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TIPS The Indian Polycap Study
結論 Polycapは投与しやすく,複数の危険因子を改善し心血管リスクを低下させることが可能である。
コメント 高血圧や高脂血症の治療薬剤を配合した薬剤は,わが国でもすでに申請段階に入っている。Polypill(Polycap)は,その究極とも言える配合剤である。本試験の対象者は,必ずしも高血圧や高コレステロール血症を有していない。これらを含むリスク因子を1つ以上有するものと定義されている。血圧やコレステロールの値と疾患発症のリスクの関係は直線的であり,どの値以上から「高い」と定義することはできない。できるのは,トータルとしての疾患発症リスクの定量的評価のみである。すなわち,降圧薬やコレステロール低下薬は,実は「リスク低下薬」とでも位置づけなければ,このような試験の発想自体ができない。リスク-臓器障害-疾患発症の連続性の概念とさまざまなプロフィールの個人の正確なリスク予知が,心血管疾患の予防医学の根底にあることを銘記すべきである。(島田和幸

目的 心血管疾患既往はないが危険因子を1つ有する患者において,5剤ポリピル(Polycap;3種類の降圧薬[ACE阻害薬,β遮断薬,利尿薬]+スタチン+aspirinの配合剤)と個々の薬剤を比較。主要評価項目:LDL-C,降圧,心拍数,尿中11-デヒドロトロンボキサンB2(11-DTXB2),忍容性。
デザイン ランダム化,二重盲検,phase II,intention-to-treat解析。NCT00443794。
セッティング 多施設(50施設),インド。
期間 登録期間は2007年3月5日-2008年8月5日。
対象患者 2053例。心血管疾患の既往がない;45-80歳;1つ以上のリスク因子(2型糖尿病;SBP 140-160mmHg,DBP 90-100mmHg;過去5年以内の喫煙;ウエスト/ヒップ比(女性>0.85,男性>0.90);LDL-C>120mg/dL/HDL-C<40mg/dL)を有する者。
【除外基準】試験薬投与,2種類以上の降圧薬投与,LDL-C>174mg/dL,クレアチニン>2.0mg/dL,カリウム>5.5mmol/L,肝機能障害,喘息など。
【患者背景】全例の平均年齢54.0±7.9歳,女性43.9%,BMI 26.3kg/m2,血圧134.4/85.0mmHg,心拍数80.1拍/分,総コレステロール181.7mg/dL,LDL-C 116.0mg/dL,HDL-C 42.5mg/dL,トリグリセライド168.2mg/dL,糖尿病33.9%,現在の喫煙13.4%,Ca拮抗薬投与21.7%。
治療法 3週間のスクリーニング後,以下の9群(Polycap群 vs 8対照群)にランダム化し12週間投与。
Polycap群(412例):ポリピル(利尿薬 hydrochlorothiazide[HCTZ]+β遮断薬atenolol+ACE阻害薬ramipril+スタチンsimvastatin+抗血小板薬aspirin)の合剤を1日1回服用。
対照群:(1)aspirin単剤群;205例,(2)HCTZ単剤群;205例,(3)HCTZ+ramipril群;209例,(4)HCTZ+atenolol群;207例,(5)ramipril+atenolol群;205例,(6)HCTZ+ramipril+atenolol群;204例,(7)HCTZ+ramipril+atenolol+aspirin群;204例,(8)simvastatin単剤群;202例。
各薬剤の用量/日は,HCTZ 12.5mg,atenolol 50mg,ramipril 5mg(最初の7日は2.5mg),simvastatin 20mg,aspirin 100mg。
追跡完了率 薬剤投与中止率の群間差は認められなかった(全体14.8% vs Polycap群16.0%)。
【脱落理由】
Polycap群の投与中止の主な理由は薬剤関連3.4%,めまい/低血圧2.4%,社会的理由/患者の拒否9.7%。
結果

●評価項目
[降圧]
降圧薬非投与群(aspirin単剤群,simvastatin単剤群)に比し,Polycap群の降圧は7.4/5.6mmHgで,3種類の降圧薬併用群(6.3/4.5mmHg低下)と同等であった。降圧薬1種類(HCTZ単剤群)は2.2/1.3mmHg低下,2種類併用は4.7/3.6mmHg低下。降圧効果にaspirinは関連しなかった。
[脂質]
スタチン非投与群に比し,Polycap群のLDL-C低下は-27.1mg/dL(23.3%)と,simvastatin単剤群-32.1mg/dL(27.7%)に及ばなかった(p=0.04,Polycap群 vs simvastatin単剤群)。
[心拍数]
atenolol 非投与群に比し,Polycap群の心拍数低下は7拍/分の低下と,atenololを含むその他の群(7拍/分の低下)と同等で,両群とも有意差が認められた(p<0.0001 vs atenolol 非投与群)。
[尿中11-DTXB2]
aspirin非投与群に比し,Polycap群の尿中11-DTXB2低下は-283.1ng/mmol(Cr)で,aspirin単剤群(-348.8),降圧薬3種類+aspirin群(-350.0)と同等であったが,Polycap群とaspirinを含む他の群との差は66ng/mmol(Cr)で,非劣性は認められなかった(非劣性p=0.57)。上記3群はベースライン時およびaspirin非投与群に比しては有意差が認められた(p<0.0001)。

Polycapにより心血管疾患リスクを62%,脳卒中リスクを48%低下させる可能性が示唆された。

●有害事象
めまい/低血圧(全体4.5%,Polycap群6.3%),咳(3.8%,5.3%),クレアチニン>50%の上昇(8.3%,8.5%),カリウム>5.5mmol/L(5.3%,4.4%)。

文献: Yusuf S, et al.; Indian Polycap Study (TIPS). Effects of a polypill (Polycap) on risk factors in middle-aged individuals without cardiovascular disease (TIPS): a phase II, double-blind, randomised trial. Lancet 2009; 373: 1341-51. pubmed
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