抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
AbESTT-II Abciximab Emergent Stroke Treatment Trial-II
結論 脳梗塞患者において,abciximab静脈内投与の安全性と有効性はいずれのエンドポイントまたは治療開始時間別の解析においても示されず,症状発現後5時間以内に治療を受けた患者では症候性/致死的頭蓋内出血(ICH)発症率の上昇がみられた。
コメント 強力な抗血小板作用を有するアブシキシマブ静注投与は複数のコホートの急性期脳梗塞患者のいずれの解析においても有効性が示せず,発症5時間以内の群で症候性頭蓋内出血を有意に増加させた。このことは,静注アブシキシマブ療法について,すべての急性期脳梗塞に対する有効性の検討をただちに断念するということではないが,より適格な対象の検討やプロトコル,投与量の見直しなど多くの課題を解決する必要がある。(岡田靖

目的 脳梗塞患者において,abciximab早期投与の安全性と有効性を検討。有効性の一次エンドポイント : 開始時のNational Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコアを考慮した3ヵ月後のmodified Rankin Score[mRS]。二次エンドポイント : 3ヵ月後の神経学的回復(NIHSS 0-1)または死亡率,5日以内/入院期間内の症状進行または神経学的回復,3ヵ月後の脳卒中再発,3ヵ月後のmRS,Barthel Index,NIHSSスコア。安全性の一次エンドポイント:脳卒中後5日以内/入院期間内の致死的/非致死的症候性ICH。二次エンドポイント:3ヵ月以内の症候性ICH,5日以内/入院期間内または3ヵ月後のCT所見による無症候性ICH,5日以内/入院期間内の血小板減少症,5日以内/入院期間内の非ICH。
デザイン ランダム化,二重盲検,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(112施設)。17ヵ国(ヨーロッパ,北米,南米,南アフリカ,オーストラリア)。
期間 登録期間は2003年12月-2005年9月(abciximab群で症候性ICHの発症率が予測より高かったため,予定より早期に中止)。追跡期間は3ヵ月。
対象患者 801例。18歳以上の脳梗塞患者で,NIHSSスコア4-22の者。
【除外基準】rt-PA静脈内投与,出血のCT所見,他の重篤な疾患,身体障害者,開始時の凝固検査異常など。
【患者背景】平均年齢,性別(男性/女性)はabciximab群(主要コホート68.0±14.1歳,118/103例,5時間以降6時間以内投与コホート69.4±12歳,100/60例,覚醒時脳卒中コホート68.6±12.4歳,13/9例),プラセボ群(70.2±13.1歳,121/97例,67.9±13.9歳,73/86例,70.5±11.6歳,16/5例)。
治療法 abciximab群(主要コホート*1:221例,5時間以降6時間以内投与コホート*2:160例,覚醒時脳卒中コホート*3:22例。0.25mg/kgボーラス投与後,0.125μg/kg/分[最大10μg/分]を12時間投与),プラセボ群(218例,159例,21例)にランダム化。

*1:症状発現から5時間以内に治療を受けた患者。
*2:症状発現から5時間以降6時間以内に治療を受けた患者。
*3:覚醒時の脳卒中症候発現後3時間以内に治療を受けた患者。

aspirinなどの抗血栓薬は,ランダム化後36-48時間のフォローアップCT後,担当医の裁量により投与。深部静脈血栓症予防のための機械的方法は,試験中いずれの時点においても可とした。リハビリテーションなどその他の介入を奨励。
追跡完了率 追跡不能は7例。
結果

