抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
PLATO Platelet Inhibition and Patient Outcomes
結論 ST上昇型/非ST上昇型急性冠症候群(ACS)患者において,ticagrelorはclopidogrelに比し,血管死,心筋梗塞(MI),脳卒中を抑制した。大出血発生率は同等であったが,CABGに関連しない出血の増加が認められた。
コメント ticagrelorは非チエノピリジン系として初めてのADP受容体P2Y12阻害薬である。投与量としては血栓性イベントの発症リスクをクロピドグレルより低減させうる投与量が選択された。本薬はチクロピジン,クロピドグレル,プラスグレルと異なり,可逆的阻害薬である。投与を中止すると抗血小板効果が速やかに消失する。すなわち,バイパス手術時などに抗血小板効果が消失するので,バイパス症例の出血性合併症が少なくなった。CABGと関連しない出血性合併症については TRITON-TIMI 38により示されたプラスグレルの結果と同様に増加していた。P2Y12阻害効果を増強させれば血栓イベントは減少し,出血イベントが増加するとの一般原則は,本試験でも同様であった。(後藤信哉

目的 ACSの治療としては抗血小板薬併用療法(clopidogrel+aspirin)が現行のガイドラインで推奨されているが,clopidogrelは効果に個人差がみられるなどの問題がある。本試験では,clopidogrelより強力にP2Y12を阻害するticagrelorの血管事象および死亡抑制効果を,clopidogrelと比較。有効性の一次エンドポイント:血管死+MI+脳卒中の複合。安全性の一次エンドポイント:大出血(致死性,脳内,心タンポナーデを伴う心膜内,昇圧薬または手術を要する出血による血液量減少性ショックまたは低血圧,ヘモグロビン値≧5.0g/dL,赤血球4単位以上の輸血を要する)。
デザイン ランダム化,二重盲検,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(862施設),43ヵ国。
期間 登録期間は2006年10月~2008年7月。追跡期間は12ヵ月。
対象患者 18624例。発症24時間以内に入院したST上昇型/非ST型ACS患者。
[非ST上昇型ACS患者]次のうち2つ以上を有する者:心電図上で虚血を示すSTの変化,心筋壊死を示すバイオマーカー陽性,1つ以上のリスク因子(≧60歳;MI既往またはCABG施行;2枝以上で≧50%の狭窄を認める冠動脈疾患;脳梗塞,一過性脳虚血発作,≧50%の頸動脈狭窄の既往または脳血管血行再建術施行;糖尿病;末梢動脈疾患;慢性腎機能障害(クレアチニンクリアランス<60mL/1.73m 2)。
[ST上昇型ACS患者]隣接する複数の誘導で≧0.1mVの持続性ST上昇または新規の左脚ブロック,かつPCI施行予定の者。
【除外基準】24時間以内の線溶療法,経口抗凝固薬投与の必要,徐脈リスク上昇,チトクロムP-450 3Aの強力な阻害薬/誘導薬の併用など。
【患者背景】年齢中央値はticagrelor群62.0歳,clopidogrel群62.0歳。各群の女性28.4%,28.3%。冠動脈疾患リスク因子:高血圧65.8%,65.1%,脂質異常症46.6%,46.7%,糖尿病24.9%,25.1%。病歴:MI 20.4%,20.7%,うっ血性心不全5.5%,5.8%,非出血性脳卒中3.8%,4.0%,末梢動脈疾患6.1%,6.2%。ACSの最終診断:STEMI 37.5%,38.0%,NSTEMI 42.9%,42.5%,不安定狭心症16.6%,16.8%。
治療法 ticagrelor群*1,clopidogrel群*2にランダム化。
*1:9333例。ticagrelor負荷用量180mg投与後,90mg,1日2回投与。PCI施行者は,施行時に90mg追加投与。
*2:9291例。clopidogrel負荷用量投与,および少なくとも5日以内の投与を受けていない場合はclopidogrel負荷用量300mg投与後,75mg/日投与。その他は75mg/日を継続投与。PCI施行者は,担当医の裁量により300mg追加投与。
CABG施行例では試験薬の中断が推奨された(ticagrelor群では24~72時間,clopidogrel群では5日間)。
忍容性が認められる場合は全例にaspirin 75~100mg/日を投与。aspirin未投与例に対する推奨維持用量は325mgで,ステント植込み後6ヵ月間325mg/日投与を許可。
追跡完了率 生命状態追跡不能は5例。
結果

