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FCSA Italian Federation of Centers for the Diagnosis of Thrombosis and Management of Antithrombotic Therapies
結論 手技前に経口抗凝固療法(OAT)の一時中断を必要とする長期OAT患者の多数において,個々の血栓塞栓症リスクにあわせた低分子量heparin(LMWH)による周術期橋渡し療法は,実行可能で有効かつ安全であったが,機械弁置換患者における安全性は,完全には確立されていない。

目的 手技前にOATの一時中断を必要とする長期OAT患者において,個々の血栓塞栓症リスクに応じたLMWHによる標準的周術期橋渡し療法の有効性および安全性を検討。有効性の一次エンドポイント:OAT中断から手技施行30日後までの血栓塞栓症。安全性の一次エンドポイント:橋渡し療法および追跡期間中の大出血。
デザイン 前向きコホート研究,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(22施設),イタリア。
期間 実施期間は2000年7月~2007年7月。追跡期間は30日。
対象患者 1262例。抗凝固センターに紹介された外来患者で,外科的/侵襲的手技前にOATの一時中断を必要とする者。手技を複数回施行する患者については,初回のみ解析を考慮した。
【除外基準】年齢<18歳,体重<40kg,腎不全(血清クレアチニン>2.0mg/dL),ヘパリン誘発性血小板減少症の既往,緊急手技または予定通りに行われなかった手技,抗凝固薬に加え2種類の抗血小板薬併用を必要とするステント植込みなど。
【患者背景】平均年齢71.0±9.6歳。男性62.5%。平均体重74.7±13.4kg。warfarin投与94.5%。橋渡し療法;nadroparin 68.1%,enoxaparin 31.9%。OATの適応;心房細動51.7%,静脈血栓塞栓症16.6%,機械弁15.1%,心臓弁膜症および生体弁5.5%,その他11.0%。
治療法 [手技前]
手技施行5日前にOATを中断。LMWHによる橋渡し療法は,acenocoumarol使用者は4日前,warfarin使用者は3日前に開始し,最終投与は手技の最低12時間前とした。
[手技後]
LMWHは,止血の状態により手技施行の翌日(手技後12時間以上経過後)または2日後,手技前と同用量にて再開し,最低6日間またはINRが治療域に戻るまで継続した。

INRが手技施行5日前に治療域を超えている,あるいは手技前日に≧1.8である場合は経口ビタミンK 1mgを投与した。5日前に治療域を下回っている場合は,同日にLMWHによる橋渡し療法を開始した。手技当日にINR>1.5である場合は,手技の延期が考慮された。
OATは経口摂取が可能なら手技施行の翌日に再開し,2日間は手技前の維持用量に加え50%の追加用量を投与した。3~6日後までは維持用量を投与し,6日後以降は手技前の維持用量にもとづき,INRにより適切に調整された用量にて投与した。
患者は血栓塞栓症リスクにより高リスク(295例。機械的僧帽弁,機械的単葉型大動脈弁または心房細動/心原性塞栓の既往を伴う二葉型大動脈弁,動脈血栓塞栓症/僧帽弁疾患の既往を伴う心房細動,心原性/原因不明の全身性塞栓症の既往,3ヵ月以内の静脈血栓塞栓症),低~中等度リスク(967例。上記以外),また手技により出血高リスク(369例。45分を超えると予測される手術,および整形外科/心胸部/血管/一般外科/泌尿器神経外科手術),低リスク(893例。上記以外)に層別化。血栓塞栓症リスクにより,LMWHは高リスク患者には70 anti-factor Xa U/kgを1日2回,低~中等度リスク患者には予防用量を1日1回皮下注。用量選択にあたって出血リスクは考慮しなかった。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
血栓塞栓イベントは5例(0.4%;95%CI 0.1-0.9)に発生,すべて血栓塞栓症高リスク群であった。内訳は肺塞栓症(PE)3例(うち1例は致死性),全身性塞栓症1例,一過性脳虚血発作(TIA)1例であった。このうち3例(PE 2例,TIA 1例)はプロトコール通りのLMWH投与が行われておらず,残りの2例では橋渡し療法が行われていなかった。

●有害事象
大出血は15件(1.2%;95%CI 0.7-2.0)発生した。すべて手技後の発生で,うち11件は手術部位の出血であった。失血死はなかった。全例ともLMWHは投与されていなかった。血栓塞栓症リスク別では,高リスク群8例(2.7%)と,低~中等度リスク7例(0.7%)に比し多かった(p=0.011)。手技による出血リスク別では,高リスク群7例(1.9%),低リスク群8例(0.9%)と有意差は認められなかった(p=0.16)。
小出血は53件(4.2%;95%CI 3.2-5.5)に発生した。

文献: Pengo V, et al.; for the Italian Federation of Centers for the Diagnosis of Thrombosis and Management of Antithrombotic Therapies (FCSA). Standardized Low-Molecular-Weight Heparin Bridging Regimen in Outpatients on Oral Anticoagulants Undergoing Invasive Procedure or Surgery: An Inception Cohort Management Study. Circulation 2009; 119: 2920-7. pubmed
関連トライアル ACE , BRUISE CONTROL, Dresden NOAC registry, Garcia DA et al, Jaffer AK et al, Meurin P et al, PROSPECT , Skeith L et al, Tafur AJ et al, 長期VKA療法患者における周術期橋渡し療法
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