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ENDORSE Epidemiologic International Day for the Evaluation of Patients at Risk for Venous Thromboembolism in the Acute Hospital Care Setting
結論 多数の入院患者が静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを有しているが,適切な予防療法の実施率は低い。適切な予防療法が行われるよう,病院全体で対応策を講じるべきである。
コメント 本研究は,大規模国際データベースにより,急性期入院患者において肺塞栓症の背景病態となる静脈血栓塞栓症(VTE)のハイリスク群の頻度と,予防状況を調査した研究である。入院患者でDVTリスクにさらされている患者の割合は1/2に及び,その1/2が推奨される予防療法を受けていないことを大規模調査において明らかにした点が重要である。VTEハイリスク群のうち,出血リスクがあると考えられた群は約10%に過ぎず,VTE予防が不十分な理由の主なものではない。
特に,外科系患者に比べ,内科系患者にVTE予防療法が行われていない場合が多い。ハイリスクの原因となる主要な内科系疾患は癌と虚血性脳卒中患者であるが,これらでVTE予防治療を受けている割合は37%にとどまっている。
これまで,わが国においては深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症は少ないとされていたが,近年増加傾向にある。現在,予防的VTE治療としては,整形外科領域の外科治療時が主である。うっ血性心不全や脳卒中などの循環器疾患の急性期において,集中治療室での臥床を余儀なくされる内科系疾患は,米国胸部疾患学会(ACCP: American College of Chest Physicians)が2004年に刊行した「静脈血栓塞栓予防」ガイドラインにおいてはハイリスク群に同定されている。わが国においてはまだ,これらの病態に対してVTE予防の有用性とリスクを検討するエビデンスが不足しているが,現時点では,少なくともVTEのリスクが高いことを念頭に,急性期の患者管理をしていく必要がある。
苅尾七臣

目的 救急病院におけるVTEリスク保有率を評価し,効果的な予防療法を受けている患者の割合を調査。
デザイン 観察研究。
セッティング 多施設(358施設)。32ヵ国(ヨーロッパ,アフリカ,アジア,北米,南米,オセアニア)。
期間 登録期間は2006年8月-2007年1月。
対象患者 68183例。内科的疾患/慢性疾患の再燃の治療,重大な定期的外科処置の予定のため,50床以上の施設の急性内科/外科疾患患者を対象とする診療科(内科病棟[40歳以上]および外科病棟[18歳以上])に入院した患者。施設の選択はランダムに行われたが,一部の国では参加適格リストから選択された。
【除外基準】非急性/単科専門病院,精神科/小児科/眼科/耳鼻咽喉科/皮膚科/アルコール・麻薬治療/リハビリテーション/事故緊急/産科/慢性疾患/緩和ケア病棟の入院患者,VTE治療のための入院。
【患者背景】[内科患者]平均年齢はVTEリスク基準合致群70.0(58.0-79.0)歳,非合致群66.0(54.0-76.0)歳。各群の女性47%,51%。BMI 26.0,25.9。
[外科患者]平均年齢はVTEリスク基準合致群60.0(47.0-73.0)歳,非合致群55.0(39.0-70.0)歳。各群の女性47%,49%。BMI 26.2,25.4。
治療法 2004 American College of Chest Physicians(ACCP)ガイドライン(Chest 2004;126:338S-400S)にしたがいVTEリスクを評価。
追跡完了率
結果

●評価項目
[内科患者37356例]
VTEリスク基準合致15487例(41.5%),非合致21869例。
入院前のVTEリスク因子は,慢性肺疾患27%,慢性心不全25%,肥満11%など。
ACCPが推奨する予防療法を受けていた者は6119例(39.5%,95%CI 38.7-40.3,範囲3.1[バングラディシュ]-70.4[ドイツ])であった。何らかの抗凝固薬投与を受けた者は43%(低分子量heparin 30%,未分画heparin 9%,ビタミンK拮抗薬4%など)。
[外科患者30827例]
VTEリスク基準合致19842例(64.4%),非合致10985例。
入院前のVTEリスク因子は,慢性肺疾患8%,慢性心不全9%,肥満10%など。
ACCPが推奨する予防療法を受けていた者は11613例(58.5%,95%CI 57.8-59.2,範囲0.2[タイ]-92.1[ドイツ])であった。何らかの抗凝固薬投与を受けた者は55%(低分子量heparin 46%,未分画heparin 8%,ビタミンK拮抗薬2%など)。

●有害事象

文献: Cohen AT, et al; ENDORSE Investigators. Venous thromboembolism risk and prophylaxis in the acute hospital care setting (ENDORSE study): a multinational cross-sectional study. Lancet 2008; 371: 387-94. pubmed
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