●評価項目
試験薬早期投与中止はticagrelor群23.4%,clopidogrel群21.5%であった。
12ヵ月後の一次エンドポイント(血管死+MI+脳卒中の複合)の発生はticagrelor群864例(9.8%)と,clopidogrel群1014例(11.7%)に比し抑制された(HR 0.84;0.77-0.92,p<0.001)。MI,血管死はticagrelor群で抑制されたが,脳卒中は有意差が認められなかった;MI 5.8% vs 6.9%(p=0.005),血管死4.0% vs 5.1%(p=0.001),脳卒中1.5% vs 1.3%(p=0.22)。なお,脳卒中の病型別でも有意差は認められなかった;脳梗塞1.1% vs 1.1%(p=0.74),出血性脳卒中0.2% vs 0.1%(p=0.10)。
全死亡はticagrelor群で抑制された:4.5% vs 5.9%(p<0.001)。
ステント血栓症(definite)についてもticagrelor群で抑制された;1.3% vs 1.9%(p=0.009)。

●有害事象
大出血はticagrelor群961例(11.6%),clopidogrel群929例(11.2%)(p=0.43),TIMI大出血は7.9% vs 7.7%(p=0.57)と,いずれも有意差は認められなかった。しかし,CABGに関連しない大出血は4.5% vs 3.8%とticagrelor群の方が多かった(p=0.03)。致死性脳内出血はticagrelor群の方が多く(0.1% vs 0.01%,p=0.02),致死性出血はclopidogrelの方が多かったが(0.1% vs 0.3%,p=0.03),いずれも少数であった。
有害事象による試験薬投与中止は7.4% vs 6.0%とticagrelor群の方が多かった(p<0.001)。

文献: Wallentin L, et al.; PLATO Investigators. Ticagrelor versus clopidogrel in patients with acute coronary syndromes. N Engl J Med 2009; 361: 1045-57. pubmed
関連トライアル ACCOAST, ACTIVE A, APPRAISE, APPRAISE-2, ATLAS ACS 2-TIMI 51, ATLAS ACS 2-TIMI 51 STEMI patients, ATLAS ACS-TIMI 46 , Berger JS et al, CABG施行までのclopidogrel継続投与の安全性, CASPAR , CHAMPION PCI, CHAMPION PHOENIX, CHAMPION PLATFORM, CHARISMA, CHARISMA bleeding complications, CLARITY-TIMI 28, COGENT, COMMIT, COMPASS, CREDO, CURE, CURRENT-OASIS 7, ExTRACT-TIMI 25 clopidogrel, FAST-MI CYP2C19 and PPI, FAST-MI genetic determinants, HORIZONS-AMI , ISAR-REACT 3, MATCH, Mega JL et al, ONSET/OFFSET, ONSET/OFFSET dyspnea, PCI-CLARITY, PLATO bleeding complications, PLATO cECG substudy, PLATO diabetes, PLATO history of stroke, PLATO invasive strategy, PLATO non-invasive management, PLATO renal function, PLATO STE-ACS, PLATO stent thrombosis, PLATO total events, PLATO undergoing CABG, PRoFESS, REAL-LATE / ZEST-LATE, SEPIA-ACS1 TIMI 42, Sorensen R et al (2011), SPS3, TRACER, TRILOGY ACS, TRILOGY ACS secondary analysis , TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 diabetes, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, TRITON-TIMI 38 early and late benefits, TRITON-TIMI 38 PCI
関連記事