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FAST-MI genetic determinants
結論 clopidogrel投与を受けている急性心筋梗塞(AMI)患者において,CYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する場合,非保有患者に比し,その後の心血管イベント発生率が高かった。この結果は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行患者で特に顕著であった。
コメント プロドラッグであるクロピドグレルは,吸収,肝臓での代謝を経て産生される不安定な活性体が血小板のP2Y12を非可逆的に阻害することにより抗血小板効果を発揮する。本研究は,クロピドグレルの吸収,代謝に関与することがわかっている少数の遺伝子多型と心血管イベント発症の関連を,比較的少数例で検討した。クロピドグレルが吸収,代謝され,血小板のP2Y12阻害率にバラツキが生じた後,イベント発症率にバラツキが生じるとの論理である。中間であるP2Y12阻害率を明確にすることをせずに遺伝子多型とイベントの関連のみを論じている点では,ノイズを多く含む論文である。代謝に関与する因子ももっと多くあるため,将来的にはパーソナルゲノムとイベントの関連を明確にできればより科学的に意味のある議論が可能となろう。(後藤信哉

目的 フランスの急性ST上昇型/非ST上昇型MI患者登録(FAST-MI,Circulation 2008;118:268-76)のデータを用い,AMI後clopidogrel投与を受けた患者において,clopidogrel吸収調節遺伝子(ABCB1),代謝活性調節遺伝子(CYP3A5CYP2C19),生物活性調節遺伝子(P2RY12ITGB3)の対立遺伝子多型と,追跡調査 1 年間における全死亡または虚血イベントリスクとの関連を検討。エンドポイント:入院後1年の全死亡,非致死的MI,非致死的脳卒中の複合。
デザイン 登録研究。NCT00673036。
セッティング 多施設(223施設),フランス。
期間 登録期間は2005年10月1日-12月24日の間の1ヵ月。
対象患者 2208例。本解析の対象者は,FAST-MI登録患者(18歳以上,心筋壊死の血清マーカー値[クレアチンキナーゼ(CK),CK-MB,トロポニンI/T]が正常域上限の2倍以上に上昇し,かつAMIの症状,または隣接する2つ以上の誘導における心電図上の変化[>0.04秒持続する病的Q波,持続するST上昇,>0.1mVのST低下]を呈し,症状発現からICUへの入院までの所要時間が48時間未満の患者)のうち,clopidogrel投与を受けた症例。
【除外基準】―
【患者背景】平均年齢はイベント非発生例(1914例)64.8±13.5歳,イベント発生例(294例)75.4±10.8歳。各群の男性72%,63%。高血圧56%,72%。糖尿病30%,41%。MIの既往16%,25%(性別はp=0.001,他はすべてp<0.001)。
治療法
追跡完了率 99.2%。
【脱落理由】―
結果

●評価項目
追跡期間中の死亡は225 例,非致死的MIまたは非致死的脳卒中は94 例に発生した。
CYP3A5P2RY12ITGB3 の特定の一塩基多型(SNP)のいずれにも,有害転帰のリスクとの相関は認められなかった。
ABCB1の変異型対立遺伝子を 2つ有する(ヌクレオチド 3435 が TT)患者では,野生型遺伝子(ヌクレオチド 3435 が CC)を有する患者に比し,1 年の心血管イベント発生率が高かった(15.5% vs 10.7%,補正後HR 1.72,95%CI 1.20-2.47,p=0.007)。
CYP2C19 機能喪失型対立遺伝子(*2,*3,*4,*5)のいずれか 2 つを有する患者では,非保有患者に比し,イベント発生率が高かった(21.5% vs 13.3%,補正後HR 1.98,95%CI 1.10-3.58,p=0.003)。
入院中にPCIを受けた 1535 例では,CYP2C19の機能喪失型対立遺伝子を 2 つ有していた患者の心血管イベント発生率は,非保有患者に比し高かった(補正後HR 3.58,95%CI 1.71-7.51,p=0.005)。

●有害事象

文献: Simon T, et al.; the French Registry of Acute ST-Elevation and Non-ST-Elevation Myocardial Infarction (FAST-MI) Investigators. Genetic Determinants of Response to Clopidogrel and Cardiovascular Events. N Engl J Med 2009; 360: 363-75. pubmed
関連トライアル 3T/2R, ACTIVE A, AFIJI CYP2C19, Andersson C et al, ARMYDA-PRO, CHAMPION PCI, CHARISMA, CLARITY-TIMI 28, COURAGE, CREDO, EXCELSIOR CYP2C19, FAST-MI CYP2C19 and PPI, Mega JL et al, PCI-CLARITY, PCI-CURE, PLATO, POPular CYP2C19*2, REAL-LATE / ZEST-LATE, Sachdeva A et al, Shuldiner AR et al(PAPI/Sinai病院研究), Sibbing D et al (2009, Eur Heart J), Sibbing D et al(2010), Sorensen R et al (2011), TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 early and late benefits, TRITON-TIMI 38 PCI
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