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メタ解析
rtPA血栓溶解療法の転帰における性差
Outcomes of intravenous recombinant tissue plasminogen activator therapy according to gender
結論 rtPA投与を受けた脳梗塞患者について,転帰における性差は認められなかった。
コメント 最大規模の SITS-MOST(2008)の影響を考慮して,自験データおよびシステマティックレビューでrtPA血栓溶解療法の転帰に性差が認められない点を明らかにした論文である。女性は男性に比し死亡率が高かったが,NIHSSスコア,年齢,高血圧,心房細動の合併率が高く,可能性のある交絡因子を補正するとその差は消失した。一部の未補正因子が転帰に性差を生じさせた可能性を考察している。本論文のデータベースにも制限があり,更なる大規模研究での検証が望まれる。(岡田靖

目的 脳卒中の自然経過は女性の方が男性に比し不良であるが,血栓溶解療法の有効性における性差については,試験により異なる結果が報告されている。本解析では,これまでシステマティックレビューが行われていない血栓溶解療法の有効性の性差について,観察研究のシステマティックレビュー,および著者の施設での前向き登録(Bichatレジストリー)にもとづいて検討する。
方法 [システマティックレビュー]
PubMedにて,1996年1月~2008年9月に出版された論文について,検索語[”thrombolysis” OR ”thrombolytic” OR ”fibrinolysis” OR ”tissue plasminogen activator”] AND ”stroke”を用い,rtPA静注の有効性かつ/または安全性における性別の影響を調査した観察研究を検索。検索は英文の論文に限定した。
研究は以下の基準により選択された;18歳以上の対象者が参加,性差と有効性かつ/または安全性の転帰との関連についての統計的解析を報告,発症から3時間以内にrtPA静注を行った脳梗塞患者連続例の結果を報告。
対象 [Bichatレジストリー]
274例(男性163例,女性111例)。
対象:2002年1月-2008年6月,著者の施設にて発症から3時間以内にrtPA静注を受けた患者。追跡不能の4例は解析から除外した。
治療:rtPA静注はNINDS基準および追加除外項目(中大脳動脈領域の1/3以上における梗塞の早期CT所見かつ/または重篤な意識障害)に従い行われた。rtPA静注の年齢制限は設けなかった。2007年4月以降,rtPA静注後も動脈閉塞が確認された場合は追加動注を行った。
患者背景:平均年齢は男性62.7±13.9歳,女性70.6±16.1歳(p<0.001)。高血圧54.6%,66.8%(p=0.05)。心房細動23.3%,35.2%(p=0.03)。NIHSSスコア中央値(四分位範囲)12(7-17),15(9-19)(p<0.01)。心原性塞栓35.6%,55.0%(p<0.01)。発症から治療までの時間中央値(四分位範囲)150(123-175)分,150(122-175)分。プロトコール違反18.4%,16.8%。

[システマティックレビュー]
12620例(うち女性5221例)。
16試験を適格とし,SITS-MOSTの2008年の解析も含めた。
SITS-MOST(2008)Gomez-Choco M et al(2008)Kent DM et al(2008)Uyttenboogaart M et al(2008)Caso V et al(2007)Marti-Fabregas J et al(2007) Ernon L et al(2006) Georgiadis D et al(2006)Berrouschot J et al(2005)Engelter ST et al(2005)Heuschman PU et al(2004)Saposnik G et al(2005)Saposnik G et al(2004)Tannne D et al(2002)Demchuk AM et al(2001)Mendizabal JE et al(2001)Chiu D et al(1998)
主な結果 [Bichatレジストリー]
・90日後の転帰良好(mRS 0-1)
男性56例(34.4%),女性37例(33.3%)と有意差は認められなかった(p=0.86)(OR 1.41,95%CI 0.76-2.60)。
・90日後の死亡
男性17例(10.4%),女性22例(19.8%)と女性の方が多かったが(p=0.028),有意差は補正後消失した(OR 1.38,95%CI 0.59-3.19)。
・症候性脳内出血
男性15例(9.2%),女性8例(7.2%)と有意差は認められなかった(p=0.56)(OR 0.32,95%CI 0.10-1.04)。

[システマティックレビュー]
・90日後の転帰良好(Bichatレジストリー+7試験)
女性の方が少なかったが(OR 0.89,95%CI 0.81-0.97),データの77%を占めるSITS-MOSTを除外すると,有意差は消失した(OR 0.95,95%CI 0.79-1.14)。不均一性は認められなかった(I2=3.6%,p=0.40)。
・90日後の死亡(Bichatレジストリー+7試験)
性差は認められず(OR 0.96,95%CI 0.84-1.08),不均一性も認められなかった(I2=28.5%,p=0.23)。
・症候性脳内出血(Bichatレジストリー+4試験)
女性の方が発症率が低い傾向が認められ(OR 0.87,95%CI 0.68-1.10),SITS-MOSTを除外しても同様であった(OR 0.75,95%CI 0.55-1.02)。不均一性は認められなかった(I2=0%,p=0.43)。
文献: Meseguer E, et al. Outcomes of intravenous recombinant tissue plasminogen activator therapy according to gender: a clinical registry study and systematic review. Stroke 2009; 40: 2104-10. pubmed
関連トライアル Bichat Clinical Registry, Bravo Y et al, CASES gender, ECASS III additional outcomes, ECASS-II blood pressure, IPSS use of alteplase, Masjuan J et al, Mikulik R et al 2009, rtPA静注後の頭蓋内出血に関するリスク因子, SAINT postthrombolysis ICH, SAMURAI rtPA Registry SITS-MOST criteria, SITS-ISTR, SITS-ISTR blood pressure, SITS-MOST, SITS-MOST multivariable analysis, SPOTRIAS, SPOTRIAS, SUMO, Tsivgoulis G et al, Tsivgoulis G et al, 虚血性脳卒中患者に対するIV/IA併用療法, 脳梗塞患者に対する血栓溶解療法施行率における性差, 発症からalteplase静注までの時間と転帰
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