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ASP Ancrod Stroke Program
結論 急性虚血性脳卒中患者において,発症後6時間以内のancrod静注はフィブリノーゲンを迅速に低下させ低フィブリノーゲン血症の延長を抑制したが,臨床転帰は改善せず,出血を増加させる傾向が認められた。

目的 先行試験では,急性虚血性脳卒中患者におけるancrodの複数日間投与の効果は相反していた。本論文では,発症後6時間以内のancrod静注の有効性と安全性を検討する。有効性の一次エンドポイント:90日後の機能回復*1。有効性の二次エンドポイント:神経学的回復*2Barthel Index。安全性のエンドポイント:死亡,頭蓋内出血,大出血。

*1:脳卒中前のmodified Rankin Score(mRS) 0~1かつ治療前のNational Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア5~15:90日後のmRSが0~1に回復,同mRS 0~1かつNIHSS≧16:90日後のmRSが0~2に回復,同mRS≧2(NIHSSは問わず):90日後のmRSが発症前と同等以上に回復。
*2:90日後のNIHSSが11点以上の改善,またはNIHSS 0~1に回復。
デザイン 本論文は,試験対象/除外基準が同一である2つの第III相二重盲検RCT(NTI-ASP-0502[ASP-I],NTI-ASP-0503[ASP-II])の中間解析の統合解析。full-analysis解析(有効性)。ASP-I:NCT00141011,ASP-II:NCT00300196。
セッティング 多施設。12ヵ国(北米,ヨーロッパ,アフリカ,アジア,オセアニア)。
期間 登録開始はASP-Iは2004年9月,ASP-IIは2005年1月。追跡期間は90日。
対象患者 500例。18歳以上,急性虚血性障害の徴候/症状,発症後6時間以内に試験薬による治療開始が可能,治療前のNIHSS≧5,脳卒中発症前のmRS 0~1(ASP-IではmRS≧2も採用)。
【除外基準】頭蓋内および血管外出血(神経画像検査で証明),昏睡(治療前のNIHSS 1a>2),治療開始前にNIHSS<5に改善,heparin,warfarin,rt-PAを使用中/予定(aspirinなど抗血小板薬は可),6週間以内の脳卒中既往,治療前の血圧>185/105mmHg,治療前のフィブリノーゲン<100mg/dL,内因性/外因性凝固障害,ancrod使用歴またはマムシによる咬傷歴など。
【患者背景】平均年齢はancrod群70.2歳,プラセボ群69.6歳。男性49.0%,49.4%。既往症:糖尿病25.7%,29.6%,喫煙21.3%,27.5%。治療前のNIHSS(平均/中央値)10.5/9,11/9, NIHSS 5~7:36.8%,34.8%, 8~15:42.7%,44.5%,≧16:20.6%,20.6%。発症から治療までの時間(平均/中央値)5.1/5.2時間,5.2/5.5時間。
治療法 ancrod群*3(253例),プラセボ群(247例)にランダム化。
*3:ancrod 70 WHO IU/mLを生理食塩水250mLで希釈。治療前のフィブリノーゲン濃度が≧200mg/dLの患者にはancrod 0.5 IU/kgを3時間かけて静注,100~199mg/dLの場合には同0.33 IU/kgを2時間かけて静注。
追跡完了率 試験完遂はancrod群208例,プラセボ群204例。
【脱落理由】死亡,追跡不能など。
結果

●評価項目
(本中間解析の結果,データ安全性モニタリング委員会は,ancrodの有効性はみられないものとして試験中止を勧告した)

90日後の機能回復はancrod群99例(39.6%),プラセボ群92例(37.2%)と同等であった(OR 1.124,95%CI 0.763-1.796,p=0.47)。
90日後の神経学的回復も94例(37.3%)vs 96例(38.9%)と同等であった(OR 0.983,95%CI 0.660-1.465,p=0.94)。
ベースラインから24時間後のNIHSSスコアの平均変化は1.4 vs. 2.1。
90日後の死亡は39例(15.6%)vs 34例(14.1%)と同等であった(p=0.32)。おもな死因は脳卒中:15例(38.5%) vs 13例(38.2%)。
ancrod群における脱フィブリノーゲン(>30mg/dL/時)達成は177例(91.2%)で,このうち機能回復率は40.1%であった。低フィブリノーゲン血症の延長は235例(97.9%)で抑制された。

●有害事象
72時間後の症候性頭蓋内出血は10例(3.9%) vs 5例(2.0%)と同等であった(p=0.19)。大出血は,72時間後では5.5% vs 1.6%とancrod群の方が多かったが(p=0.028),10日後は6.3% vs 2.9%と有意差は認められなかった(p=0.054)。

文献: Levy DE, et al. Ancrod in Acute Ischemic Stroke: Results of 500 Subjects Beginning Treatment Within 6 Hours of Stroke Onset in the Ancrod Stroke Program. Stroke 2009; 40: 3796-803. pubmed
関連トライアル AbESTT-II, AbESTT-II wake-up stroke, Camerlingo M et al, ECASS III, ECASS III additional outcomes, ESTAT, J-ACT, SAINT postthrombolysis ICH, Saqqur M et al, Schellinger PD et al, SITS-ISTR, SITS-MOST multivariable analysis, Toni D et al
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