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TRANSFER-AMI Trial of Routine Angioplasty and Stenting after Fibrinolysis to Enhance Reperfusion in Acute Myocardial Infarction
結論 症状発現後,PCI施行不能施設にて線溶療法を受けた高リスクのST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,冠動脈インターベンション(PCI)施行可能な施設へ搬送し,線溶療法後6時間以内にPCIを施行することは,標準治療に比し,虚血性合併症を抑制した。
コメント 急性心筋梗塞の再灌流療法として,direct PCIがthrombolysisに優ることはすでに確立されている。PCIが実施できないときにthrombolysisを施行した場合,ルーチンにPCI実施施設に搬送してPCIを追加すべきか,あるいは臨床的に必要と認めた場合のみに侵襲的治療を施すかを比較した試験である。一方で,thrombolysis直後にPCIを施行する治療法(facilitated PCI)はdirect PCIに対して出血性副作用頻度が高く,予後改善にとっても優位性はない。同様の臨床試験( NORDISTEMI )の結果は,一次エンドポイントにおいて統計的には有意でなかったが,early PCIが優位の傾向であった。以上を総合すると,PCIができるならdirect PCIを優先し,PCIが実施できないときはthrombolysisをまず施行し,2~3時間以内に完全血行再建を目指して,PCI施設に搬送する治療方針が妥当である可能性がある。(島田和幸

目的 症状発現後,PCI施行不能施設にて線溶療法を受けたSTEMI患者において,早期ルーチンPCI施行(ただちにPCI施行可能な施設へ搬送し,線溶療法から6時間以内にPCIを施行)の有効性を,標準治療(必要な場合のみrescue PCIのため他施設へ搬送)と比較。一次エンドポイント:30日後の死亡,再梗塞,虚血再発,うっ血性心不全(CHF)の新規発症または悪化,心原性ショックの複合。二次エンドポイント:6ヵ月後の死亡,再梗塞,出血性合併症(TIMI出血基準GUSTO出血基準)。
デザイン ランダム化,非盲検。intention-to-treat解析。NCT00164190。
セッティング 多施設(52施設),カナダ。
期間 ランダム化期間は2004年7月10日~2007年12月27日(運営委員会は,登録の遅れおよび追跡不能率が予期したより低かったことから,登録を2007年12月末で中止することを決定)。追跡期間は30日。
対象患者 1059例。発症から12時間以内にPCI施行不能施設でtenecteplase投与を受けたSTEMI患者のうち,複数の前壁誘導にて≧2mmのST上昇,あるいは複数の下壁誘導にて≧1mmのST上昇で,次のうちの1項目以上該当:SBP<100mmHg;心拍数>100拍/分;Killip分類II~III;前壁誘導にて≧2mmのST低下;V 4R誘導にて≧1mmのST上昇。
【除外基準】ランダム化前の心原性ショック;前月にPCI施行;CABG施行歴;door-to-balloon(病院到着からPCIまで)<60分でprimay PCI施行可能など。
【患者背景】年齢中央値(IQR)は早期PCI群57(51~66)歳,標準治療群56(50~66)歳。各群の女性20.7%,20.1%。既往:CHF 0.6%,2.1%(p=0.03),MI 11.0%,9.8%,PCI施行6.3%,4.2%,脳卒中/一過性脳虚血発作3.0%,1.0%(p=0.02)。
治療法 対象者を照会施設,年齢(75歳超 vs 75歳以下)で層別化後,以下の2群にランダム化。
早期PCI群(537例):PCI施行可能施設へ至急搬送し,線溶療法から6時間以内に冠動脈造影および梗塞責任血管に対するPCIを施行。
標準治療(522例):12誘導ECGをランダム化の60~90分後に実施し,持続的ST上昇例,胸痛症例,血行動態不安定例はrescue PCIが可能な施設へ搬送。その他の症例は入院した施設に最低24時間入院。

PCI施行時,可能な限りステント植込みを施行。Multi-Link Vision,Multi-Link Mini Visionステント(BMS)の使用を奨励した。GP IIb/IIIa受容体阻害薬のPCI中および後の使用(abciximabは12時間,eptifibatideは18時間)はインターベンション心臓医の裁量とした。
救急治療室で全例にtenecteplase,aspirin,未分画heparin/enoxaparinを投与。2005年4月にプロトコールを変更し,線溶薬投与時にclopidogrelを併用投与(75歳以下は300mg,75歳超は75mgで投与開始)を強く推奨。75歳超に対してはenoxaparinは投与しなかった。
追跡完了率 30日間の追跡終了は早期PCI群99.9%,標準治療群100%。6ヵ月後の追跡終了は98.1%。
結果

●評価項目
心臓カテーテルは早期PCI群98.5%,標準治療群88.7%に行われた(p<0.001)。ランダム化からシース挿入までの時間(中央値)は2.8時間 vs 32.5時間(p<0.001)。標準治療群において,線溶療法後12時間以内の緊急カテーテルは34.9%に行われた。
PCIは早期PCI群84.9%,標準治療群67.4%に行われた(p<0.001),ランダム化からバルーンまでの時間(中央値)は3.2時間 vs 21.9時間(p<0.001)。
30日後の一次エンドポイントは,早期PCI群59例(11.0%)の方が標準治療群90例(17.2%)に比し抑制された(RR 0.64;95%CI 0.47-0.87,p=0.004)。
内訳は以下の通り。
死亡:24例(4.5%) vs 18例(3.4%),RR 1.30;0.71-2.36(p=0.39)。
再梗塞:18例(3.4%) vs 30例(5.7%),RR 0.57;0.33-1.04(p=0.06)。
虚血再発:1例(0.2%)vs 11例(2.1%),RR 0.09;0.01-0.68(p=0.003)。
CHFの新規発症あるいは悪化:16例(3.0%) vs 29例(5.6%),RR 0.54;0.30-0.98(p=0.04)。
心原性ショック:24例(4.5%) vs 16例(3.1%),RR 1.46;0.79-2.72(p=0.23)。
60日後の結果は以下の通り。
死亡:5.7% vs 4.5%,RR 1.27;0.77-2.23(p=0.39)。
再梗塞:4.0% vs 6.5%,RR 0.60;0.34-1.05(p=0.07)。
死亡,再梗塞:8.9% vs 10.6%,RR 0.83;0.55-1.25(p=0.36)。

●有害事象
GUSTO出血基準による小出血のみ早期PCI群の方が多かったが(70例[13.0%] vs 47例[9.0%],RR 1.45;1.02-2.05,p=0.04),他は同等であった。
全出血:110例(20.5%) vs 84例(16.1%),RR 1.27;0.98-1.65(p=0.06)。
頭蓋内出血:3例(0.6%) vs 6例(1.1%),RR 0.49;1.22-1.93(p=0.34)。
TIMI出血基準による大出血:40例(7.4%) vs 47例(9.0%),RR 0.83;0.55-1.24(p=0.36),CABGに関連しない大出血:18例(3.4%)vs 25例(4.8%),RR 0.70;0.39-1.27(p=0.24)。
GUSTO出血基準による重度の出血:6例(1.1%) vs 8例(1.5%),RR 0.73;0.25-2.09(p=0.55),CABGに関連しない重度の出血:5例(0.9%) vs 7例(1.3%),RR 0.69;0.22-2.17(p=0.53)。

文献: Cantor WJ, et al.; TRANSFER-AMI Trial Investigators. Routine early angioplasty after fibrinolysis for acute myocardial infarction. N Engl J Med 2009; 360: 2705-18. pubmed
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