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メタ解析
aspirinの一次および二次予防効果(ATT)
Aspirin in the primary and secondary prevention of vascular disease: collaborative meta-analysis of individual participant data from randomised trials
結論 aspirinの真のベネフィットは,閉塞性イベントの抑制と大出血リスクの上昇を勘案しなければならない。その点は本解析では明らかでなく,現在さらなる試験が進行中である。
コメント 今回のATT解析で用いられた6つの一次予防試験は,以前の同じ試験をメタ解析した結果(JAMA;2006:295:306-313)と異なっている。すなわち,今回の成績とは違って,アスピリンの一次予防は,男性では心筋梗塞減少に,女性では脳卒中減少に有効であるという成績であった。今回のメタ解析は個々の原データにまで遡り,その背景因子を考慮に入れた上で多重比較をすると男女差はなくなるという結果であり,あえて男女を分けて解析することはしなかった。果たして,このような統計解析が正しいかどうかは断定できない。
いずれにしろ,アスピリンの一次予防のバランスシートは,血管事故を年間0.57%から0.51%に減少させるかわりに,大出血が0.07%から0.10%に増加する。1万人治療して6人発症を防ぐが3人大出血を増やすという“割に合わない”結果である。また,血管事故のリスクは大出血のリスクでもあるという成績も今回の新しい知見である。
アスピリンの一次予防の対象者は,より高リスク,たとえば高血圧のリスク分類で高リスクに相当する少なくとも年間2%くらいに達しないと勘定が合わないのかも知れない。(島田和幸

目的 これまで発表されたATTのメタ解析(BMJ 1994;308:81-106,BMJ 2002;324:71-86)では,閉塞性疾患患者においてaspirinの25%の二次予防効果が示されたが,一次予防におけるベネフィット/リスクのバランスは不明確であった。今回は個人データにもとづき,aspirinの一次予防,二次予防効果を検討する。
方法 一次予防,二次予防試験とも,試験参加者をaspirin群,非aspirin群(両群とも抗血小板薬の併用なし)に無作為割付を行った試験を対象とした。
[一次予防]
対象:1000例以上の非糖尿病者を対象に2年以上の治療を予定した試験。
除外:登録時に閉塞性疾患の既往を有する者。
未発表試験の検索も行った(該当なし)。
[二次予防]
対象:2002年発表のATTメタ解析対象試験のうち,個人データを利用可能;心筋梗塞(MI)または脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)の既往を有する患者を対象とした試験。
その他の試験の検索も行った(2002年以降同様の試験の報告なし)。
対象 [一次予防]
95000例,660000例・年,重篤な血管イベント3554件。
6試験(BDTPHSTPTHOTPPPWHS)。
[二次予防]
17000例,43000例・年,重篤な血管イベント3306件。
16試験(対象患者別内訳;MI既往6,脳卒中/ TIA既往10)。
主な結果 [一次予防]
重篤な血管イベント発生率はaspirin群0.51%/年,対照群0.57%/年と,aspirin群で抑制された(RR 0.88,95%CI 0.82-0.94,p=0.0001)。これはおもに非致死的MIの抑制によるものであった;0.18%/年vs 0.23%/年(RR 0.77,95%CI 0.67-0.89,p<0.0001)。サブグループ間の不均一性は認められなかった(p=0.7)。
各項目の結果は以下の通り。
主要冠イベント;RR 0.82,95%CI 0.75-0.90。
冠動脈疾患死;RR 0.95,95%CI 0.82-1.10。
全脳卒中;RR 0.95,95%CI 0.85-1.06。
出血性脳卒中;RR 1.32,95%CI 1.00-1.75。
虚血性脳卒中;RR 0.86,95%CI 0.74-1.00。
原因不明の脳卒中;RR 0.97,95%CI 0.80-1.18。
血管死;RR 0.97,95%CI 0.87-1.09。
全死亡;RR 0.95,95%CI 0.88-1.02。
頭蓋外大出血(消化管出血);RR 1.54,95%CI 1.30-1.82。

[二次予防]
重篤な血管イベント発生率はaspirin群6.69%/年,対照群8.19%/年と,aspirin群で抑制された(RR 0.81,95%CI 0.75-0.87,p<0.00001)。出血性脳卒中の増加は認められず,全脳卒中および冠イベントの抑制が認められた。
各項目の結果は以下の通り。
主要冠イベント;RR 0.80,95%CI 0.73-0.88。
非致死的MI;RR 0.69,95%CI 0.60-0.80。
冠動脈疾患死;RR 0.87,95%CI 0.78-0.98。
全脳卒中;RR 0.81,95%CI 0.71-0.92。
出血性脳卒中;RR 1.67,95%CI 0.97-2.90。
虚血性脳卒中;RR 0.78,95%CI 0.61-0.99。
原因不明の脳卒中;RR 0.77,95%CI 0.66-0.91。
血管死;RR 0.91,95%CI 0.82-1.00。
全死亡;RR 0.90,95%CI 0.82-0.99。
頭蓋外大出血(消化管出血);RR 2.69,95%CI 1.25-5.76。

[性差]
一次予防,二次予防とも,重篤な血管イベント発生率は男女で同様の結果であった。
一次予防;男性0.95%/年 vs 1.08%/年,RR 0.88,95%CI 0.78-0.98,女性0.28%/年 vs 0.32%/年,RR 0.88,95%CI 0.76-1.01。
二次予防;男性6.88%/年 vs 8.45%/年,RR 0.81,95%CI 0.73-0.90,女性5.88%/年 vs 7.14%/年,RR 0.81,95%CI 0.64-1.02。

[年齢]
一次予防における年齢別の重篤な血管イベント発生率は以下の通り;65歳未満0.35%/年 vs 0.40%/年,RR 0.87,95%CI 0.78-0.98,65歳以上1.37%/年 vs 1.53%/年,RR 0.88,95%CI 0.77-1.01。

[脳卒中]
一次予防,二次予防を総合すると,aspirinは出血性脳卒中を増加させたが(RR 1.39,95%CI 1.08-1.78,p=0.01),虚血性脳卒中は抑制した(RR 0.83,95%CI 0.73-0.95,p=0.005)。
なお,二次予防試験において発症した脳卒中の少なくとも84%は虚血性脳卒中またはTIAの既往を有する高リスク患者であった。
文献: Antithrombotic Trialists' Att Collaboration Aspirin in the primary and secondary prevention of vascular disease: collaborative meta-analysis of individual participant data from randomised trials. Lancet 2009; 373: 1849-60. pubmed
関連トライアル AAA, ASPIRE, aspirinの糖尿病患者心血管イベント一次予防効果, aspirin長期連用による癌死リスク抑制効果, aspirin連日投与による癌転移抑制効果, aspirin連日投与による短期の癌発生,癌死,非血管死抑制効果, CAPRIE 1996, CAST, CAST-IST, IST 1997, PPP, TPT, TRA 2P-TIMI 50 previous myocardial infarction, WHS, 脳梗塞急性期におけるheparin投与
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