抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
メタ解析
非ST上昇型急性冠症候群に対する初期侵襲的治療および保存的治療の性差
Early invasive vs conservative treatment strategies in women and men with unstable angina and non-ST-segment elevation myocardial infarction: a meta-analysis
結論 非ST上昇型急性冠症候群(ACS)に対する侵襲的治療は,男性および高リスク女性のいずれにおいても複合エンドポイント(死亡,心筋梗塞[MI],ACSのための再入院)発生率を低下させた。しかし低リスク女性に対しては,保存的治療を推奨する2007年のACC/AHAガイドラインを支持する結果であった。
コメント 現在米国では,治験や臨床研究に性差を評価することが求められるようになっている(Gender specific medicine)。心外膜冠動脈に狭窄を認めない“微小血管症”が女性には多く,本報告でも実に1/4のACS女性患者が正常冠動脈であったという。PCIの適応範囲が男性に比し狭められる原因の一つと考えられる。(島田和幸

目的 不安定狭心症および非ST上昇型MI患者において,侵襲的治療は広く行われている。しかし,FRISC II,RITA 3のサブ解析では,女性において侵襲的治療により死亡およびMIのリスクが上昇するとした一方,TACTICS-TIMI 18では,男女ともに有効で,特に高リスク(血清トロポニン上昇)女性ではその有効性が際立っていたとするなど,女性に対する結果は試験により異なる。本論文では,侵襲的治療の性差を検討する。
方法 Medline,Cochrane databaseを用い,1970年から2008年4月までに発行された論文を“侵襲的治療”“保存的治療”,“選択的侵襲的治療”,“ACS”,“非ST上昇型MI”,“不安定狭心症”で検索。他の制限は設けなかった。さらに,専門家へのコンタクトおよび主要心臓学会のアブストラクトのハンドサーチを行った。
対象 10412例(女性3152例;侵襲的治療群1571例/保存的治療群1581例,男性7260例;侵襲的治療群3641例/保存的治療群3619例)。
非ST上昇型ACS(不安定狭心症または非ST上昇型MI)患者を侵襲的治療*1 または保存的治療*2 にランダム割り付けした8試験( TIMI IIIB MATE VANQWISH FRISC II*3 TACTICS-TIMI 18 *3,VINO,RITA 3 *3 ICTUS *3 )。
*1:全例に冠動脈造影を行い,適応があれば血行再建術を施行。
*2:薬物治療を第一とし,誘発要因が不明な虚血の再発,または非侵襲的検査で虚血が誘発された症例のみ冠動脈造影を施行。
*3:GP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与。
【除外】主に安定狭心症または急性ST上昇型MI患者を対象とする;全例に血栓溶解薬を投与;登録前に冠動脈造影を必要とした試験など。
平均年齢は,女性;侵襲的治療群64.4歳/保存的治療群63.8歳,男性;侵襲的治療群61.4歳/保存的治療群61.2歳。喫煙26.8/31.9%,36.0/35.5%。糖尿病20.1/18.7%,17.3/17.3%。高血圧52.4/51.6%,40.6/41.2%。MI既往26.9/23.1%,34.8/33.8%。脂質異常症47.9/46.9%,39.9/38.6%。血管造影における病変範囲(侵襲的治療群のみ);なし24%,8%,1枝病変32%,28%,2枝病変21%,29%,3枝病変23%,35%。
主な結果 ・男女別の結果
複合エンドポイント(死亡,MI,ACSのための再入院)は,全体では女性23%,男性24%に発生した。性別でみると,女性では侵襲的治療群21.1%,保存的治療群25.0%(オッズ比[OR]0.81;95%CI 0.65-1.01)と同等であったが,男性においては侵襲的治療群21.2%,保存的治療群26.3%と,侵襲的治療群の方が少なかった(OR 0.73;0.55-0.98)。異性間における不均一性は認められなかった(p=0.26)。
このうち,ACSのための再入院は男女とも侵襲的治療群で有意に少なかった(女性OR 0.68;0.54-0.85,男性OR 0.66;0.54-0.82)。しかし,他のイベント(死亡,非致死的MI,死亡/MI)については,女性では侵襲的治療の効果はみられなかったが,男性では有意ではないものの侵襲治療群でこれらのリスクが低下した。死亡;女性OR 1.11;0.72-1.70,男性OR 0.89;0.58-1.35,非致死的MI;女性OR 0.93;0.59-1.45,男性OR 0.81;0.59-1.11,死亡/MI,女性OR 1.02;0.67-1.55,男性OR 0.87;0.61-1.23)。
・リスク別の解析
複合エンドポイントの侵襲的治療 vs 保存的治療のORは,高リスクサブグループ(バイオマーカー[CK-MB,トロポニン]上昇例)0.59;0.51-0.69 vs 非上昇例0.79;0.58-1.06で,性別,リスクにかかわらず侵襲的治療の方が有効であった(p=0.18)。バイオマーカー上昇例の死亡/MIのリスクは侵襲的治療群で32%有意に低下したが(OR 0.68;0.56-0.82),非上昇群では低下しなかった(OR 1.01;0.79-1.28,p=0.03)。
[女性]
バイオマーカー上昇例の複合エンドポイントは侵襲的治療群で33%有意に低下した(OR 0.67;0.50-0.88)。非上昇例では,不均質性は有意でなかったが,侵襲的治療の明白な有効性はみられなかった(OR 0.94;0.61-1.44,p=0.36)。
バイオマーカー上昇例の死亡/MIは有意ではないものの侵襲的治療群で低下したが(OR 0.77;0.47-1.25),非上昇例では有意ではないものの上昇した(OR 1.35;0.78-2.35,p=0.08)。
[男性]
侵襲的治療による複合エンドポイント発生率の低下について,高リスクではOR 0.56;0.46-0.67,低リスクではOR 0.72;0.51-1.01と,リスク別の差違は認められなかった(p=0.09)。
p値はいずれもp for interactionを示す)
文献: O'Donoghue M, et al. Early invasive vs conservative treatment strategies in women and men with unstable angina and non-ST-segment elevation myocardial infarction: a meta-analysis. JAMA 2008; 300: 71-80. pubmed
関連トライアル CRUSADE, DANAMI, ICTUS, ICTUS 5-year outcomes, OASIS-2, OASIS-5 and 6, SYNERGY, SYNERGY angiography, SYNERGY long-term outcomes, TACTICS-TIMI 18 1998, TACTICS-TIMI 18 2001, TIMI IIIB 1994, TIMI IIIB 1995, VANQWISH, 非ST上昇型ACS患者におけるルーチン侵襲治療と選択的侵襲治療の長期転帰
関連記事