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Themistoclakis S et al The Risk of Thromboembolism and Need for Oral Anticoagulation After Successful Atrial Fibrillation Ablation
結論 アブレーション成功の3~6ヵ月後に経口抗凝固療法(OAT)を中止した患者における塞栓イベント発症率は,OAT継続例と同等であった。これにより,塞栓症リスクが中等度~高度であっても,アブレーション成功後はOATを中止した方がリスク/ベネフィット比は好ましいと考えられた。
コメント あくまでも後ろ向き研究であり,無作為化されていないこと,ワルファリン継続群と中止群で背景因子が大きく異なることに留意すべきである。特に,中止群ではCHADS2スコア0点が60%,継続群では1点以上が76%であり,両群間の虚血性脳卒中発症率に差がなかったことから,ワルファリン継続群で脳梗塞発症を抑制できたとも解釈できる。著者もconclusionの最後に記載しているように,より大規模の前向き試験が必要と考えられる。一方で,CHADS2スコアが高いほど出血のリスクも高いことが知られており,抗凝固薬を使用する際にはより厳格なINRコントロールが求められる。今回のstudyでも大出血時INR測定しえたほとんどの症例がINR 4.3~7.6と高値であった。(是恒之宏

目的 肺静脈隔離アブレーションは有用な心房細動治療と見なされており,潜在的利点の一つにOATを中止できる可能性がある。本研究は,意見が分かれているアブレーション成功後のOAT中止の安全性について検討する。評価項目:虚血性脳卒中,大出血(アブレーション後OATを継続した3~6ヵ月間の発生は除く)。
デザイン 後ろ向き観察研究。
セッティング 多施設(5施設),米国。
期間 対象患者の項に表記。
対象患者 3355例。OAT中止群(2692例):2001年1月~2005年12月に参加施設に照会された,アブレーション成功後OATを中止した患者連続例。OAT継続群(663例):2003年1月~2005年12月に参加施設に照会された,アブレーションを受け,かつOATを継続した患者連続例。肺静脈隔離アブレーションのため選ばれた全例は症候性薬物耐性発作性/持続性/永続性心房細動の既往を有していた。最終アブレーション後1ヵ月以上かつOAT中止後6ヵ月の追跡期間を必須の対象基準とした。
【除外基準】人工弁。
【患者背景】平均年齢はOAT中止群57±11歳,OAT継続群59±11歳*。男性79%,70%(p=0.0026)。AFの病型;発作性62%,51%*,持続性16%,26%*,永続性22%,22%。血栓塞栓症リスク因子;うっ血性心不全6%,17%*,高血圧34%,57%*,年齢≧75歳3%,7%*,糖尿病5%,13%*,脳卒中/一過性脳虚血発作の既往5%,16%*。CHADS2スコア;0:60%,23%*,1:27%,39%*,≧2:13%,37%**p<0.0001
治療法 全例においてアブレーション施行日の夜に用量調整warfarin投与を再開し,最低3~6ヵ月間,PT-INR 2~3を維持するよう継続した。この期間の後,各施設は,施設ごとの方針および参加者の特性により長期抗凝固療法の方針を決定した。OATは,原則として以下の3点がなければCHADS2スコアにかかわらず中止とした;(1)心房性頻脈性不整脈(1分以上のAF/心房粗動/頻脈)の再発,(2)重度(>70%)の肺静脈狭窄,(3)重度の左心房機械的機能障害。AFの早期再発または心房粗動の発作,かつCHADS2スコア1以上の患者は最低6ヵ月間OATを継続し,不整脈治療薬中止後3ヵ月以上不整脈の再発がない場合はOATを中止した。OAT中止後はaspirin 81~325mg/日投与を行った。OAT中止後に心房性頻脈性不整脈が再発したCHADS2スコア1以上の患者ではOATを再開した。
追跡完了率
結果

●評価項目
OAT中止群では,92%がOATからaspirinに切り替えられた。残る8%で投与されなかった理由は禁忌,不耐容,患者の拒否であった。
追跡期間(28±13ヵ月 vs 24±15ヵ月)における虚血性脳卒中発症はOAT中止群2例(0.07%),OAT継続群3例(0.45%)で,有意差は認められなかった(p=0.06)。発症者におけるCHADS2スコアは,OAT中止群2例は0および1,OAT継続群3例は1:1例,2:2例であった。他の血栓塞栓イベントは発症しなかった。

●有害事象
大出血はOAT中止群1例(0.04%)と,OAT継続群13例(2%)に比し少なかった(p<0.0001)。出血部位は,OAT中止群1例は後腹膜出血,OAT継続群13例は頭蓋内出血2例,消化管出血11例であった。

文献: Themistoclakis S, et al. The Risk of Thromboembolism and Need for Oral Anticoagulation After Successful Atrial Fibrillation Ablation. J Am Coll Cardiol 2010; 55: 735-43. pubmed
関連トライアル ACTIVE W paroxysmal vs sustained, Pengo V et al, Poli D et al, Roldan V et al, Sadanaga T et al, SPAF III 1998
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