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HORIZONS-AMI Harmonizing Outcomes with Revascularization and Stents in Acute Myocardial Infarction
結論 primary経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行するST上昇型心筋梗塞(MI)患者において,bivalirudinはheparin+GP IIb/IIIa受容体阻害薬(GPI)併用に比し,30日後の大出血および正味の有害イベント発生率を低下させた。
コメント 米国人は日本人に比較して血栓性が高いためか,従来から本邦では使用されていないGP IIb/IIIa受容体阻害薬が使用されていた。ヘパリンとGP IIb/IIIa受容体阻害薬を併用した場合よりも選択的抗トロンビン薬であるヒルログ(ビバリルジン)単剤使用の方が出血合併症が少ないとされた。日本で使用されている選択的トロンビン阻害薬アルガトロバンに比較してヒルログは可逆性が少ない。日本人でも同様のメリットがあるか否か興味深い。逆に言えば,日本には日本企業の開発したアルガトロバンという選択的トロンビン阻害薬があるため,アルガトロバンの有効性と安全性の検証も興味深い。(後藤信哉

目的 ST上昇型MI患者において,bivalirudinの安全性と有効性をheparin+GPI併用と比較。30日の一次エンドポイント:冠動脈バイパス術に関連しない大出血,有害イベント(大出血または主要有害心イベント[MACE;死亡,再梗塞,虚血による標的血管血行再建術,脳卒中を含む]の複合)。
デザイン PROBE(prospective,randomized,open,blinded-endpoint),intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(123施設),11ヵ国(ヨーロッパ,米国,アルゼンチン,イスラエル)。
期間 ランダム化期間は2005年3月25日-2007年5月7日。
対象患者 3602例。症状発現から12時間以内で,隣り合う複数の部位で1mm以上のST上昇,新規の左脚ブロック,真性後壁心筋梗塞を有する18歳以上の患者。
【除外基準】今回の入院における血栓溶解薬,bivalirudin,GPI,低分子量heparin,fondaparinuxの投与(未分画heparinは許可);warfarin投与中;出血性素因,凝血障害,heparin誘発性血小板減少症,intracerebral mass,動脈瘤,動静脈の先天性異常,出血性脳卒中の既往;6ヵ月以内の脳卒中または一過性脳虚血発作,あるいは永続性神経学的欠損;2ヵ月以内の消化管または泌尿生殖器出血;6週以内の大手術;既知の血小板数<10万/mm3またはヘモグロビン<10g/dL,登録後6週以内にthienopyridineの中断を必要とする待機的外科手技を予定;30日以内の冠ステント植込みなど。
【患者背景】年齢中央値(範囲)は対照群60.7(21.6-91.6)歳,bivalirudin群59.8(26.0-92.3)歳。各群の男性76.1%,77.1%。
治療法 bivalirudin群*1(1800例),対照群*2(1802例。heparin+GPI併用投与)にランダム化。
梗塞関連部位の開存回復後,paclitaxel溶出性ステントとベアメタルステントに再度3:1でランダム化(本論文にはステントについての結果の記載はなし)。
*1:bivalirudin 0.75mg/kgボーラス静注,その後1.75mg/kg・時投与。heparinが投与された場合は30分後に投与開始(ただし全例がPCI前)。PCI後血流再開がみられないか巨大血栓が認められる場合のみGPIを投与。
*2:heparinは60IU/kg(活性化凝固時間が200-250秒となるよう)ボーラス静注。GPIはPCI前に全例に投与。

bivalirudin,heparinとも血管造影またはPCI終了時に中止。ただし臨床的に適応である場合は低用量投与を継続。腎機能障害レベルにあわせたabciximab(0.25mg/kgボーラス投与後,0.125μg/kg・分[最大10μg/分]),またはeptifibatide(180μg/kgボーラス投与10分後に同量を再度ボーラス投与,その後2.0μg/kg・分投与[最大量は規定せず])投与は治験責任医師の裁量により許可し,abciximab は12時間 ,eptifibatideは12-18時間継続。
aspirinは324mg経口または500mg静注を緊急治療室にて投与し,入院期間中は300-325mg/日を経口投与,退院後は75-81mgを無期限に投与。clopidogrel負荷用量300または600mg(用量は治験責任医師の裁量による。clopidogrelアレルギーを有する場合はticlopidine 500mg)をカテーテル施行前に投与。その後最低6ヵ月間(1年以上を推奨)75mg/日経口投与。
追跡完了率 ランダム化後の同意撤回はbivalirudin群10例,対照群9例,追跡不能は13例 vs 15例。
【脱落理由】―
結果

●評価項目
primary PCI施行はbivalirudin群93.2%,対照群92.2%,deferred PCI 0.3%,0.2%,CABG 1.3%,2.2%,薬物治療5.2%,5.4%。
GPI投与は7.2%,94.5%。
有害イベントはbivalirudin群166例(9.2%)と,対照群218例(12.1%)に比し少なかった(相対リスク[RR]0.76,95%CI 0.63-0.92,p=0.005)。これは大出血の差(89例[4.9%]vs 149例[8.3%],RR 0.60,95%CI 0.46-0.77,p<0.001)によるもので,MACEの発生率は同等であった(98例[5.4%]vs 99例[5.5%],RR 0.99,95%CI 0.76-1.30,p=0.95)。全死亡(2.1% vs 3.1%,p=0.047),心臓死(1.8% vs 2.9%,p=0.03)はいずれもbivalirudin群の方が少なかったが,他は同等であった;再梗塞1.8% vs 1.8%(p=0.90),標的血管血行再建術2.6% vs 1.9%(p=0.18),脳卒中0.7% vs 0.6%(p=0.68)。
ステント植込みを受けた3124例において,ステント血栓症は,24時間以内では21例(1.3%)vs 4例(0.3%)(p<0.001)とbivalirudin群の方が多かったが,30日後では39例(2.5%)vs 30例(1.9%)(p=0.30)と有意差は認められなかった。

●有害事象

文献: Stone GW, et al.; HORIZONS-AMI Trial Investigators. Bivalirudin during primary PCI in acute myocardial infarction. N Engl J Med 2008; 358: 2218-30. pubmed
関連トライアル ACUITY, ACUITY 1-year results, ACUITY bivalirudin, ACUITY diabetes mellitus, ACUITY gastrointestinal bleeding, ACUITY GP IIb/IIIa inhibitors , ACUITY switching to bivalirudin, ExTRACT-TIMI 25, GUSTO IIb 1996, HAS, ISAR-REACT 3, ISAR-REACT 3 bleeding and MI, ISAR-REACT 4, PRISM-PLUS 1998, PURSUIT 1998, STEEPLE, TACTICS-TIMI 18 2001, TAO, TRANSFER-AMI
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