0.85-1.17)。
全死亡も176例 vs 186例と有意差は認められなかった(HR 0.95,95% CI 0.77-1.16)。

●有害事象
入院を要する大出血イベントは34例(2.5/1000患者・年)vs 20 例(1.5/1000患者・年)で,有意差は認められなかった(HR 1.71,95% CI 0.99-2.97)。頭蓋内出血は11例 vs 7例。

文献: Fowkes FG, et al.; Aspirin for Asymptomatic Atherosclerosis Trialists. Aspirin for prevention of cardiovascular events in a general population screened for a low ankle brachial index: a randomized controlled trial. JAMA. 2010; 303: 841-8. pubmed
関連トライアル AAASPS 2003, APPRAISE-2, aspirinの一次および二次予防効果(ATT), aspirin連日投与による癌転移抑制効果, aspirin連日投与による短期の癌発生,癌死,非血管死抑制効果, CAST, CHARISMA, CREDO, EAFT 1993, ESPRIT , HOT post-hoc subgroup analysis, JPAD, MATCH, POISE-2, SPS3, TPT, WARCEF, WARSS, WASID, WHS
関連記事