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NORDISTEMI Norwegian study on District treatment of ST-Elevation Myocardial Infarction
結論 農村地域のST上昇型心筋梗塞(STEMI)治療において,遠方の冠インターベンション(PCI)施行可能施設まで患者を救急搬送しPCIを施行することは,地域医療施設での保存的治療に比し,主要転帰を改善しなかった。しかし,12ヵ月後の死亡,再梗塞,脳卒中発生率は抑制した。
コメント TRANSFER-AMI を参照。(島田和幸

目的 農村地域のSTEMI治療においては,PCIは推奨時間内(発症から90~120分)の実施が困難であり,線溶療法が選択されている。しかし,その後非常に遠方のPCI施行可能施設まで患者を救急搬送しPCIを施行するべきかどうかはまだ検討されていない。本試験では,線溶薬総量投与後,早期PCI施行(PCI施行可能施設へ長距離救急搬送)と,地域医療施設での保存的治療を比較。一次エンドポイント:12ヵ月後の死亡,再梗塞,脳卒中,新規心筋虚血の複合。二次エンドポイント:12ヵ月後の死亡,脳卒中,再梗塞;搬送に関連する合併症;30日後の出血(GUSTO出血基準による);梗塞サイズ。
デザイン ランダム化,評価者盲検,intention-to-treat解析。NCT00161005。
セッティング 多施設(5施設),ノルウェー。
期間 登録期間は2005年2月~2008年4月。
対象患者 266例。年齢18~75歳;MIの症状発現から6時間未満;ECGにて急性STEMIと示唆(複数の隣接する前胸部誘導で≧2mm,または複数の肢部誘導で≧1mmのST上昇,新規の左脚ブロック);最初の連絡からPCIまでの時間が90分を超えると予想される;tenecteplaseによる線溶療法を受けている。
【除外基準】tenecteplaseの標準的な除外基準にあてはまる;心原性ショックまたは不整脈;重度の腎不全(クレアチニン>250mmol/L);余命12ヵ月未満の疾患;精神疾患,精神遅滞,認知症,コンプライアンス維持の難しい状態など。
【患者背景】年齢中央値(IQR)は早期PCI群60(55~67)歳,保存的治療群61(53~68)歳。各群の男性80%,71%。高血圧25%,38%(p=0.03)。糖尿病6%,8%。狭心症の既往13%,13%。MIの既往11%,11%,CABG歴3%,2%,血管形成術歴7%,9%。
治療法 全例にtenecteplase標準用量(体重にあわせて調整),aspirin 300mg経口,enoxaparin(30mg静注後,退院または血行再建術までの最大7日間,12時間おきに1mg/kg皮下注)各投与。また初日にclopidogrel 300mgを投与した。
線溶薬投与時に以下の2群にランダム化を行った。
早期PCI群(134例):線溶療法後ただちにPCI施行可能施設へ搬送し,冠動脈造影および梗塞責任血管の血管形成術を施行。ステントの種類,GP IIb/IIIa受容体阻害薬の使用などは術者の裁量によった。
保存的治療群(132例):地域医療施設にて引き続き治療を行い,胸痛持続,初回線溶薬投与の60分後におけるST上昇の減少率が50%未満,血行動態不安定の場合は緊急冠動脈造影のため照会。早期冠動脈造影のための照会は,安静時虚血の再発(ECG上の変化の有無にかかわらない),または運動負荷ECGにて虚血の兆候(胸痛,ST変化,低血圧,心室頻拍)が認められた場合推奨された。他の症例については,退院から2~4週以内に線溶療法成功後のルーチン評価としての冠動脈造影が奨励された。
β遮断薬,スタチンは禁忌がない場合全例に,またACE阻害薬は適応がある場合に投与した。ステント植込み施行例には9ヵ月間のclopidogrel 75mg/日投与を推奨し,その他の症例には,担当医の裁量により血管形成術施行まで,または9ヵ月間clopidogrel投与が推奨された。
追跡完了率 12ヵ月後の追跡終了は100%。
結果

●評価項目
tenecteplase投与からカテーテル室までの時間中央値は早期PCI群130分(IQR 105~155),保存的治療群5.5日(IQR 0~17.5)(p<0.001),PCI施行は89% vs 71%(p=0.001)であった。
保存的治療群の36例(27%)がrescueインターベンションのため搬送され,32例がrescue PCI施行を受けた。PCI施行可能施設への搬送距離中央値は,早期PCI群158km(IQR 129~200),保存的治療群(rescueインターベンション症例)180km(IQR 132~234)で,搬送中に早期PCI群1例(0.7%)が死亡した。
死亡,再梗塞,脳卒中,新規心筋虚血の複合は,30日後では早期PCI群14例(10.0%)と,保存的治療群28例(21.2%)に比し少なかった(HR 0.49,95%CI 0.27-0.89,p=0.03)。しかし12ヵ月後は28例(20.9%)vs 36例(27.3%)と有意差は認められなかった(HR 0.72,95%CI 0.44-1.18,p=0.19)。
12ヵ月後の死亡,再梗塞,脳卒中は8例(6%)vs 21例(16%)と早期PCI群の方が少なかった(HR 0.36,95%CI 0.16-0.81,p=0.01)。
死亡は3例(2.2%)vs 4例(3.0%),再梗塞は4例(3.0%)vs 12例(9.1%),脳卒中は3例(2.2%)vs 7例(5.3%),虚血再発は20例(15.0%)vs 20例(15.2%)。
3ヵ月後の梗塞サイズ(中央値[IQR])は7%(0~24)vs 6%(0~19)と有意差は認められなかった(p=0.29)。

●有害事象
全出血事象は16例(12%)vs 19例(14%)と有意差は認められなかった(p=0.68)。重篤な出血は2例 vs 3例(すべて脳内出血)。

文献: Bøhmer E, et al. Efficacy and Safety of Immediate Angioplasty Versus Ischemia-Guided Management After Thrombolysis in Acute Myocardial Infarction in Areas With Very Long Transfer Distances Results of the NORDISTEMI (NORwegian study on DIstrict treatment of ST-Elevation Myocardial Infarction). J Am Coll Cardiol 2010; 55: 102-110. pubmed
関連トライアル CARESS-in-AMI , Claeys MJ et al, ExTRACT-TIMI 25 clopidogrel, ExTRACT-TIMI 25 PCI, IMPORTANT, MHI Level 1 MI programme, NRMI-2, 3, 4, 5, PCI-CLARITY, STEMI患者における早期侵襲治療と標準保存治療の比較, SYNERGY, TRANSFER-AMI
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