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Migliorini A et al High residual platelet reactivity after clopidogrel loading and long-term clinical outcome after drug-eluting stenting for unprotected left main coronary disease
結論 薬剤溶出ステント(DES)植込みによる冠インターベンション(PCI)施行を受ける非保護左主幹部病変(ULMD)患者において,clopidogrel 600mg負荷投与後の高い残存血小板反応性(HRPR)は,心臓死およびステント血栓症リスク上昇の強い指標であった。DES植込みの適応の可能性があるULMD患者では,治療決定の際にclopidogrelに対する反応についてのin vitroの評価を実施することが推奨される。
コメント 左冠動脈主幹部病変の予後は悪い。かつて冠動脈バイパス手術が欧米にて普及した背景には,主幹部病変を有する症例の長期予後がバイパス手術により改善することが示された事実があった。バイパス手術によって心筋を灌流する血管はnative血管,バイパス血管の2本になる。主幹部病変にもとづく広範囲の心筋虚血のみならず,灌流血管閉塞時のsalvageが可能になったことが主幹部病変の症例の予後がバイパス手術により改善する理由であろう。
経皮的インターベンションが普及し,バイパス手術よりは容易に心筋虚血を改善できる。一方,インターベンション後も灌流血管が増えるわけではないので,バイパス手術と異なり長期予後を改善できるか否かには疑問がある。血栓性閉塞に血小板が寄与し,血小板の機能阻害により血栓イベントを予防できるのであれば,冠動脈主幹部病変に対する冠動脈インターベンション施行に意味付けができる。本研究では,クロピドグレル服用後に血小板凝集率が十分に低下しなかった症例では3年間の観察期間における心臓死が多いと報告された。クロピドグレル服用後の血小板凝集率が低下しない,ということが心臓死の多い原因であるか結果であるかには不明の点が残る。今後の検討課題である。(後藤信哉

目的 DES植込みを受けるULMD患者において,clopidogrel 600mg負荷投与後のHRPR(ADPによる血小板凝集≧70%)が長期臨床転帰に与える影響を検討。一次エンドポイント:心臓死,二次エンドポイント:ステント血栓症。
デザイン コホート研究。
セッティング 単施設,イタリア。
期間 DES植込み実施は2005年1月~2008年9月。追跡期間中央値は19.3ヵ月(IQR 9.4~34.3ヵ月)。
対象患者 215例。ULMD(左主幹部の狭窄率>50%)に対するPCIを施行した患者連続例のうち,clopidogrel 600mg負荷投与後のlight transmittance aggregometryによるHRPRデータを有する患者。冠動脈解剖学にかかわらず,安定冠動脈疾患,急性冠症候群(ACS),および非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)は採用した。
【除外基準】STEMI,12ヵ月以上の抗血小板薬併用療法に対するノンコンプライアンスが予期される。
【患者背景】平均年齢はHRPR患者72±10歳,LRPR(残存血小板反応性が低い)患者71±10歳。男性63%,81%(p=0.014)。動脈性高血圧85%,77%,糖尿病45%,23%(p=0.006),高脂血症75%,67%,末梢血管疾患35%,31%,MI既往28%,22%,PCI歴30%,33%。安定狭心症18%,21%,不安定狭心症63%,55%,NSTEMI18%,19%, ACS 80%,75%。
治療法 前治療として,PCI施行の12時間以上前にaspirin 325mgおよびclopidogrel負荷用量600mgを投与。PCIは,ULMDおよび多枝病変患者に対しては標準的な方法で実施した。GP IIb/IIIa受容体阻害薬の投与は術者の裁量によった。
PCI後,全例にaspirin 325mg/日を無期限投与,およびclopidogrel 75mg/日を最低12ヵ月投与した。clopidogrel負荷用量600mgに対するノンレスポンダーに対しては,同150mg/日またはticlopidine 500mg/日を投与。12ヵ月後,clopidogrel無期限投与を推奨した。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
全例のうち,HRPR患者は40例(18.6%),LRPR患者は175例(81.4%)であった。
全例における推定心臓死率は1年後3.9±1.3%,2年後7.5±2.2%,3年後12.2±3.4%であった。
3年後の推定心臓死率はHRPR患者28.3±10.4%と,LRPR患者8.0±3.1%に比し高かった(p=0.005)。
推定ステント血栓症発生率はHRPR患者16.0±7.3%と,LRPR患者4.2±1.8%に比し高かった(p=0.021)。
clopidogrel負荷投与後のHRPRは,心臓死(HR 3.82,95%CI 1.38-10.54,p=0.010)およびステント血栓症(HR 3.69,95%CI 1.12-12.09,p=0.031)の唯一の独立予測因子であった。

●有害事象
心臓死以外の死亡は10例(癌6例,出血性脳卒中1例など)であった。TIMI大出血はHRPR群7.5%,LRPR群2.3%と同等であった(p=0.094)。

文献: Migliorini A, et al. High residual platelet reactivity after clopidogrel loading and long-term clinical outcome after drug-eluting stenting for unprotected left main coronary disease. Circulation 2009; 120: 2214-21. pubmed
関連トライアル 3T/2R, ACDC, ADAPT-DES, ARMYDA-PRO, BASKET-LATE, BASKET-LATE, CREDO, CREDO, Cuisset T et al, Cuisset T et al, DES LATE, EPISTENT 1999, EVENT, EXCELLENT, EXCELSIOR CYP2C19, GRAVITAS, ISAR-SWEET, POPular CYP2C19*2, PRINCIPLE-TIMI 44, REAL-LATE / ZEST-LATE, RECLOSE antiplatelet nonresponsiveness, RECLOSE antiplatelet nonresponsiveness, RELOAD, RELOAD, Ruiz-Nodar JM et al, Sibbing D et al (2009, JACC), Sibbing D et al (2009, JACC), Sibbing D et al(2010), SPIRIT III, SPIRIT III, TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 PCI, TRITON-TIMI 38 PCI
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