抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
Pervez MA et al Remote supervision of IV-tPA for acute ischemic stroke by telemedicine or telephone before transfer to a regional stroke center is feasible and safe
結論 地方のスポーク施設において,drip and shipアプローチによりtPA静注を受けた急性虚血性脳卒中患者の転帰は,中心部のハブ施設での治療と同程度であった。drip and shipアプローチは,tPA静注までの時間を短縮する上で安全かつ有効である。
コメント 車輪のハブとスポークに見立てるHub-and-spoke networkと称する医療連絡の構築と運用が脳卒中分野で試みられている。Hubには地域の中核となる脳卒中センターが対応し,周辺の病院がspoke病院となる。Hubとspokeの間に遠隔医療システムや電話によるコンサルテーションシステムを構築し,発症から治療開始までに厳格な時間制限があるtPA血栓溶解療法に応用している。具体的にはHub-and-spoke networkを利用してspoke病院でtPA血栓溶解薬の投与を開始してから,患者をHub病院へ搬送することで,Hub病院に収容してからtPA血栓溶解療法を行うよりも,より多くの症例にtPA血栓溶解療法を提供できるというわけである。この搬送スタイルはdrip and shipと呼ばれている。今回の検討はdrip and ship方式でtPA血栓溶解療法が行われた症例とHub病院に収容してからtPA血栓溶解療法が行われた症例間で転帰に差異がないことを示しており,tPA血栓溶解療法のdrip and ship方式の普及に弾みをつける結果と言える。本邦でも脳卒中医療の均てん化が問題となっているが,Hub-and-spoke networkに基づくdrip and ship方式が都市部以外でtPA血栓溶解療法を普及させる一法となるかもしれない。(矢坂正弘

目的 脳卒中専門医不足のため,地方のスポーク施設の多くでは,中心部にあるハブ施設へ患者を搬送する前に遠隔医療(telestroke)や電話によるコンサルテーションを用いてtPA静注を行っている(drip and shipアプローチ)。本論文ではGet With the Guidelines Stroke(GWTG-Stroke)データベースを用い,このdrip and shipアプローチによりtPA静注を受けた患者の転帰をハブ施設での治療と比較する。
デザイン 前向き登録研究。
セッティング 多施設(34施設),米国。
期間 登録期間は2003年1月~2008年3月。
対象患者 296例。施設の基準*にしたがいtPA静注を受けた急性虚血性脳卒中患者全例(スポーク施設の患者は,tPA静注後ハブ施設へ搬送した症例を対象とした)。
*:18歳以上,長期身体障害を生じさせると予期される顕著な神経学的欠損,noncontrast CTにて出血または確立された新規梗塞の所見が認められない,発症からtPA静注までが明確に3時間以内。
【除外基準】tPA静注後カテーテルによる再灌流療法を施行。
【患者背景】平均年齢はスポーク施設治療群71.5±14.7歳,ハブ施設治療群73.6±12.4歳。各群の男性47.0%,48.7%。来院時のNational Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア中央値(IQR)13(7~18),12(8~19),NIHSSスコア>20 11.6%,22.6%(p=0.01)。病歴:CAD/MI 26.0%,27.0%,糖尿病16.6%,25.2%,高血圧65.2%,71.3%,心房細動27.6%,28.7%,脂質異常症29.8%,40.0%,脳卒中/TIAの既往15.5%,24.4%。発症からtPA静注までの時間中央値(IQR)140(117.3~165.3)分,130(102.5~162.8)分。
治療法 33のスポーク施設のうち,12施設では遠隔医療,21施設では電話によるコンサルテーションによりtPA静注を行い,その後ハブ施設へ搬送。
追跡完了率 modified Rankin Score(mRS)スコアに関する追跡終了は80.1%。
結果

●評価項目
tPA静注はスポーク施設で181例(61.1%),ハブ施設で115例(38.9%)に行われた。スポーク施設での治療は,遠隔医療84例(46.4%),電話によるコンサルテーション97例(53.6%)。

[スポーク施設 vs ハブ施設]
院内死亡率はスポーク施設治療群14.92%,ハブ施設治療群17.39%(p=0.57),症候性頭蓋内出血(sICH)は3.87% vs 5.22%(p=0.58),重篤な全身出血は0.55% vs 2.61%(p=0.14)と,いずれも有意差は認められなかった。
生存者における平均入院期間は,スポーク施設治療群5.9±3.7日と,ハブ施設治療群7.6±6.5日に比し短かった(p<0.001)。退院時の状態は同等であった(退院時独立歩行可能73.8% vs 77.7%,p=0.5)。

[遠隔医療 vs 電話によるコンサルテーション]
sICH発症率は遠隔医療群4.76%,電話によるコンサルテーション群3.09%(p=0.56),全死亡率は10.71% vs 18.56%(p=0.14)と,いずれも有意差は認められなかった。
発症からtPA静注までの時間(中央値,IQR)は140(120~164.8)分 vs 140(110~169.8)分(p=0.89),平均入院期間は5.9±3.6日 vs 5.9±3.8日(p=0.64)と,いずれも有意差は認められなかった。

●有害事象
[評価項目]に表記。

文献: Pervez MA, et al. Remote supervision of IV-tPA for acute ischemic stroke by telemedicine or telephone before transfer to a regional stroke center is feasible and safe. Stroke 2010; 41: e18-24. pubmed
関連トライアル CASES elderly patients, Chernyshev OY et al, Guillan M et al, GWTG-Stroke Registry risk of sICH, GWTG-Stroke time to treatment, Martin-Schild S et al, MERCI and Multi MERCI previous IV tPA, Rost NS et al, SAINT postthrombolysis ICH, STRokE DOC, Toni D et al, 血栓溶解療法後の頭蓋内出血
関連記事