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メタ解析
STEMIにおけるPPCIと線溶療法の比較
Comparison of primary percutaneous coronary intervention and fibrinolytic therapy in ST-segment-elevation myocardial infarction
結論 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,primary経皮的冠動脈インターベンション(PPCI)は線溶療法に比し,ランダム化比較試験(RCT),観察研究とも短期の死亡,再梗塞,および脳卒中の発生を抑制した。しかし長期については,RCTでは死亡および再梗塞を抑制したが,観察研究では明確なベネフィットは認められなかった。
コメント 無作為化比較試験(RCT)に比して,観察研究ではインターベンション治療の長期予後の効果は明らかでなかった。すなわち,観察研究はオープンで行われるため,インターベンション治療の線溶療法に優る短期的効果が長期の1年目以降は薄められるように,非侵襲および侵襲治療が個別化,至適化されることによるのだろう。本論文で目立つのは,メタアナリシスの中の個々の試験結果のばらつきは,RCTは見事に均一なのに比し,観察研究のそれは大きくばらついていることである。RCTは限定した均質化した集団の成績で,客観的価値(仮説の証明)は高い。一方,real worldでは,治療法が何らかの修飾を受けながら実践されている。観察研究でみられるばらつき自体から,新たな仮説が生まれる可能性があるのだろう。(島田和幸

目的 これまでに発表されたSTEMI患者においてPPCIと線溶療法を比較したメタ解析は,RCTのみを解析対象としている。しかし,RCTの結果をそのまま実臨床に適用することは難しい。本論文はRCTに加え観察研究も対象に含めることで,より実臨床に即した解析を行う。
方法 BIOSIS,Cinahl,Embase,PubMed,Web of Science,Cochrane Library,health technology assessment agenciesにて,2008年5月1日までに出版された論文について,検索語;angioplasty,fibrinolysis,thrombolysis,fibrinolytic therapy,acute myocardial infarction,percutaneous coronary intervention,reperfusion therapy,coronary stent,treatment,managementを用い,STEMI患者においてPPCIと線溶療法の比較を行ったRCTおよび観察研究を検索。言語の制限は設けなかった。
対象 RCT 23試験(8140例),観察研究32試験(185900例)が該当。
線溶療法はstreptokinase,urokinaseなどの線溶薬,およびtPA,tenecteplase,reteplaseなどのフィブリン特異的製剤を総量使用したものとした。
除外基準:facilitated PCI,実験的な線溶製剤(上記以外),線溶薬の冠動脈内投与を行った試験;線溶療法またはPPCIに禁忌の患者を主に登録;学会発表またはアブストラクト/学会議事録としてのみ発表された試験。PPCI,facilitated PCI,線溶療法を比較した試験では,本解析ではfacilitated PCI施行患者は除外した。
患者背景:平均年齢はRCTでは57~80歳,観察研究では57~91歳。線溶薬の入院前投与はRCT 2試験,観察研究7試験。フィブリン特異的製剤を主に使用はRCT 16試験,観察研究11試験。
主な結果 ・短期(6週以内)の死亡
PPCIは線溶療法に比し,RCT(23試験,8140例),観察研究(29試験,180877例)とも死亡を抑制した;RCT:OR 0.66;0.51-0.82,観察研究:OR 0.77;0.62-0.95。
・長期(1年後以降)の死亡
 PPCIは線溶療法に比し,RCT(11試験,4320例)では死亡を抑制したが,観察研究(12試験,54571例)では明確なベネフィットは認められなかった;RCT:OR 0.76;0.58-0.95,観察研究:OR 0.88;0.68-1.18。
・短期(6週以内)の再梗塞
 PPCIは線溶療法に比し,RCT(22試験,7937例),観察研究(15試験,45087例)とも再梗塞を抑制した;RCT:OR 0.35;0.24-0.51,観察研究:OR 0.47;0.32-0.67。
・長期(1年後以降)の再梗塞
PPCIは線溶療法に比し,RCT(9試験,4121例)では再梗塞を抑制したが,観察研究(4試験,32181例)では明確なベネフィットは認められなかった;RCT:OR 0.49;0.32-0.66,観察研究:OR 0.58;0.29-1.21。
・脳卒中(頭蓋内出血を含む)
 PPCIは線溶療法に比し,RCT(21試験,7932例),観察研究(15試験,35158例)とも脳卒中を抑制した;RCT:OR 0.37;0.21-0.60,観察研究:OR 0.39;0.29-0.61。
・大出血(重篤/生命にかかわる/輸血を要する出血。頭蓋内出血は含まず)
 PPCIは線溶療法に比し,RCT(15試験,4624例),観察研究(10試験,19459例)とも大出血の明確な増加は認められなかった;RCT:OR 1.40;0.88-2.00,観察研究:OR 1.30;0.37-4.42。
文献: Huynh T, et al. Comparison of primary percutaneous coronary intervention and fibrinolytic therapy in ST-segment-elevation myocardial infarction: bayesian hierarchical meta-analyses of randomized controlled trials and observational studies. Circulation 2009; 119: 3101-9. pubmed
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