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MELT Japan Middle Cerebral Artery Embolism Local Fibrinolytic Intervention Trial Japan
結論 本試験はrt-PA静注療法の認可を受けて早期に中止されたため,一次エンドポイントの有意差は認められなかったが,発症から6時間以内の中大脳動脈(MCA)閉塞患者において,UK局所動注は機能転帰を改善する可能性が高いことが示唆された。
コメント 登録症例数の少なさ,PROBE法による種々のバイアスを考慮する必要があるものの,マイクロカテーテルを用いた経動脈的UK線溶療法がMCA閉塞患者の高い再開通率とともに機能転帰を改善させる可能性が高いことが示唆された。適応基準における虚血領域の限定などにより繊細な注意が払われている。発症3時間を超える,脳主幹動脈閉塞を伴う虚血性脳血管障害患者に対する経動脈的血栓溶解療法に期待を抱かせる論文で,より大規模な臨床研究が望まれる。(岡田靖

目的 発症から6時間以内の症候性MCA閉塞患者において,urokinase(UK)動注の安全性と有効性を評価。一次エンドポイント:90日後の良好な転帰(modified Rankin Score[mRS]0-2)の割合。二次エンドポイント:治療開始24時間以内の症候性頭蓋内出血,90日の全死亡,MCA再開通率,24時間後,30日後,90日後のNational Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア0または1の割合,30日後,90日後のBarthel Index 95以上の割合,30日後,90日後のmRS 0または1の割合,CTにおける出血の所見。
デザイン PROBE(prospective,randomized,open,blinded-endpoint),intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(57施設),日本。
期間 登録期間は2002年1月-2005年10月(虚血性脳卒中超急性期[発症から3時間以内]のrt-PA静注療法が認可されたため,患者登録を予定より早期に中止)。追跡期間は90日。
対象患者 114例。20-75歳;MCA領域の局所神経症状の初発で,発症6時間以内に線溶薬投与開始;NIHSS 5点以上(ただし治療前に急速な改善が認められた者は除く);CTでは変化を認めないか,島皮質,前頭葉弁蓋,側頭葉弁蓋,レンズ核に軽微な初期虚血変化の徴候を認めるのみで,CTから2時間以内に治療を開始できる者。[血管造影の基準]中大脳動脈(M1またはM2)の完全閉塞。
【除外基準】[臨床の基準]昏睡;NIHSS>22;発症時に痙攣を認めた者,発症前よりmRS 3以上の障害を有する;脂肪塞栓または心内膜炎と推定;血小板数<10万/mm3;48時間以内のheparin投与(施設基準値の上限を超えるか,もしくは投与前の1.5倍超);warfarin投与の場合プロトロンビン時間国際標準比(INR)>1.7;入院後すでに他の線溶薬,ozagrel,argatroban,またはUKが投与されている:頭蓋内出血または重篤な頭部外傷,消化管出血などの既往;3ヵ月以内の脳卒中の既往(一過性脳虚血発作は対象とする);頭蓋内新生物;180/100mmHg未満を維持するために降圧薬を必要とする非代償性高血圧など。[CTの基準]出血;頭蓋内腫瘍の存在;動脈瘤の存在の疑い;静脈血栓など。[血管造影の基準]MCA以外の動脈の閉塞;もやもや血管または動脈乖離;閉塞近位部の重篤な狭窄;脳動脈瘤など。
【患者背景】平均年齢はUK群66.9±9.3歳,対照群67.3±8.5歳。各群の男性64.9%,64.9%。NIHSS 14.0,14.0。発症から入院まで68分,79分,発症からランダム化まで199分,206分。閉塞部位:M1 68.4%,73.7%,M2 31.6%,26.3%。
治療法 シース導入前にheparin 5000IU静注。マイクロカテーテルは血塊を通過させ,血栓の遠位部に位置。マイクロカテーテルの血塊通過が不可能な場合は,血塊またはMIへの注入を許可。より近位部への注入は禁止。血塊の機械的破砕はガイドワイヤーにより行う場合のみ許可。
UK群(57例):総用量が60万IUになるか,注入開始から2時間経過するか,完全再開通が得られるまで,UK 12万IU/5分を繰り返し動注。
対照群(57例):通常の薬物治療。
頭蓋内圧が高い場合は浸透圧性利尿薬を投与。両群とも線溶薬静注は禁止。UK群での24時間以内の抗血栓薬(heparin,warfarin,aspirin,ticlopidine)を除き,認可されている薬物治療,リハビリテーションはすべて可とした。
追跡完了率 100%。
【脱落理由】―
結果

●評価項目
一次エンドポイント(90日後のmRS 0-2)はUK群28例(49.1%)と対照群22例(38.6%)に比し多かったが,有意差は認められなかった(オッズ比1.54,95%CI 0.73-3.23,p=0.345)。
二次エンドポイントは,90日後のmRS 0または1は24例(42.1%)vs 13例(22.8%)(p=0.045),90日後のNIHSSスコア0または1は20例(35.1%)vs 8例(14.0%)(p=0.017)と,いずれもUK群の方が多かった。90日後のBarthel Index 95以上は28例(49.1%)vs 19例(33.3%)とUK群の方が多かったが,有意差は認められなかった(p=0.087)。
90日の全死亡は3例(5.3%)vs 2例(3.5%)とUK群の方が多かったが,有意差は認められなかった(p=1.000)。内訳は,UK群では頭蓋内出血,脳卒中再発,悪性腫瘍各1例,対照群は腎不全,敗血症各1例。
UK群の一部または完全再開通は42例(73.7%)に認められた。内訳は,完全再開通3例,≧50% 27例,<50% 12例。

●有害事象
24時間以内の頭蓋内出血は5例(9%)vs 1例(2%)とUK群の方が多かったが,有意差は認められなかった(p=0.206)。

文献: Ogawa A, et al.; MELT Japan Study Group. Randomized trial of intraarterial infusion of urokinase within 6 hours of middle cerebral artery stroke: the middle cerebral artery embolism local fibrinolytic intervention trial (MELT) Japan. Stroke 2007; 38: 2633-9. pubmed
関連トライアル CLOTBUST , ECASS-II blood pressure, Engelter ST et al, J-ACT, Mattle HP et al, MERCI and Multi MERCI, Mikulik R et al 2007, PREVAIL subanalysis, SAINT postthrombolysis ICH, Schellinger PD et al, SITS-ISTR blood pressure, SITS-MOST multivariable analysis, SUMO, Toni D et al, TPA Bridging Study, 虚血性脳卒中患者に対する動注血栓溶解療法の有用性
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