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3T/2R Tailoring Treatment with Tirofiban in Patients Showing Resistance to Aspirin and/or Resistance to Clopidogrel
結論 標準的な経口抗血小板薬に対し反応性が乏しい(poor responder)低リスク患者において,tirofibanは待機的冠動脈インターベンション(PCI)後の心筋梗塞(MI)発症を抑制した。
コメント アスピリン,クロピドグレルなどの標準的な抗血小板薬に十分に反応しない症例を血液検査により見出し,そのような症例に対して選択的にGP IIb/IIIa受容体阻害薬による介入を加えることにより,効率的な追加介入をしようとのコンセプトを示した論文である。症例数は比較的少ないが,コンセプトは一見論理的であり,本論文により示された結果はコンセプトを支持する結果であった。最終的には個別患者に対してVerifyNowの結果に基づいた追加介入の適応決定に意味があるか否かが議論のポイントとなる。本論文の提起した本質的な問題は,VerifyNowが抗血小板薬の薬効の個別的評価に役立つか否かという点につきる。VerifyNowは新規のテクノロジーを用いた血小板機能評価法であるが,本質的にはアゴニスト添加時の血小板の活性化に伴うGP IIb/IIIaの高次構造変化,フィブリノーゲンの結合,凝集を評価しているにすぎない。経口GP IIb/IIIa受容体阻害薬が血小板凝集を阻害しながらも血栓イベントを効率的に予防しなかったという経験は,VerifyNowのような凝集計の計測結果に基づいた介入法の個別化の危険性を示唆している。患者集団としてみればVerifyNowの計測結果に基づいた追加介入の決定に意味がありそうな結果になるが,真の意味での個別的な抗血小板介入の適応決定のためには血栓イベントの発症と直接メカニズム的に相関する薬効評価法を用いるべきであると筆者は考えているが,間違っているかもしれない。(後藤信哉

目的 aspirin,clopidogrel投与後の血小板凝集阻害は患者により異なり,poor responderでは血栓事象リスクが,特にPCI施行後は1.8~10倍上昇するとされている。本試験は,aspirinかつ/またはclopidogrelに対するpoor responder において,tirofibanが標準的治療に比し,待機的PCI後のMI発症を抑制するか検討。一次エンドポイント:周術期MI(PCI終了後48時間以内のトロポニンI/T比の正常値上限の3倍以上の上昇)。
デザイン ランダム化,二重盲検,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(10施設),4ヵ国(イタリア,ベルギー,フランス,スペイン)。
期間 スクリーン期間は2006年2月~2008年6月。追跡期間は30日。
対象患者 263例。年齢>18歳;冠動脈造影かつ/またはPCIを予定;安定またはトロポニン陰性非ST上昇型急性冠症候群患者全例をスクリーンし, aspirinかつ/またはclopidogrelのpoor responderを本試験の対象とした。
【除外基準】心筋障害(特定の心筋障害マーカー上昇,およびST上昇または新規/新規と推定される左脚ブロックにより定義される進行中のMI)。
【患者背景】平均年齢はtirofiban群68.3±10歳,プラセボ群68±9.4歳。各群の男性74.2%,72.5%。糖尿病24.4%,28.0%。高血圧66.7%,76.3%,高コレステロール血症51.5%,55.7%。心筋梗塞の既往47.7%,38.2%。PCI施行歴38.9%,38.9%。CABG施行歴6.8%,6.1%。臨床所見:無症候性虚血23.4%,27.5%,安定狭心症41.7%,42%,不安定狭心症34.8%,30.5%。
治療法 安定/不安定冠動脈疾患およびpoor responder(aspirin/clopidogrel/両方)の種類により層別化後,tirofiban群,プラセボ群にランダム化。
aspirinに対する反応性は,clopidogrel/ticlopidine投与を7日以内に受けておらず,aspirin最低80mg/日を5日以上,または500mg静注(15分以上)投与を行った症例を評価対象とした。測定はVerifyNow Aspirinを用い,aspirin reaction units>550をpoor responderとした。
clopidogrelに対する反応性は,負荷用量300~600mg投与を2回以上または6時間前に受けたか,あるいは連続7日間以上維持用量75mg投与を受けた症例についてスクリーンを行った。測定はP2Y12 assayを用い,血小板阻害<40%をpoor responderとした。
tirofibanは3分につき25μg/kgをボーラス注入し,その後14~24時間0.15μg/kg/分注入。周術期の未分画heparinまたはbivalirudinは,tirofiban群/プラセボ群の別とは関係なく全例に投与した。なお,施設ごとにどちらか1つに決めておき,両群とももっぱらその薬剤を使用するよう規定された。投与量は,heparin:tirofiban群は50~70U/kg(約7000IU),プラセボ群は100U/kg(最大1万IU)の初回ボーラス,bivalirudin:0.75mg/kgボーラス静注後1.75mg/kg/時静注とした。動脈切開閉鎖デバイスによる動脈シース抜去は,インターベンション直後またはACTが<180秒となった後外部圧迫とともに許可された。
追跡完了率 30日間の追跡終了は100%。
結果

●評価項目
期間中スクリーンの対象となったのは1277例(aspirin 916例[うち283例はclopidogrelについてもスクリーン],clopidogrel 644例)で,poor responderはaspirin 136例(14.8%),clopidogrel 174例(27%),両方26例(9.2%)であった。このうちPCI非施行例など計73例を除外し,263例(tirofiban群132例:aspirin 64例+clopidogrel 68例,プラセボ群131例:aspirin 52例+clopidogrel 79例)を試験に登録した。

周術期MIはtirofiban群27例(20.4%)と,プラセボ群46例(35.1%)に比し抑制された(RR 0.58;0.39-0.88,p=0.009)。tirofibanの有効性はaspirin/clopidogrelとも一貫していた。
30日以内の主要心血管事象も,tirofiban群3.8%と,プラセボ群10.7%に比し抑制された(p=0.031)。

●有害事象
TIMI大出血は発生しなかった。TIMI小出血はtirofiban群2例(1.5%),プラセボ群1例(0.8%)と有意差は認められなかった(p=0.99)。

文献: Valgimigli M, et al.; Tailoring Treatment With Tirofiban in Patients Showing Resistance to Aspirin and/or Resistance to Clopidogrel (3T/2R) Investigators. Intensifying platelet inhibition with tirofiban in poor responders to aspirin, clopidogrel, or both agents undergoing elective coronary intervention: results from the double-blind, prospective, randomized Tailoring Treatment with Tirofiban in Patients Showing Resistance to Aspirin and/or Resistance to Clopidogrel study. Circulation 2009; 119: 3215-22. pubmed
関連トライアル ACTIVE A, CHAMPION PCI, CHAMPION PLATFORM, Chan FK et al, CHARISMA, CHARISMA bleeding complications, CLARITY-TIMI 28, CLASSICS, COGENT, CREDO, CURE, CURRENT-OASIS 7, DES LATE, FAST-MI genetic determinants, ISAR, ISAR-REACT 3, KAMIR, Kereiakes DJ et al 1996, Migliorini A et al, Mishkel GJ et al, Müller C et al, OCLA, On-TIME 2, On-TIME 2 pooled analysis, ONSET/OFFSET, ONSET/OFFSET dyspnea, PCI-CLARITY, PCI-CURE, PLATO invasive strategy, PLATO STE-ACS, PRINCIPLE-TIMI 44, PRISM, RESTORE, Sibbing D et al (2009, JACC), Sibbing D et al(2010), TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 PCI, WHS
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