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FINESSE Facilitated Intervention with Enhanced Reperfusion Speed to Stop Events
結論 ST上昇型心筋梗塞(MI)患者において,abciximab+reteplase半用量併用,またはabciximab単独を先に投与してから経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行すると,施行直前にabciximabを投与するPCIに比し,いずれも転帰を改善しなかった。
コメント 冠動脈の再灌流が早ければ早いほど予後がよくなることはすでに知られていた。そこでPCIよりも静注により早期再灌流が期待できる血栓溶解療法,GP IIb/IIIa受容体阻害薬が予後を改善すると期待された。しかし,本研究では予想に反して,これらの治療は予後を改善しなかった。むしろ出血性合併症の増加が示された。論理的に仮説を作ること以上に,臨床研究により仮説の検証を行うことの重要性が示されたこととなった。(後藤信哉

目的 ST上昇型MI患者において,abciximab +reteplase半用量併用,またはabciximab単独を先に投与してから施行するPCIが,施行直前にabciximabを投与するprimary PCIに比し,転帰を改善するか検討。一次エンドポイント:全死亡,ランダム化後48時間超経過後の心室細動,心原性ショック,90日以内の再入院/救急治療を必要とするうっ血性心不全の複合。二次エンドポイント:90日以内のMI,90日以内の全死亡,ランダム化60-90分後にベースライン時に比し70%超のST上昇改善。安全性のエンドポイント:非頭蓋内大/小出血,退院または第7日まで(どちらか早い方)の頭蓋内出血。
デザイン ランダム化,二重盲検,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設,20ヵ国(ヨーロッパ,北米,アルゼンチン,イスラエル,南アフリカ)。
期間 ランダム化期間は2002年8月-2006年12月(患者登録の遅れなどのため,予定の3000例を待たず早期に試験終了)。
対象患者 2452例。心虚血の症状または徴候の発現から6時間以内,急性MIを示唆するST上昇があり,線溶療法またはPCI施行の適格性を有し,ランダム化から診断的カテーテル施行までの予定時間が1-4時間の患者。
【除外基準】低リスク(60歳未満,ST上昇が認められるのが下壁のみ),heparin 40U/kg超の投与をすでに受けているか,または他の出血リスクを有する。
【患者背景】平均年齢は併用療法facilitated PCI群62.5±11.4歳,abciximab-facilitated PCI群61.9±11.8歳,primary PCI群62.6±11.4歳。各群の女性25.7%,26.4%,26.4%。
治療法 併用療法facilitated PCI群(828例)*1,abciximab-facilitated PCI群(818例)*2,primary PCI群(806例)*3にランダム化。
*1:abciximab 0.25mg/kg静注+reteplase投与(75歳未満は5Uボーラス投与の30分後に再度同量投与,75歳以上は5Uを1回投与のみ)。
*2:abciximab 0.25mg/kgボーラス静注。
*3:PCI施行直前にabciximab 0.25mg/kgボーラス静注。

サブ解析のため,登録施設は低分子量heparinまたは未分画heparinのどちらかを使用。出血リスク抑制のため,未分画heparinは40U/kg(最大量3000U,活性化凝固時間の目標は200-250秒)までに制限。低分子量heparin使用施設では,enoxaparin 0.5mg/kg静注および0.3mg/kg皮下注(活性化凝固時間の目標なし)。
全例にaspirin 81-325mg経口または250-500mg静注投与。PCIが最大2時間遅れた場合を除き,abciximab,heparin投与は開始しなかった。患者の心カテーテル室への移送は迅速に行い,手技は施設の標準により施行。PCI後,全例にabciximab 0.125μg/kg/分(最大10μg/分)を12時間投与。
追跡完了率 90日後の追跡完了は併用療法facilitated PCI群98.2%,abciximab-facilitated PCI群99.0%,primary PCI群98.4%。
【脱落理由】―
結果

●評価項目
PCI施行は92.0%(併用療法facilitated PCI群756例,abciximab-facilitated PCI群754例,primary PCI群739例),door-to-balloon時間中央値は全群とも2.2時間。
60-90分後の70%超のST上昇改善が得られた患者は併用療法facilitated PCI群43.9%と,abciximab-facilitated PCI群33.1%(p=0.01),primary PCI群31.0%(p=0.003)に比し多かった。
90日後の複合エンドポイントは9.8% vs 10.5% vs 10.7%と有意差は認められなかった(p=0.55)。個々の要素の発症率も有意差は認められなかった;全死亡5.2% vs 5.5% vs 4.5%,ランダム化後48時間超経過後の心室細動0.6% vs 0.2% vs 0.4%,心原性ショック5.3% vs 4.8% vs 6.8%,90日以内の再入院/救急治療を必要とするうっ血性心不全1.9% vs 2.9% vs 2.2%。また,90日以内のMI再発は2.1% vs 2.0% vs 1.9%。

●有害事象
非頭蓋内大出血は4.8% vs 4.1% vs 2.6%,非頭蓋内小出血は9.7% vs 6.0% vs 4.3%と,いずれも併用療法facilitated PCI群でprimary PCI群に比し多かった(p<0.05)。退院または第7日までの頭蓋内出血は0.6% vs 0% vs 0.1%。

文献: Ellis SG, et al; FINESSE Investigators. Facilitated PCI in patients with ST-elevation myocardial infarction. N Engl J Med 2008; 358: 2205-17. pubmed
関連トライアル AbESTT, AbESTT-II, AbESTT-II wake-up stroke, APEX-AMI atrial fibrillation, BRAVE-3, CARESS-in-AMI , EPIC 1997, ExTRACT-TIMI 25 PCI, HORIZONS-AMI , ISAR-REACT 4, JEPPORT, Kereiakes DJ et al 2001, MULTISTRATEGY, NICE (NICE 1 and NICE 4), RAPPORT, SPEED(GUSTO-IV Pilot), STREAM, TARGET, TRANSFER-AMI
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