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Tsivgoulis G et al Pre-tissue plasminogen activator blood pressure levels and risk of symptomatic intracerebral hemorrhage
結論 tPA静注を受ける虚血性脳卒中患者において,治療プロトコール違反となる治療前の高血圧は,症候性脳内出血の独立予測因子であった。本結果は,血圧が185/110mmHgを超える患者にはtPA静注を行わないとする現行のガイドラインを支持するものであった。
コメント 単一施設の10年間のt-PA治療例について,血圧管理のプロトコールバイオレーションと症候性頭蓋内出血の関連を検討。後ろ向き研究でCT早期虚血所見や血圧変動の詳細な分析がないが,t-PA実施基準の根拠を与える研究の一つとして評価できる。(岡田靖

目的 tPA静注を受ける虚血性脳卒中患者において,治療前のコントロール不良の高血圧(>185/110mmHg)は血栓溶解療法の禁忌とされている。本論文では,プロトコール違反である治療前の高血圧が症候性脳内出血の続発リスク,また退院時の機能的転帰に関連するか検討。
デザイン 後ろ向きコホート研究。
セッティング 単施設,ギリシャ。
期間 治療期間は1996年1月~2005年12月。
対象患者 510例。1996年1月~2005年12月,症状発現後3時間以内にtPA 0.9mg/kg静注を受けた虚血性脳卒中入院患者連続例。
【除外基準】治療前の血圧値が得られず;血栓溶解療法を3時間の時間枠外で実施,または静注+動注を併用;現行のAHA/ASAガイドラインにおけるその他のプロトコール違反。
【患者背景】平均年齢は症候性脳内出血発生群71±11歳,非発生群66±15歳。男性55%,56%。高血圧68%,55%。糖尿病19%,13%。心房細動23%,11%。発症前の抗血小板薬の使用36%,29%。脂質低下薬の使用36%,19%(p=0.031)。開始時のNational Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア(IQR)12(10),8(7)(p<0.001)。SBP 169±29mmHg,156±24mmHg(p=0.006),DBP 85±21mmHg,82±16mmHg。tPAボーラス静注前の降圧薬投与6%,9%。症状発現からtPAボーラス静注までの時間中央値(IQR)140(80),125(65)。
治療法 血圧がAHA基準(>185/110mmHg)を超えている患者に対しては,医師の裁量によりlabetalol(10~20mgを1~2分にわたってボーラス静注。望ましい血圧が得られるまで,同用量を10~20分ごとに投与[最大300mg]),またはnicardipine(5mg/時を持続静注。滴定は望ましい効果が得られるまで2.5mg/時ずつ5~15分間隔で行った[最大15mg/時])を投与。
追跡完了率
結果

●評価項目
全例のうち,血圧プロトコール違反は63例(12.4%),症候性脳内出血は31例(6.1%)に発生した。
症候性脳内出血発生例では,非発生例に比し,血圧プロトコール違反が多くみられた(26% vs 12%,p=0.019)。
症候性脳内出血の独立予測因子は以下のものであった;血圧プロトコール違反(OR 2.59,95%CI 1.07-6.25,p=0.034),開始時の脳卒中重症度(NIHSSスコア1点上昇ごとのOR 1.11,95%CI 1.05-1.18,p=0.001),脳卒中発症前の脂質低下薬使用(OR 2.41,95%CI 1.09-5.33,p=0.030)。
血圧プロトコール違反のあった患者は,違反のなかった患者に比し,退院時の機能的独立度が少ない傾向がみられた(25% vs 37%,p=0.074)。院内死亡率は同等であった(8% vs 6%,p=0.510)。
脳内出血が発生しなかった症例において,血圧プロトコール違反例のあった患者の退院時の機能的独立度は,違反のなかった患者に比し少なかったが,有意差は認められなかった(29% vs 38%,p=0.177)。

●有害事象

文献: Tsivgoulis G, et al. Pre-tissue plasminogen activator blood pressure levels and risk of symptomatic intracerebral hemorrhage. Stroke 2009; 40: 3631-4. pubmed
関連トライアル Bravo Y et al, CASES elderly patients, Cronin CA et al, EPITHET predictors of HT, Georgiadis D et al, 2006, GWTG-Stroke Registry risk of sICH, Helsinki Stroke Thrombolysis Registry, J-ACT, Kellert L et al, Madrid Stroke Network, Mikulik R et al 2009, SAINT postthrombolysis ICH, SAMURAI, Saqqur M et al, Sarikaya H et al, Schellinger PD et al, Singer OC et al, SITS-ISTR, SITS-ISTR antiplatelet therapy, SITS-ISTR blood pressure, SITS-ISTR elderly, SITS-MOST multivariable analysis, SUMO, Toni D et al, TPA Bridging Study, Tutuncu S et al, 血栓溶解療法後の頭蓋内出血
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