抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
JPAD Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis with Aspirin for Diabetes
結論 アテローム性動脈硬化症の既往のない2型糖尿病日本人患者において,低用量aspirinは脳・心血管イベントリスクを減少させなかった。致死的な心血管イベントや脳卒中に対しては,有意な発症抑制効果を示した。大規模試験にかかわらず,イベント発症率は予想より低かった。aspirinは出血性脳卒中を増加させず,重篤な消化管出血の増加は小さいものであり,忍容性に優れていた。
コメント 当初予測したイベント数52/1000年・人の1/3の17.0/1000年・人しかプライマリーエンドポイントは発生しなかった。 したがってハザード比の信頼限界は0.58-1.10と幅広いものとなり, 精度の低い試験となった。しかし,有意差はないものの,20%のリスク減少率はアスピリンの1-2次予防におけるメタ解析の結果と一致し,アスピリンが有効である可能性は大いに存在する。我が国の正確な発症率の把握やイベント数が規定に達するまで試験を継続するプロトコールの必要性などが教訓として残った。(島田和幸

目的 アテローム性動脈硬化症の既往のない2型糖尿病の日本人患者において,低用量aspirinによる動脈硬化性疾患予防効果を検討。一次エンドポイント:動脈硬化性イベント(突然死+冠動脈/脳血管/大動脈が原因の死亡+非致死的急性心筋梗塞+不安定狭心症+労作性狭心症の新規発症+非致死的虚血性/出血性脳卒中+一過性脳虚血発作(TIA)+非致死的大動脈血管疾患+非致死的末梢血管疾患)。二次エンドポイント:一次エンドポイントの各構成要素,およびその組み合わせ,全死亡。
デザイン PROBE(prospective,randomized,open,blinded-endpoint),intention-to-treat解析。NCT00110448。
セッティング 多施設(163施設),日本。
期間 登録期間は2002年12月-2005年5月。追跡終了は2008年4月。追跡期間中央値は4.37年。
対象患者 2539例。30-85歳の2型糖尿病患者。
【除外基準】心電図上の変化(ST偏位/異常Q波),冠動脈造影で確認された冠動脈疾患の既往,脳血管疾患の既往(脳梗塞/脳出血/くも膜下出血/TIA),治療を必要とする動脈硬化性疾患,心房細動,抗血小板薬/抗凝固薬投与,重篤な胃・十二指腸潰瘍の既往,重篤な肝または腎機能障害など。
【患者背景】平均年齢はaspirin群65±10歳,非aspirin群64±10歳。各群の男性56%,53%。現在の喫煙23%,19%。過去の喫煙43%,38%。高血圧59%,57%。脂質異常症54%,52%。糖尿病罹患期間中央値7.3年,6.7年。
治療法 aspirin群(1262例。aspirin 81-100mg/日)および非aspirin群(1277例)にランダム化。
他の薬剤との併用を許可。非aspirin群では,必要な場合は抗血小板薬/抗凝固薬(aspirinを含む)の使用を許可。
追跡完了率 追跡不能はaspirin群97例,非aspirin群96例。
【脱落理由】表記なし。
結果

●評価項目
一次エンドポイントはaspirin群68例(5.4%;13.6/1000例・年),非aspirin群86例(6.7%;17.0/1000例・年)で,aspirin群で減少したものの,有意差は認められなかった(ハザード比[HR]0.80,95%CI 0.58-1.10,p=0.16)。
二次エンドポイントの1つである致死性冠動脈イベント+致死性脳血管イベントは,aspirin群1例(致死的脳卒中),非aspirin群10例(致死的心筋梗塞5例+致死的脳卒中5例)と,aspirin群で減少した(HR 0.10;0.01-0.79,p=0.0037)。
全死亡は34例 vs 38例と有意差は認められなかった(HR0.90;0.57-1.14,p=0.67)。
年齢別の検討では,65歳以上の症例において,aspirin群で一次エンドポイントが減少した(HR 0.68;0.46-0.99,p=0.047)。65歳未満では有意差は認められなかった(HR 1.0;0.57-1.70)。
男女別の検討では,男女とも有意差は認められなかった(男性:HR 0.74;0.49-1.12,女性:HR 0.88;0.53-1.44)。

●有害事象
出血性脳卒中+重篤な消化管出血の複合は10例 vs 7例と有意差は認められなかった。重篤な消化管出血は4例 vs 0例であった。

文献: Ogawa H, et al.; Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis With Aspirin for Diabetes (JPAD) Trial Investigators. Low-dose aspirin for primary prevention of atherosclerotic events in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial. JAMA 2008; 300: 2134-41. pubmed
関連トライアル AAA, AAASPS 2003, APPRAISE-2, ASPIRE, aspirinの糖尿病患者心血管イベント一次予防効果, aspirin連日投与による癌転移抑制効果, CAPRIE 2000, CHARISMA, CREDO, ECLAP, ESPRIT , Garcia Rodriguez LA et al (BMJ), IST 1997, JAST, JPAD cerebrovascular event, Physicians' Health Study 1991, SPAF III 1998, TPT, TRA 2P-TIMI 50, WARSS, WHS, 安定循環器疾患に対する低用量aspirin
関連記事