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メタ解析
ACS患者に対するenoxaparinとUFHの比較
Efficacy and safety of the low-molecular weight heparin enoxaparin compared with unfractionated heparin across the acute coronary syndrome spectrum: a meta-analysis
結論 49000例以上の急性冠症候群(ACS)患者における補助的抗トロンビン療法として,enoxaparinは未分画heparinに比し優れていた。enoxaparinは出血を増加させたが,これは死亡および心筋梗塞を減少させることにより相殺される。enoxaparinの正味の臨床ベネフィットはST上昇型心筋梗塞(STEMI)では明白であったが,非ST上昇型ACSでははっきりしなかった。
コメント 我が国では,ACSに低分子量ヘパリンを使用することは行われていない。非ST上昇型ACSでは,各種の抗血小板療法の併用やカテーテル治療を多用することが,抗凝固療法の効果を現れにくくしたと思われる。逆に,ST上昇型では低分子量ヘパリンによる抗凝固療法の追加が出血を増加させたが,虚血イベントを減少させた。(島田和幸

目的 STEMIおよび非ST上昇型ACS患者に対しenoxaparinとUFHを比較した大規模臨床試験のいくつかにおいて,enoxaparinの有効性は示されている。しかし一方で,enoxaparinの出血リスク上昇の懸念も報告されている。本論文では,enoxaparinがUFHに比し,有効性/安全性を懸案した正味のベネフィットをもたらすか検討する。
方法 Pubmedにて,(1)STEMIおよび非ST上昇型ACS患者に対して,(2)enoxaparinとUFHを比較した,(3)ランダム化臨床試験を検索。論文およびメタ解析の参考文献についてのハンドサーチも行った。
対象 49088例(STEMIコホート27131例,NSTEACSコホート21945例)。
12試験が該当(STEMI患者に対して行われた試験はaspirinおよび血栓溶解薬を用いた試験に制限された)。
[STEMIコホート]
ASSENT 3
4075例,平均年齢はenoxaparin群61±12歳,UFH群61±13歳,女性は23%,23%。
HART II
400例,平均年齢は60歳,61歳,女性は22%,26%。
Baird et al
300例,平均年齢は62±12歳,62±10歳,女性は両群27%。
ENTIRE-TIMI 23
242例,平均年齢は両群57±10歳,女性は両群16%。
ASSENT 3 Plus
1635例,平均年齢は両群62±13歳,女性は24%,22%。
ExTRACT TIMI 25
20479例,平均年齢は両群60±12歳,女性は24%,23%。
[NSTEACSコホート]
ESSENCE
3171例,平均年齢は63±12歳,64±11歳,女性は33%,34%。
TIMI 11B
3910例,平均年齢は64±12歳,64±11歳,女性は35%,36%。
ACUTE II
525例,平均年齢は65±12歳,64±13歳,女性は34%,33%。
INTERACT
746例,年齢中央値は両群64歳,女性は32%,31%。
A to Z
3618例,平均年齢は両群60±11歳,女性は両群29%。
SYNERGY
9975例,年齢中央値は両群68歳,女性は両群34%。
主な結果 ・複合エンドポイント(30日後の死亡,非致死的MI)
全例における複合エンドポイント発生率はenoxaparin群9.8%,UFH群11.4%(オッズ比[OR]0.84,95%CI 0.76-0.92,p<0.001)とenoxaparin群の方が少なかった。
・個々のエンドポイント(30日後)
 全例における死亡率は5.0% vs 5.3%(OR 0.94;0.87-1.02,p=0.14)と同等であったが,MIは5.5% vs 6.9%(OR 0.75;0.65-0.86,p<0.001)とenoxaparin群の方が少なく,大出血は4.3% vs 3.4%(OR 1.25;1.04-1.50,p=0.019)とenoxaparin群の方が多かった。
・正味のエンドポイント(30日後の死亡,非致死的MI,非致死的大出血)
全例における正味のエンドポイント発生率はenoxaparin群12.5%,UFH群13.5%(OR 0.90;0.81-1.003,p=0.051)で,有意差はみられなかった。なお,各トライアル間(p=0.006)およびSTEMI vs NSTEACS間(p=0.005)で不均一性が認められた。
・STEMIコホート
 正味のエンドポイントは11.1% vs 12.9%(OR 0.84;0.73-0.97,p=0.018)とenoxaparin群の方が少なかった。各トライアル間の不均一性は認められなかった(p=0.143)。
 死亡率は6.6% vs 7.1%(OR 0.92;0.84-1.01,p=0.097)と有意差はなかったが,MIは3.4% vs 5.1%(OR 0.64;0.52-0.78,p<0.001)とenoxaparin群の方が少なく,大出血は2.6% vs 1.8%(OR 1.45;1.23-1.72,p<0.001)とenoxaparin群の方が多かった。
・NSTEACSコホート
正味のエンドポイントは14.1% vs 14.3%(OR 0.97;0.86-1.09,p=0.607)と同等であった。各トライアル間の不均一性は認められなかった(p=0.132)。
死亡率は3.0% vs 3.0%(OR 0.99;0.83-1.18,p=0.890),大出血は6.3% vs 5.4%(OR 1.13;0.84-1.54,p=0.419)と同等であったが,MIは8.0% vs 9.1%(OR 0.87;0.79-0.96,p=0.005)とenoxaparin群の方が少なかった。
文献: Murphy SA, et al. Efficacy and safety of the low-molecular weight heparin enoxaparin compared with unfractionated heparin across the acute coronary syndrome spectrum: a meta-analysis. Eur Heart J 2007; 28: 2077-86.
Murphy SA, et al. Efficacy and safety of the low-molecular weight heparin enoxaparin compared with unfractionated heparin across the acute coronary syndrome spectrum: a meta-analysis. Eur Heart J 2007; 28: 2077-86. pubmed
関連トライアル ACUITY 1-year results, ACUITY diabetes mellitus, ACUITY switching to bivalirudin, ATLAS ACS-TIMI 46 , Cohen M et al, ESSENCE 1998, ESSENCE 2000, ExTRACT-TIMI 25, ExTRACT-TIMI 25 renal dysfunction, ExTRACT-TIMI 25 1-year outcomes, ExTRACT-TIMI 25 clopidogrel, ExTRACT-TIMI 25 PCI, OASIS-5 and 6, PCI施行STEMI患者におけるLMWHとUFHの比較, PCI施行中におけるenoxaparinとUFHの比較, PREVAIL, SYNERGY angiography, SYNERGY elderly, SYNERGY long-term outcomes, 非ST上昇型急性冠症候群に対する初期侵襲的治療および保存的治療の性差
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