抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
メタ解析
心血管疾患リスクを有する患者におけるaspirin+OAC併用とOAC単独投与の比較
Combined aspirin-oral anticoagulant therapy compared with oral anticoagulant therapy alone among patients at risk for cardiovascular disease: a meta-analysis of randomized trials
結論 aspirin+経口抗凝固薬(OAC)の併用は,機械弁患者を除き,血栓塞栓イベント抑制効果は疑わしく,大出血リスクを上昇させる。
コメント メタ解析の結果を見る場合,それに含まれている試験の内容をよく見る必要がある。本研究で解析に使われた研究のうち,全症例数の50%以上が1つの研究によるものである。このMeadeらの試験では,ワルファリンのコントロールがINR<1.5の範囲で行われており,充分な効果を発揮しているとは考えにくい。また,フォローアップ期間も3ヵ月以上のものを含んでおり,比較的臨床期間が短いことにも留意すべきであろう。目的の部分に「多くのAF患者が併用療法を受けている」というくだりがあるが,今回のメタ解析の結果をAF患者に対する併用療法にそのままあてはめることには無理があると言わざるを得ない。(是恒之宏

目的 米国胸部疾患学会議(ACCP)ガイドラインにおいては低用量aspirin+OAC併用の推奨は機械弁患者に限定されているにもかかわらず,多くの慢性心房細動患者が併用投与を受けている。本論文では併用および抗凝固薬単独投与を比較し,有効性(血栓塞栓イベント)と安全性(大出血)を評価する。
方法 MEDLINE(1966-2005年6月),EMBASE(1980-2005年6月),Cochrane Central Register of Controlled Trial(2005年issue 2)にて,以下の基準を満たすトライアルを検索;(1)OACを必要とする成人に対するランダム化比較試験,(2)aspirin+OAC併用およびOAC単独を比較(OACは両群において同じ目標国際標準比[INR]値を達成するよう,または同じ固定量を投与),(3)追跡期間3ヵ月以上,(4)事前に規定された転帰(動脈血栓塞栓症,死亡率,大出血)が1つ以上客観的に記載されている。参考文献のハンドサーチおよび専門家へのコンタクトも行った。
対象 4180例(aspirin+OAC併用群2100例,OAC単独群2080例)。
10試験が該当(対象疾患は機械弁5試験990例,心房細動2試験495例,心血管疾患2試験150例,高リスク1試験2545例)。
以下の表記は順に症例数(OAC単独群/aspirin+OAC併用群)。年齢。OACの適応。OACの目標域または用量。aspirinの用量。
Altman et al, 1976
65/57例。年齢は報告なし。機械弁。トロンビン時間(正常値の1.8-2.3倍)。500mg/日。
Dale et al, 1980
73/75例。51.4±3.5歳/ 50.1±3.5歳。機械弁。トロンビン時間(10%)。1000mg/日。
ATACS-pilot
24/37例。61/63歳。不安定狭心症,非Q波心筋梗塞。INR 3.0-4.5。80mg/日。
Meade et al, 1992
1277/1268例。57.6±6.8/57.4±6.9歳。高リスク男性一次予防。INR<1.5。75mg/日。
Turpie et al, 1993
184/186例。58.1/58.1歳。機械弁。INR 3.0-4.5。100mg/日。
AFASAK 2 1999
167/171例。74.2±7.7/72.7±8.2歳。慢性非弁膜症性心房細動。warfarin 1.25mg/日。300mg/日。
Laffort et al, 2000
120/109例。63/63歳。機械弁。INR 2.5-3.5。200mg/日。
Huynh et al, 2001
45/44例。67±12/66±12歳。急性冠症候群,冠動脈バイパス術患者の二次予防。INR 2.0-2.5。80mg/日。
Lechat et al, 2001
81/76例。74.1±6.8/73.3±5.7歳。血栓塞栓イベント既往,65歳以上で高血圧合併,心不全,駆出率<40%を有する心房細動。INR 2.0-2.6。100mg/日。
Casais et al, 2002
64/57例。57.6/56.9歳。機械弁。INR 2.4-3.6。100mg/日。
主な結果 ・動脈血栓塞栓症
 動脈血栓塞栓症の発症はaspirin+OAC併用群128例(6.3%)と,OAC単独群179例(8.8%)に比し少なかった(OR 0.66,95%CI 0.52-0.84,絶対リスク低下2.5%,治療必要数[NNT]40)。試験ごとに不均一性がみられたため(p=0.02),ランダム効果モデルを用いて再度解析したが,aspirin+OAC併用の優位性は変わらなかった;OR 0.57;0.34-0.93。
 OACの適応別にみると,aspirin+OAC併用の優位性は機械弁(OR 0.27;0.15-0.49)に限られ,心房細動(OR 0.99;0.47-2.07),心血管疾患(OR 0.69;0.35-1.36)では有意差は認められなかった。
・死亡率
 死亡率について,両群において有意差は認められなかった;OR 0.98;0.77-1.25,p=0.88。試験ごとの不均一性はみられなかった(p=0.20)。
 OACの適応別では,心房細動OR 1.24;0.50-3.04,機械弁OR 0.66;0.38-1.13,心血管疾患OR 0.86;0.15-4.90。
・大出血
 大出血は80例(3.8%)vs 60例(2.8%)とaspirin+OAC併用群の方が多かった(OR 1.43;1.00-2.02,絶対リスク上昇1.0%,有害必要数[NNH]100)。頭蓋内出血(OR 1.36;0.55-3.32),致死的出血(OR 1.20;0.42-3.46)については,有意差は認められなかった。試験ごとの不均一性はみられなかった(p=0.67)。
OACの適応別では,心房細動OR 1.02;0.25-4.09,機械弁OR 1.49;1.00-2.23。
文献: Dentali F, et al. Combined aspirin-oral anticoagulant therapy compared with oral anticoagulant therapy alone among patients at risk for cardiovascular disease: a meta-analysis of randomized trials. Arch Intern Med 2007; 167: 117-24. pubmed
関連トライアル ACS後の患者における新規経口抗凝固薬の追加効果, ACTIVE W CHADS2 score, ACTIVE W INR control, ACTIVE W paroxysmal vs sustained, Altman R et al, CHARISMA atrial fibrillation, ESPRIT , NASPEAF, ORBIT-AF, RCTにおけるwarfarinとaspirinの出血リスク, Torn M et al, VTE二次予防の抗血栓療法の有効性および安全性, WAVE, 安定循環器疾患に対する低用量aspirin, 抗血小板療法中のACS後の患者に対する新規抗凝固薬の使用
関連記事