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de Assis MC et al Improved oral anticoagulation after a dietary vitamin k-guided strategy: a randomized controlled trial
結論 長期経口抗凝固療法を受けている患者において,ビタミンKガイド療法は実現可能かつ安全で,PT-INRが治療域を達成する見込みを増加させる可能性が示唆された。
コメント ワルファリン投与例において食事の影響は大きい。本研究では,PT-INR値によりビタミンK含有の比較的多い食事の量を調整し,治療域を達成させるというユニークな試みがなされた。かかる介入を行うためには,食事内容の詳細なチェックが必要となり,実際の臨床ではこの方法のみで対応することは困難であろう。ただ,PT-INR値が通常1.6を超えているのに,ある時1.6を下回った場合,食事内容を聞いて以前より緑黄色野菜の摂取が多ければワルファリン量は変更せず食事内容を調整するなどのことは臨床場面で行っていることから,それを一歩進めて考えれば,TTRの向上につながる一助となろう。(是恒之宏

目的 食物中のビタミンK摂取が経口抗凝固療法に影響を及ぼすことは知られているが,最近の研究により,この相互作用が抗凝固の安定性を阻害する独立因子である可能性が示唆されている。本論文では,PT-INR値によりビタミンKを多く含む食品の摂取回数を増減させるビタミンKガイド療法と,従来型治療を比較する。一次エンドポイント:90日後の1回の測定においてPT-INRが治療域内であった患者の割合。
デザイン ランダム化,オープン。NCT00355290。
セッティング 単施設,ブラジル。
期間 スクリーン期間は2006年3月~2007年9月。
対象患者 132例。長期(>3ヵ月)経口抗凝固療法を受けており,最新のPT-INR値が治療域外*1,不安定性の明確な原因*2がない患者。
*1:心房細動患者では標的PT-INR を2.5(2.0~3.0)とし,PT-INRが1.5~1.99または3.01~4.0であった患者を対象とした。人工弁患者では標的PT-INR を3.0(2.5~3.5)とし,PT-INRが1.5~2.49または3.51~4.0であった患者を対象とした。
*2:抗凝固薬の偶発的な過度の使用または一時中断,抗凝固の安定性を妨げる他の薬理学的相互作用または病態(進行悪性腫瘍,最近の下痢性疾患,最近の入院)。
【除外基準】過度のPT-INR逸脱(<1.5または>4.0),出血または血栓症と診断。
【患者背景】(各群の治療内容は治療法の項参照)平均年齢はビタミンKガイド群58.4±14歳,従来型治療群56±13歳。男性54.5%,56%。心不全18.2%,21.2%。糖尿病19.7%,12.1%。虚血性心疾患18.2%,12.1%。抗凝固療法の適応:長期心房細動35%,35%,機械弁(僧帽弁)24%,32%,同(大動脈弁)32%,27%,その他9%,6%。抗凝固薬:warfarin 85%,85%,phenprocoumon 15.1%,15.1%。
治療法 ビタミンKガイド群(66例),従来型治療群(66例)にランダム化。
ビタミンKガイド群では,ビタミンKを多く含む食品16種類(ホウレン草,緑茶,カブ,ブロッコリー,芽キャベツ,キャベツ,レタス,植物油,レバー,クレソン,グリーンピース,アスパラガス,カリフラワー,コラードグリーン[ケールの一種],キュウリ,ルッコラ)について通常の摂取状況を調査。これにもとづき,抗凝固不足の場合は1週あたりの摂取回数を通常の半分に,抗凝固過剰の場合は1週あたりの摂取回数を通常の倍にするよう指示された。摂取量に関する指示は与えられず,また抗凝固薬の用量は変更されなかった。15,30,60,90日後にビタミンK摂取量およびプロトロンビン時間を再評価し,摂取回数増減の指示が与えられた。なお,PT-INR値が3回連続で治療域外,PT-INRが1回でも>6.0,出血または血栓症の症状が確認された場合は従来型治療にクロスオーバーすることとした。
従来型治療群では現行のガイドラインおよびアルゴリズムにしたがい抗凝固薬の投与量を調整。ビタミンK摂取量についての調査は行われたが,摂取量を増減させる指示は与えられなかった。
追跡完了率 90日後の追跡データ未入手は3例(前回のデータを用い解析)。
結果

●評価項目
ビタミンKガイド群において,抗凝固不足症例ではビタミンKを多く含む食品の摂取回数の減少がみられた。抗凝固過剰例では摂取回数の増加はみられたものの,変化量は小さかった。従来型治療群では変化は認められなかった。
90日後にPT-INRが治療域内であった患者の割合はビタミンKガイド群74%と,従来型治療群58%に比し多かった(p=0.04)。
15日後のPT-INRは,ビタミンKガイド群,従来型治療群とも,抗凝固不足,過剰のいずれの症例においても改善されたが,抗凝固不足症例におけるPT-INRの増分は従来型治療群の方が大きかった(0.83±0.67 vs 0.54±0.63,p=0.04)。抗凝固過剰症例においては同等であった(-0.79±0.62 vs -0.68±0.82,p=0.63)。
小出血または非経口ビタミンK使用はビタミンKガイド群1例(1.5%。 PT-INR>7のため非経口ビタミンK使用,無症候性)と,従来型治療群7例(11%。喀血2例,血尿1例,歯肉出血1例,皮膚斑状出血1例,ビタミンK静注2例)に比し少ない傾向がみられた(p=0.06)。
ビタミンKガイド群から従来型治療群へのクロスオーバーは11例(16.6%,PT-INR値が3回連続で治療域外)であった。

●有害事象

文献: de Assis MC, et al. Improved oral anticoagulation after a dietary vitamin k-guided strategy: a randomized controlled trial. Circulation 2009; 120: 1115-22, 3 p following 1122. pubmed
関連トライアル Couma-Gen, Crowther MA et al, Rombouts EK et al, Ryan F et al, Torn M et al
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