抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
CHAMPION PCI Cangrelor versus Standard Therapy to Achieve Management of Platelet Inhibition PCI
結論 急性冠症候群(ACS)患者において,冠インターベンション(PCI)施行30分前から2時間後までのcangrelor継続静注は,PCI施行30分前のclopidogrel 600mg経口投与に比し,48時間後の全死亡,心筋梗塞(MI),虚血による血行再建術を抑制しなかった。
コメント 日本には経静脈的に投与可能な抗血小板薬がない。試験の対象となった欧米では静注のGP IIb/IIIa受容体阻害薬が使用可能であり,カテーテル中に血栓が生じた症例などには即時に対応可能であるため本薬のメリットは少ない。日本には経静脈的に投与可能な抗血小板薬がないため,手技中に血栓イベントを起こした症例など少数の症例にメリットがある可能性がある。(後藤信哉

目的 ACS患者において,新規の静注抗血小板薬cangrelorの有効性および安全性をclopidogrelと比較。CHAMPION試験は cangrelorのPCI前投与(本試験)およびPCI後投与( CHAMPION PLATFORM )の2試験からなる。有効性の一次エンドポイント:48時間後の全死亡,心筋梗塞,虚血による血行再建術の複合。安全性のエンドポイント:48時間後の出血事象(GUSTO出血基準TIMI出血基準ACUITY出血基準)。
デザイン ランダム化,二重盲検,ダブルダミー。intention-to-treat解析(有効性の解析からはSTEMI患者を除外)。NCT00305162。
セッティング 多施設(268施設),14ヵ国。
期間 登録中止は2009年5月13日。追跡期間は1年。
対象患者 8877例。閉塞性冠動脈疾患を伴う安定/不安定狭心症,PCI施行予定の非STEMI患者。なお2007年5月,ACSの明確な特徴(初回PCI施行予定のSTEMI;心マーカー陽性の非STEMI,ECG上の変化を伴う胸痛を有する≧65歳あるいは糖尿病)を有する患者を対象とするようプロトコールが修正された。
【除外基準】―
【患者背景】年齢中央値(IQR)はcangrelor群62.0(54.0~70.0)歳,clopidogrel群62.0(54.0~71.0)歳。男性73.9%,72.2%。安定狭心症15.1%,15.0%,不安定狭心症24.7%,24.5%,非STEMI 49.2%,49.1%,STEMI 11.0%,11.5%。他の病歴:既往:糖尿病30.5%,30.5%,高血圧72.1%,71.0%,脂質異常症66.6%,65.5%,脳卒中または一過性脳虚血発作5.1%,5.1%,冠動脈疾患家族歴45.9%,46.5%,MI 24.6%,24.8%,PTCAまたはPCI 28.6%,28.5%,CABG 12.6%,12.4%。標的血管数:1枝88.0%,87.4%,2枝11.1%,11.7%。ステントのタイプ:DES 59.2%,59.0%,非DES 37.6%,37.7%。
治療法 cangrelor群*1,clopidogrel群*2にランダム化。
*1:4433例。30μg/kgをボーラス静注後,4μg/kg/分を静注。静注はPCI施行30分前に開始し,2時間あるいはPCI終了時(いずれか時間が長い方)まで継続静注。静注は担当医師の判断で4時間継続も可とした。
*2:4444例。プラセボ静注時にclopidogrel 600mg投与。手技後の維持投与期間は担当医の裁量としたが,手技翌日までは所定の投与量を超える追加投与は不可とした。
cangrelor群からclopidogrel群への移動を考慮に入れ,試験薬静注中止時にcangrelor群ではclopidogrel,clopidogrel群ではプラセボを経口投与した。
全例にaspirin 75~325mgを施設の基準に従い投与。付加的抗凝固薬(未分画ヘパリン,低分子量ヘパリン,bivalirudin,fondaparinux)およびGP IIb/IIIa受容体阻害薬(GPI)の手技中の投与は担当医の裁量とした。なおPCI施行12時間前以内の線溶薬またはGPI投与,5日前以内の75mg/日を超えるclopidogrel投与は禁止とした。
追跡完了率 生存に関する追跡終了は48日後99.7%,30日後98.6%。
結果

●評価項目
中間解析審査委員会は70%の解析を行った時点でcangrelorの優位性は低いと報告したが,安全性の懸念がなかったため,もう一方の試験(CHAMPION PLATFORM)の中間解析を実施するまで試験を継続。しかし,同試験でもcangrelorの優位性が低かったため,2009年5月13日,8877例(予定の98.6%)を登録した時点で登録を中止した。

48日後の一次エンドポイントはcangrelor群290例(7.5%),clopidogrel群276例(7.1%)と,cangrelorの優位性は認められなかった(OR 1.05,95%CI 0.88-1.24,p=0.59)。
全死亡:8例(0.2%) vs 5例(0.1%),OR 1.59;0.52-4.87(p=0.42)。
MI:278例(7.1%) vs 256例(6.6%),OR 1.09;0.91-1.29(p=0.36)。
虚血による血行再建術:13例(0.3%) vs 23例(0.6%),OR 0.56;0.28-1.11(p=0.10)。
30日後でも同様にcangrelor群の優位性は示されなかった。
二次エンドポイント(死亡,Q波梗塞,虚血による血行再建術)は23例(0.6%)vs 34例(0.9%)と有意差は認められなかった(OR 0.67;0.39-1.14,p=0.14)。

●有害事象
ACUITY出血基準による大出血はcangrelor群158例(3.6%)と,clopidogrel群126例(2.9%)に比し多い傾向が認められた(OR 1.26;0.99-1.60,p=0.06)。
しかし,TIMI出血基準による大出血(0.4% vs 0.3%,p=0.39),重度の出血または生命を脅かす出血(GUSTO出血基準:0.2% vs 0.3%,p=0.82)は有意差が認められなかった。

文献: Harrington RA, et al. Platelet inhibition with cangrelor in patients undergoing PCI. N Engl J Med 2009; 361: 2318-29. pubmed
関連トライアル 3T/2R, ACCOAST, ACUITY 1-year results, ACUITY bivalirudin, ACUITY GP IIb/IIIa inhibitors , ARMYDA-5 PRELOAD, ARMYDA-PRO, CHAMPION PHOENIX, CHAMPION PHOENIX intraprocedural stent thrombosis, CHAMPION PLATFORM, CHAMPION pooled analysis, CLARITY-TIMI 28, clopidogrel前投与と死亡,心血管イベント,大出血, COURAGE, CREDO, CURRENT-OASIS 7, FAST-MI genetic determinants, HORIZONS-AMI , IMPACT-I, ISAR-REACT 3, LANCELOT-ACS, Mega JL et al, PCI-CLARITY, PCI-CURE, PCI施行患者に対するcangrelor, PLATO, PLATO history of stroke, PLATO invasive strategy, PLATO renal function, PLATO total events, PLATO undergoing CABG, PRINCIPLE-TIMI 44, PRISM-PLUS 1998, PURSUIT 1998, RESTORE, Sorensen R et al (2011), SYNERGY, TRA 2P-TIMI 50, TRACER, TRANSFER-AMI, TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 early and late benefits, TRITON-TIMI 38 PCI
関連記事