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BAT retrospective study
結論 日本人の脳内出血患者において,抗血小板薬かつ/またはwarfarinの前投与は,小脳出血,血腫拡大,早期死亡の予測因子であった。
コメント わが国における抗血栓療法と脳出血に関する大規模な多施設後ろ向き研究である。著者がこれまで報告してきた脳出血の特徴を,多数例解析でより明瞭な結果として報告。抗血栓薬の発症前服用で小脳出血,血腫早期拡大,3週以内の早期死亡が有意に増加すること,また抗血小板薬+ワルファリン服用でその傾向が著しく増大することを示している。わが国特有のエビデンスとして,高齢者の非弁膜症性心房細動に対する抗凝固療法至適INR値は低く設定されている(INR 1.6~2.6)が,本報告ではINR 2.5以上で上記の出血の特徴がより顕著になることを示した点も注目される。多剤抗血小板薬の影響については少数例で検討できておらず,今後の大規模な前向き観察研究に期待したい。(岡田靖

目的 日本人の脳内出血患者において,発症前の抗血小板薬使用が血腫の特徴および早期転帰に影響を与えるか検討。
デザイン 本論文は BAT試験と同じ研究グループによる後ろ向き解析。
セッティング 多施設(7施設),日本。
期間 実施期間は1999年1月~2003年12月。
対象患者 1006例。発症後24時間以内に入院した非外傷性脳内出血患者連続例。
【除外基準】脳腫瘍/動脈瘤破裂/血管奇形による脳内出血,脳梗塞後の出血性変化,主に脳室への出血,くも膜下出血,硬膜下血腫,硬膜外血腫。
【患者背景】平均年齢は対照群65±13歳,抗血小板薬群71±10歳,warfarin群71±11歳,抗血小板薬+warfarin併用群70±9歳(p<0.001)。男性57%,69%,69%,76%(p=0.003)。併存疾患;脳梗塞6%,47%,58%,57%(p<0.001),出血性脳卒中8%,8%,7%,14%,mRS≧2(脳内出血前)8%,16%,22%,29%(p<0.001),心疾患9%,34%,81%,57%(p<0.001),肝硬変9%,5%,3%,5%。
治療法 抗血栓療法レジメンにもとづき,抗血小板薬群*1,warfarin群*2,抗血小板薬+warfarin併用群*3,対照群*4に分割。
*1:180例(aspirin 108例,ticlopidine 41例,cilostazol 6例,その他6例,抗血小板薬2剤併用19例)。
*2:67例。INR中央値(IQR)は2.10(1.65-2.50)。
*3:21例(aspirin 9例,ticlopidine 10例,sarpogrelate 1例,抗血小板薬2剤併用1例)。INR中央値(IQR)は2.22(1.99-2.91)。
*4:738例。抗血栓薬非投与。
追跡完了率
結果

●評価項目
抗血栓薬の使用は小脳出血,最初の24時間以内における>33%の血腫拡大,3週間後の死亡の独立予測因子であった。
小脳出血:抗血小板薬群OR 2.31,95%CI 1.23-4.32,warfarin群OR 2.90;1.26-6.63,抗血小板薬+warfarin併用群OR 3.43;1.02-11.59。
最初の24時間以内における>33%の血腫拡大:抗血小板薬群OR 1.92;1.10-3.34,warfarin群OR 4.80;2.12-10.87,抗血小板薬+warfarin併用群OR 4.94;1.31-18.61。
3週間後の死亡:抗血小板薬群OR 2.70;1.56-4.68,warfarin群OR 2.50;1.05-5.96,warfarin+抗血小板薬併用群OR 9.41;2.78-31.88。
抗血小板薬群におけるサブグループ解析の結果は以下の通り。小脳出血:aspirin単独群OR 2.31;1.12-4.77,aspirin以外の抗血小板薬単独群OR 3.00;1.18-7.60,抗血小板薬2剤併用群OR 3.82;0.92-15.94。
最初の24時間以内における>33%の血腫拡大:aspirin単独群OR 1.99;1.05-3.79,aspirin以外の抗血小板薬単独群OR 2.44;0.89-6.73,抗血小板薬2剤併用群は症例数が少ないため解析せず。
3週間後の死亡:aspirin単独群OR 3.30;1.70-6.41,aspirin以外の抗血小板薬単独群OR 2.31;0.91-5.87,抗血小板薬2剤併用群OR 2.43;0.67-8.74。
warfarin群におけるINR値別のサブグループ解析の結果は以下の通り。小脳出血:INR<2.0 OR 1.22;0.32-4.62,INR 2.0-2.5 OR 0.60;0.07-5.23,INR≧2.5 OR 6.42;2.03-20.30。
最初の24時間以内における>33%の血腫拡大:INR<2.0 OR 2.65;0.80-8.79,INR 2.0-2.5 OR 5.79;1.49-22.58,INR≧2.5 OR 12.86;2.94-56.29。
3週間後の死亡:INR<2.0 OR 1.75;0.46-6.66,INR 2.0-2.5 OR 0.38;0.04-3.82,INR≧2.5 OR 10.92;2.88-41.43。

●有害事象

文献: Toyoda K, et al.; Bleeding with Antithrombotic Therapy Study Group. Antithrombotic therapy influences location, enlargement, and mortality from intracerebral hemorrhage. The Bleeding with Antithrombotic Therapy (BAT) Retrospective Study. Cerebrovasc Dis 2009; 27: 151-9. pubmed
関連トライアル Abraham NS et al, BAT, Bravo Y et al, CHANT antiplatelet use, Crowther MA et al, HAT 1, Kellert L et al, MUCH-Italy, SAINT postthrombolysis ICH, SITS-ISTR blood pressure, WATCH, 抗血栓薬使用,脳内微小出血および脳内出血
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