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STEEPLE Safety and Efficacy of Enoxaparin in Percutaneous Coronary Intervention Patients, an International Randomized Evaluation
結論 待機的経皮的冠動脈形成術(PCI)施行患者において,enoxaparin単回ボーラス静注は未分画heparin(UFH)投与に比し,出血率はほぼ同等(enoxaparin 0.5mg/kg投与)あるいは低く(0.75mg/kg投与),抗凝固レベル達成の予測可能性が高かった。enoxaparin 0.5mg/kg投与により死亡率がわずかに高い傾向が認められたが,理由は不明である。
コメント 低分子量ヘパリン(エノキサパリン)と未分画ヘパリンを待機的PCIの症例において比較した。低分子量ヘパリン使用群において抗凝固ターゲットにより速く到達したことは予想通りであった。出血/血栓イベントは未分画ヘパリンと差違を認めなかった。コストを考えると,明らかによいと言えない薬物をあえて選択する理由とはなり難い。(後藤信哉

目的 待機的PCI施行患者において,enoxaparinの安全性をUFHと比較。一次エンドポイント:PCI施行後48時間の冠動脈バイパス術(CABG)に関連しない大出血+小出血。二次エンドポイント: PCI施行開始/終了時における臨床的抗凝固達成率(enoxaparin群の目標値は抗Xa因子レベル0.5-1.8IU/mL,UFH群の目標値はGP IIb/IIIa受容体拮抗薬[GPI]併用例でACT200-300秒,非併用例でACT300-350秒)など。
デザイン ランダム化,オープン,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(124施設)。9ヵ国。
期間 登録期間は2004年1月-12月(enoxaparin 0.5mg/kg群にて他群に比し死亡が多かったため,2004年11月22日に登録中止)。追跡期間は30日。
対象患者 3528例。大腿動脈アプローチによる待機的PCI施行が予定されている18歳以上の患者。
【除外基準】最近の血栓症,段階的手技の予定例,出血リスク増大,PCI前の非経口抗血栓薬治療,試験薬に対する過敏症。
【患者背景】平均年齢はenoxaparin 0.5mg/kg群63.4±10.5歳, 0.75mg/kg群63.6±10.2歳,UFH群63.5±10.2歳。各群の男性74.7%,76.1%,74.0%。
治療法 enoxaparin 0.5mg/kg群(1070例),0.75mg/kg群(1228例),UFH群(1230例)にランダム化。GPI併用の有無により層別。
enoxaparin群:GPI併用の有無にかかわらず,シース挿入後,PCI直前,抗凝固モニタリングを行わずにenoxaparinを単回ボーラス静注。手技が2時間を超える場合は初回の半量の追加ボーラスを推奨。0.5mg/kg群ではPCI終了直後,0.75mg/kg群では4-6時間後,抗凝固モニタリングを行わずにシースを抜去。
UFH群:GPI併用例ではUFH 50-70IU/kg(目標ACT 200-300秒),非併用例では70-100IU/kg(目標ACT 300-350秒)をボーラス静注。PCI前および手技中に目標ACTの下限を下回った場合は追加ボーラス投与。ACT 150-180秒となった時点でシースを抜去。
全例にaspirin 75-500mg/日およびthienopyridineを投与。
追跡完了率 表記なし。
結果

●評価項目
一次エンドポイントはenoxaparin 0.5mg/kg群5.9%,0.75mg/kg群6.5%,UFH群8.5%に発生し,0.5mg/kg群はUFH群に比し低く(絶対差-2.6,相対低下率31%,95%CI -4.7--0.6,p=0.01),0.75mg/kg群に比しては,優越性の有意差はなかったものの,非劣性の基準には合致していた(絶対差-2.0,相対低下率24%,95%CI -4.0-0.0,p=0.051,非劣性マージン2.6%)。特に,CABGに関連しない大出血はenoxaparin 0.5mg/kg群1.2%,0.75mg/kg群1.2%,UFH群2.8%と,enoxaparin 群でUFH群に比し57%低下した(絶対差-1.6%,0.5mg/kg群p=0.004,0.75mg/kg群p=0.007)。なお,一次エンドポイントに関する多変量解析では,enoxaparin 0.75mg/kgではなくenoxaparin 0.5mg/kgが独立した変数であった(p=0.02)。
臨床的抗凝固達成率はenoxaparin 0.5mg/kg群78.8%,0.75mg/kg群91.8%で,UFH群19.7%に比し高かった(各p<0.001)。
術後48時間のCABGに関連しない大出血+術後30日間の全死亡+非致死的心筋梗塞(MI)+緊急標的血管血行再建(UTVR)は,enoxaparin 0.5mg/kg群6.9%,0.75mg/kg群7.7%で,UFH群8.2%に比し優越性の有意差はみられなかったが,非劣性の基準には合致した(非劣性マージン3.2%)。
術後30日間の全死亡+非致死性MI,術後30日間のUTVR+全死亡+非致死性MI,および個別のエンドポイントの発生率(術後48時間のCABGに関連しない大出血を除く)は,群間差は認められなかった。

●有害事象
輸血はenoxaparin 0.5mg/kg群5例(0.5%),0.75mg/kg群10例(0.8%),UFH群12例(1.0%)に認められた。
全死亡はenoxaparin 0.5mg/kg群10例(1.0%),0.75mg/kg群3例(0.2%),UFH群5例(0.4%)であった。0.5mg/kg群における死亡は治療に関連したものであったが,他群の死亡については,治療との関連はないと考えられた。

文献: Montalescot G, et al., STEEPLE Investigators Enoxaparin versus unfractionated heparin in elective percutaneous coronary intervention. N Engl J Med 2006; 355: 1006-17. pubmed
関連トライアル ACE , ACUITY, ACUITY 1-year results, ACUITY bivalirudin, ACUITY switching to bivalirudin, ATOLL, CIAO, Cohen M et al, ESSENCE 1997, ExTRACT-TIMI 25, FUTURA/OASIS-8, HORIZONS-AMI , ISAR-REACT 3, Matisse Study, NICE (NICE 1 and NICE 4), OASIS-5, PCI施行中におけるenoxaparinとUFHの比較, PREVAIL, Rabah MM et al, STEEPLE, STEEPLE anticoagulation level, SYNERGY, TAO, 長期VKA療法患者における周術期橋渡し療法
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