●評価項目
[主要コホート]
3ヵ月後の良好な転帰はabciximab群71例(32.1%),プラセボ群72例(33.0%)で,有意差はみられなかった(p=0.944)。開始時NIHSS 4-7の者では33.3% vs 34.7%(p=0.843),8-14では37.1% vs 44.6%(p=0.363),15-22では22.4% vs 9.3%(p=0.089)。
3ヵ月後の神経学的回復は96例(43.4%)vs 92例(42.2%)(p=0.794)と有意差は認められなかった。
3ヵ月後の死亡は35例(15.8%)vs 25例(11.5%)と,abciximab群で多かったが有意差は認められなかった(p=0.167)。内訳はICH 11例 vs 0例,原発脳卒中6例 vs 9例,脳卒中再発3例 vs 0例。
5日以内の脳卒中進行は17例 vs 19例,3ヵ月後の脳卒中再発は7例 vs 3例。
3ヵ月後のmRS 0-1は94例 vs 97例(p=0.679),Barthel Indexスコア≧95は126例 vs 124例(p=0.978)。
症候性ICHは ,5日以内は 12例(5.5%)vs 1例(0.5%)とabciximab群で多かった(p=0.002)。うち致死的は8例 vs 0例(p=0.004)。3ヵ月後でも14例(6.5%)vs 1例(0.5%)とabciximab群で多かった(p<0.001)。うち致死的は10例 vs 0例。
無症候性ICHは,5日以内では21例(9.7%)vs 15例(6.9%)(p=0.297),3ヵ月後では25例(11.5%)vs 16例(7.4%)(p=0.140)で,いずれもabciximab群で多いものの有意差は認められなかった。
5日以内の血小板減少症は6例(2.8%)vs 0例(p=0.014),5日以内の全出血は15例(7.0%)vs 7例(3.3%)(p=0.080)。
[5時間以降6時間以内投与コホート]
3ヵ月後の良好な転帰は41例(25.6%)vs 37例(23.3%)で,有意差は認められなかった(p=0.625)。開始時NIHSS 4-7の者では27.4% vs 14.9%(p=0.063),8-14では25.0% vs 33.9%(p=0.300),15-22では22.6% vs 24.1%(p=0.887)。
3ヵ月後の死亡は18例(11.3%)vs 17例(10.7%)(p=0.887)と同等であった。内訳は原発脳卒中4例 vs 7例。
症候性ICHは,5日以内は3例(1.9%)vs 1例(0.6%)とabciximab群で多かったが,有意差は認められなかった(p=0.309)。うち致死的は2例 vs 1例。3ヵ月後は4例(2.5%)vs 3例(1.9%)(p=0.690),うち致死的は2例 vs 3例。
無症候性ICHは,5日以内では14例(8.9%)vs 18例(11.3%)(p=0.480),3ヵ月後では15例(9.5%)vs 19例(11.9%)(p=0.493)と,いずれも有意差は認められなかった。
5日以内の血小板減少症は4例(2.5%)vs 0例(p=0.043),5日以内の全出血は6例(3.8%)vs 6例(3.8%)(p=0.982)。
[覚醒時脳卒中コホート]
3ヵ月後の良好な転帰は1例(4.5%)vs 3例(14.3%)で,プラセボ群で多いものの,有意差は認められなかった(p=0.272)。開始時NIHSS 4-7の者では14.3% vs 11.1%(p=0.849),8-14では0% vs 25.0%(p=0.080),15-22では0% vs 0%(p=NA)。
3ヵ月後の死亡は6例(27.3%)vs 3例(14.3%)で,abciximab群で多かったが,有意差は認められなかった(p=0.298)。内訳はICH 3例 vs 1例,脳梗塞1例 vs 0例。
症候性ICHは,5日以内は3例(13.6%)vs 1例(5.0%)とabciximab群で多かったが,有意差は認められなかった(p=0.347)。うち致死的は2例 vs 1例。3ヵ月後では4例(18.2%)vs 1例(5.0%)(p=0.193),うち致死的は3例 vs 1例。
無症候性ICHは,5日以内では2例(9.1%)vs 0例(p=0.172),3ヵ月後では2例(9.1%)vs 0例(p=0.172)。
5日以内の血小板減少症は1例(4.5%)vs 0例(p=0.340),5日以内の全出血は3例(13.6%)vs 0例(p=0.090)。

●有害事象
重篤な有害事象は主要コホート62例 vs 61例,5時間以降6時間以内投与コホート48例 vs 57例で,多くは神経または血管に関するものであった。覚醒時脳卒中コホートでは6例 vs 7例で,多くは心房性不整脈によるものであった。

文献: Adams HP, et al.; AbESTT-II Investigators. Emergency administration of abciximab for treatment of patients with acute ischemic stroke: results of an international phase III trial: Abciximab in Emergency Treatment of Stroke Trial (AbESTT-II). Stroke. 2008; 39: 87-99. pubmed
関連トライアル AbESTT, AbESTT-II wake-up stroke, ASP, BRAVE-3, ECASS, ECASS III, EPIC 1997, EPIC 1997, EPIC 1998, FINESSE, ISAR-REACT 4, JEPPORT, MULTISTRATEGY, NINDS rt-PA Stroke Study 1995, RAPPORT, SAINT postthrombolysis ICH, SITS-MOST multivariable analysis, SPEED(GUSTO-IV Pilot), TRA 2P-TIMI 50 prior ischemic stroke
関連記事