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メタ解析
安定循環器疾患に対する低用量aspirin
Low-dose aspirin in patients with stable cardiovascular disease: a meta-analysis
結論 安定循環器疾患患者において,低用量aspirinは心血管イベントおよび全死亡を減少させた。重篤な出血のリスクは増加したが,エビデンス全体ではaspirinのベネフィットが示された。
コメント 慢性期のアテローム血栓性疾患に対する低用量アスピリン(300mg以下)の再発抑制効果は,相対的抑制率が25%程度であるという推定結果は,ATTなどと一致する。また出血の相対リスクが2倍であることも同様である。これらの成績は10-30年前に施行された試験結果に基づいており,現在のようにスタチンやRA系阻害薬が基礎に入っている場合は,その効果は相殺されると思われる。我が国でアスピリンの2次予防試験を実施することは倫理的に不可能であり,効果の定量評価はできないが,出血の正確な頻度を推定しておくことは重要である。一次予防試験などで示唆された性による違い(女性は脳卒中抑制効果,男性は心筋梗塞抑制効果がそれぞれ有意)についての分析は本論文ではされていない。(島田和幸

目的 これまでの研究により,抗血小板療法が広範囲の患者において循環器疾患の罹患率および死亡率を低下させることは明らかとなっているが,低用量aspirin単独投与に関する研究はまだない。本論文では,安定循環器疾患に対する二次予防のための低用量aspirin(50-325mg/日)のベネフィットとリスクを検討する。
方法 Medlineを用い,1966-2006年3月に発行された論文を“aspirin”,“二次予防”,“心筋梗塞(MI)”,“脳卒中”,“ランダム化比較試験(RCT)”,およびその組み合わせで検索。
検索された論文の参考文献より関連論文を調査。またMedline検索時には進行中である試験については,主要学術集会をモニターした。
対象 9853例(MI既往1239例,慢性安定狭心症2035例,頸動脈血管内膜切除術施行301例,TIA/脳卒中既往6278例)。
安定循環器疾患患者に対し,二次予防のために低用量aspirin単独またはプラセボ投与の比較を行った以下の6つのRCT。
急性期のMI,脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA),および不安定狭心症患者を含む試験は除いた。また本論文では,UK-TIA,ESPS-2にて低用量aspirin以外の薬剤が投与された治療群は解析から除外した。
Cardiff-1
対象はMI既往患者1239例,平均年齢55.0歳,女性0,aspirin 300mg/日投与,追跡期間13ヵ月。
Danish Low Dose
対象は頸動脈血管内膜切除術施行患者301例,平均年齢59.0±8.0歳,女性35%,aspirin 50-100mg/日投与,追跡期間23ヵ月。
UK-TIA
対象はTIA/軽症脳卒中既往患者1620例,平均年齢59.8±9.0歳,女性27%,aspirin 300mg/日投与,追跡期間50ヵ月。
SALT
対象はTIA/脳卒中既往患者1360例,平均年齢66.9±7.2歳,女性34%,aspirin 75mg/日投与,追跡期間32ヵ月。
ESPS-2 1996
対象はTIA/脳卒中既往患者3298例,平均年齢66.7歳,女性42%,aspirin 50mg/日投与,追跡期間24ヵ月。
SAPAT
対象は慢性安定狭心症患者2035例,平均年齢67歳,女性48%,aspirin 75mg/日投与,追跡期間50ヵ月。
主な結果 ・心血管イベント(非致死的MI,非致死的脳卒中,心血管死)
平均追跡期間33.3ヵ月において,心血管イベントは低用量aspirin群15.8%,プラセボ群19.1%に発症した(オッズ比[OR]0.79,95%CI 0.72-0.88,p<0.01)。絶対リスク減少3.3%,number needed to treat(NNT)30。
・非致死的MI
低用量aspirin群3.2%,プラセボ群4.4%に発症した(OR 0.74,95%CI 0.60-0.91,p<0.01)。絶対リスク減少1.2%,NNT 83。
・脳卒中
低用量aspirin群8.9%,プラセボ群11.4%に発症した(OR 0.75,95%CI 0.65-0.87,p<0.01)。絶対リスク減少2.5%,NNT 40。
・全死亡
低用量aspirin群10.1%,プラセボ群11.5%に発生した(OR 0.87,95%CI 0.76-0.98,p=0.03)。絶対リスク減少1.4%,NNT 71。
・大出血
低用量aspirin群1.6%,プラセボ群0.7%に発生した(OR 2.2,95%CI 1.4-3.4,p<0.01)。絶対リスク上昇0.9%,number needed to harm(NNH)111。
低用量aspirinを1000例に33ヵ月投与することにより,心血管イベント33例,非致死的MI 12例,非致死的脳卒中25例,死亡14例を予防し,出血イベント9例を引き起こす。
文献: Berger JS, et al. Low-dose aspirin in patients with stable cardiovascular disease: a meta-analysis. Am J Med 2008; 121: 43-9. pubmed
関連トライアル CHARISMA post hoc analysis, CHARISMA subgroup analysis, ECLAP, HOT post-hoc subgroup analysis, JPAD, LASAF Pilot Study, Physicians' Health Study 1991, SALT, WHS, 心血管疾患リスクを有する患者におけるaspirin+OAC併用とOAC単独投与の比較, 脳卒中/TIA既往患者におけるaspirin+dipyridamole併用とaspirin単独投与の比較, 非ST上昇型急性冠症候群に対する初期侵襲的治療および保存的治療の性差
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