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ECASS III European Cooperative Acute Stroke Study III
結論 脳梗塞発症3-4.5時間経過後のalteplase静注は,プラセボに比し臨床転帰を改善したが,頭蓋内出血の増加がみられた。
コメント これまでの統合解析の結果に基づいて,rt-PA静注療法の治療時間枠を広げ,有効性を示した画期的な論文である。アルテプラーゼ群はプラセボ群に比較し,偶然にNIHSSスコアおよび脳梗塞既往の頻度が低いことと,これまでの臨床試験に比べて比較的軽症例(中央値9-10)が対象である点などに留意する必要がある。わが国でも0.6mg/kgで独自に検証することが望まれる。(岡田靖

目的 脳梗塞発症後3時間以内とされているalteplase静注について,時間枠を3-4.5時間と延長しても安全に投与することが可能かどうか検討。有効性の一次エンドポイント:90日後の転帰良好(modified Rankin Score[mRS]0-1)。有効性の二次エンドポイント:90日後のmRS 0-1,Barthel Index ≧95,National Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア0-1,Glasgow Outcome Scale 1の複合。安全性のエンドポイント:90日後の全死亡,頭蓋内出血,症候性頭蓋内出血,症候性脳浮腫,その他の有害事象。
デザイン ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,intention-to-treat(ITT)解析およびper-protocol(PP)解析。
セッティング 多施設(130施設),19ヵ国(ヨーロッパ)。
期間 登録期間は2003年7月29日-2007年11月13日。追跡期間は90日。
対象患者 821例。18-80歳の脳梗塞患者;脳卒中の兆候が30分以上続き,治療前に改善がみられない;発症後3-4.5時間経過後に試験薬を投与。
当初,発症後の時間枠は3-4時間としたが,2005年5月,228例登録後,発症4.5時間後でも血栓溶解療法のベネフィットが得られるという統合解析(Lancet 2004;363:768-74),また患者登録の進みが遅かったことより,3-4.5時間に変更した。
【除外基準】頭蓋内出血または重症脳梗塞(NIHSSスコア>25など。なおランダム化前にCTまたはMRIを施行し,くも膜下出血を疑わせる兆候がある場合はCT所見が正常でも除外);発症時間不明;脳卒中発症時の発作;3ヵ月以内の脳卒中/重症の頭部外傷;脳卒中既往+糖尿病の合併;発症前48時間以内にheparin投与を受け,入院時の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が正常値上限を超えている;血小板数<10万/mm3;血圧>185/110mmHg,またはこの制限値に低下させるために積極的治療(静注)が必要;血糖値<50mg/dLまたは>400 mg/dLなど。
【患者背景】平均年齢はalteplase群64.9±12.2歳,プラセボ群65.6±11.0歳。各群の男性63.2%,57.3%。NIHSSスコア(p=0.03);平均値10.7±5.6,11.6±5.9,中央値9,10。糖尿病14.8%,16.6%。高血圧62.4%,62.8%。心房粗動/細動12.7%,13.6%。脳卒中既往7.7%,14.1%(p=0.03)。脳梗塞発症から治療までの時間3時間59分,3時間58分(3時間以上3.5時間以下9.6%,10.4%,3.5時間超4.0時間以下45.7%,47.9%,4.0時間超4.5時間以下41.6%,36.7%)。
治療法 alteplase群(418例。0.9mg/kg[最大90mg]の10%をボーラス投与後,残りは60分超で静注),プラセボ群(403例)にランダム化。
全例において,試験薬投与後24時間のheparin静注,経口抗凝固薬,aspirin,血漿増量剤(hetastarch,dextranなど)の投与は禁止したが,静脈塞栓症予防のためのheparin皮下投与(≦1万IU)または同等量の低分子量heparinは許可。
追跡完了率 PP解析からの除外はalteplase群43例,プラセボ群48例。
【脱落理由】試験薬非投与12例 vs 13例,管理不良の高血圧4例 vs 13例,採用基準非合致10例 vs 6例,CT基準非合致10例 vs 7例,3-4.5時間の時間枠外投与1例 vs 7例,その他6例 vs 2例。
結果

●評価項目
ITT解析において,90日後の転帰良好(mRS 0-1)はalteplase群219例(52.4%)と,プラセボ群182例(45.2%)に比し多かった(OR 1.34,95%CI 1.02-1.76,p=0.04)。PP解析でも同様の結果であった(OR 1.47;1.10-1.97,p=0.01)。
有効性の二次エンドポイントについても,alteplase群の方が良好な結果であった(ITT解析:OR 1.28;1.00-1.65,p=0.05,PP解析:OR 1.39;1.07-1.80,p=0.02)。

●有害事象
90日後の頭蓋内出血は113例(27.0%)vs 71例(17.6%)(OR 1.73;1.24-2.42,p=0.001),症候性頭蓋内出血は10例(2.4%)vs 1例(0.2%)(OR 9.85;1.26-77.32,p=0.008)と,いずれもalteplase群の方が多かった。
全死亡は32例(7.7%)vs 34例(8.4%)(OR 0.90;0.54-1.49,p=0.68),症候性脳浮腫は29例(6.9%)vs 29例(7.2%)(OR 0.96;0.56-1.64,p=0.89)と,いずれも有意差は認められなかった。

文献: Hacke W, et al; ECASS Investigators. Thrombolysis with alteplase 3 to 4.5 hours after acute ischemic stroke. N Engl J Med 2008; 359: 1317-29. pubmed
関連トライアル AbESTT, AbESTT-II, Alshekhlee A et al, ASP, CLOTBUST , COBALT, De Marchis GM et al, ECASS, ECASS III additional outcomes, EPITHET, Erlangen Stroke and Thrombolysis Database, GUSTO III, GWTG-Stroke Registry risk of sICH, GWTG-Stroke time to treatment, ICARO, ICARO-2, IMS III, IPSS use of alteplase, IST-3, J-ACT, J-MARS, Kellert L et al, NINDS rt-PA Stroke Study 1995, Power A et al, RECANALISE, SAINT postthrombolysis ICH, SAMURAI rt-PA Registry early neurological deterioration, Sarikaya H et al, Sarikaya H et al (obese), Sarikaya H et al (posterior circulation stroke), Schellinger PD et al, SITS-ISTR, SITS-ISTR antiplatelet therapy, SITS-ISTR elderly, SITS-ISTR sex differences, SITS-ISTR young patients, SITS-ISTR/VISTA, SITS-MOST multivariable analysis, SYNTHESIS Expansion, Toni D et al, TROICA, WASID, 虚血性脳卒中患者に対するIV/IA併用療法, 内頸動脈閉塞に続発する脳梗塞に対するtPA静注および動脈内血管内療法, 発症からalteplase静注までの時間と転帰
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