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SYNERGY Superior Yield of the New Strategy of Enoxaparin, Revascularization and Glycoprotein IIb/IIIa Inhibitors
結論 高リスクの非ST上昇型急性冠症候群(ACS)患者において,enoxaparinは未分画heparin(UFH)に比し優位性はなかったが,非劣性を示した。enoxaparinはUFHの代替療法として安全かつ有効であり,利点としての簡便性は大出血のわずかな増加と比較考量すべきである。

目的 早期侵襲的治療を受ける,虚血性心合併症高リスクの非ST上昇型ACS患者において,既定のガイドラインにもとづく治療法(GP IIb/IIIa受容体拮抗薬[GPI],aspirin,clopidogrelを含む)と併用してenoxaparinまたはUFHを投与し,その有効性と安全性を比較。有効性の一次エンドポイント:ランダム化後30日間の全死亡+非致死的心筋梗塞(MI)の複合。安全性の一次エンドポイント:大出血,脳卒中。
デザイン PROBE(prospective,randomised,open,blinded endpoints),非劣性試験(非劣性基準:95%CI上限<1.1),intention-to-treat解析(有効性),per-protocol解析(安全性)。
セッティング 多施設(467施設)。12ヵ国(南米,北米,ヨーロッパ,オセアニア,トルコ)。
期間 登録期間は2001年8月-2003年12月。
対象患者 10027例。登録前24時間に10分以上持続する虚血症状が発症し,以下の2項目以上に該当する患者:年齢60歳以上,トロポニンまたはクレアチンキナーゼの正常値上限を超える上昇,心電図上のST変化。
【除外基準】最近(<48時間)の脊髄/硬膜外の麻酔/穿刺の実施または予定,24時間以内の経皮的冠動脈形成術(PCI)または血栓溶解療法,最近の脳卒中/手術による出血性合併症リスクの上昇,国際標準比(INR)の上昇(>1.5),過去または現在の出血性疾患,クレアチニンクリアランス<30mL/分など。
【患者背景】年齢中央値(範囲)は両群とも68(61-75)歳。女性はenoxaparin群34.0%,UFH群33.8%。各群の診断的冠動脈造影施行92.1%,92.0%,PCI施行46.5%,47.4%,冠動脈バイパス術(CABG)施行19.3%,18.0%。
治療法 enoxaparin群*1(4993例),UFH群(4985例)*2にランダム化。
試験薬の投与はランダム化後ただちに開始し,血管造影および血行再建を経て,担当医が抗凝固療法は不要と判断するまで継続。
*1:1mg/kgを12時間ごとに皮注。enoxaparin投与後随時カテーテルを挿入し,シースの抜去は最終投与6-8時間以上後とした。バルーン拡張が投与から8時間未満の場合はPCI中の追加投与は行わず,8時間以上の場合はPCI前に0.3mg/kgを静注。PCI中にenoxaparin静注を行わない場合,シースの抜去は最終投与6-8時間以上後とし,静注を行った場合は4-6時間以上後とした。
*2:60U/kg(最大5000U)ボーラス投与後,初回用量12U/kg/時(最大1000U/時)を静注(目標活性部分トロンボプラスチン時間正常値上限の1.5-2.0倍または50-70秒)。UFH投与中にカテーテルを挿入し,活性化凝固時間(ACT)が150-180秒の時シースを抜去した。PCI中はUFHの投与を中止し,ACT 250秒(GPIを投与している場合はこれより短い)または各施設のACT基準値を達成するまで追加静注を行った。

ランダム化前に低分子量heparinまたはUFHの投与を受けた患者についても試験登録可とし,ランダム化は事前の抗トロンビン薬投与とは無関係に行った。待機的CABGを行う場合は,enoxaparin 群は8時間以上前,UFH群は6時間以上前に試験薬の投与を中止した。緊急CABGの場合は両群とも試験薬の投与を中止し,最終投与の時期を考慮せず手術を行った。
全例にランダム化時からaspirin 162-325mg/日の投与を開始。アレルギーまたは禁忌の場合はclopidogrel 75mgを投与し,その後75mg/日投与。GPI投与は推奨されたが必須ではなかった。その他の薬剤の使用については医師の裁量にもとづいて行った。
追跡完了率 追跡不能はenoxaparin群11例,UFH群13例。
【脱落理由】合意撤回5例 vs 7例,行方不明5例 vs 4例など。
結果

●評価項目
一次エンドポイントはenoxaparin群696例(14.0%),UFH群722例(14.5%)(ハザード比[HR]0.96,95%CI 0.86-1.06,p=0.40)で,enoxaparinはUFHに比し優位ではなかったが,非劣性基準を満たした。死亡は160例(3.2%)vs 153例(3.1%)(p=0.71),MIは580例(11.7%)vs 627例(12.7%)(p=0.14)。
PCI中の虚血イベントは,enoxaparin群とUFH群間に差はみられなかった;急性閉塞31例(1.3%)vs 40例(1.7%),切迫性急性閉塞25例(1.1%)vs 24例(1.0%),PCI不成功81例(3.6%) vs 79例(3.4%),急性CABG 6例(0.3%)vs 8例(0.3%)。
一貫して同じ試験薬投与を受けたサブグループ(6138例,ランダム化前に抗トロンビン薬投与を受けなかったか,ランダム化前/後とも同じ抗トロンビン薬を投与された者)においては,一次エンドポイントは450例(13.3%)vs 433例(15.9%)(HR 0.82,95%CI 0.72-0.94)とenoxaparin群の方が少なかった。

●有害事象
出血はenoxaparin群で多く,TIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)分類による大出血は453例(9.1%)vs 379例(7.6%)とenoxaparin群で多かったが(p=0.008),GUSTO(Global Utilization of Streptokinase and t-PA for Occluded Arteries)分類による重篤な出血は136例(2.7%)vs 109例(2.2%)(p=0.08)と有意差は認められなかった。輸血も850例(17.0%)vs 796例(16.0%)と同等であった(p=0.16)。

文献: Ferguson JJ, et al., SYNERGY Trial Investigators Enoxaparin vs unfractionated heparin in high-risk patients with non-ST-segment elevation acute coronary syndromes managed with an intended early invasive strategy: primary results of the SYNERGY randomized trial. JAMA 2004; 292: 45-54. pubmed
関連トライアル AAASPS 2003, ACE , ACUITY, ACUITY bivalirudin, ACUITY GP IIb/IIIa inhibitors , ATACS-pilot, Boccara A et al, Cohen M et al, COURAGE, DUCCS-II, ERA, ESSENCE 1997, ESSENCE 1998, ESSENCE 2000, ExTRACT-TIMI 25, ExTRACT-TIMI 25 renal dysfunction, ExTRACT-TIMI 25 clopidogrel, ExTRACT-TIMI 25 PCI, FRAX.I.S, FRIC, FRISC II 2000, García E et al, GUSTO IIb 1996, GUSTO IIb 1997, GUSTO III, GUSTO-I 1998, HAS, Hochman JS et al, IST 2001, Matisse Study, MITI II, NICE (NICE 1 and NICE 4), OASIS Pilot Study 1997, OASIS-2, OPTIMIST, PCI-CLARITY, PREVAIL, Rabah MM et al, RESTORE, SYNERGY angiography, SYNERGY long-term outcomes, TACTICS-TIMI 18 2001, TIMI 11A, TIMI 11B, TIMI 9B, TIMI II 1992, TIMI IIIB 1994, TIMI IIIB 1995, van den Bos AA et al, VANQWISH
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