抗血栓トライアルデータベース
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ECASS European Cooperative Acute Stroke Study
結論 脳梗塞急性期における血栓溶解療法(静注)は,中等度~重度の神経障害を有する患者および登録時CT所見で広汎梗塞徴候が認められない患者において,一部の機能および神経症状改善に有効である。しかし,CTによる早期広汎梗塞の確定は困難であり,本治療に不適当な患者への治療は出血性合併症や死亡の増加を伴うため,すべての症例に対しては推奨されない。

目的 脳梗塞急性期における,rt-PA(recombinant tissue plasminogen activator)静注による血栓溶解療法の安全性と有効性を評価。
一次エンドポイント:90日後のBarthel Index(BI)およびmodified Rankin Scale(RS)スコア。二次エンドポイント:90日後のBI/RS複合スコア,Scandinavian Stroke Scale(SSS)スコアおよび30日後の死亡。
デザイン ランダム化,プラセボ対照,二重盲検,intention-to-treat解析,target population解析。
セッティング 多施設(欧州14ヵ国,75病院)。
ドイツ,オーストリア,スイス,イタリア,フィンランド,ノルウェー,スウェーデン,デンマーク,イギリス,オランダ,ベルギー,フランス,ポルトガル,スペイン。
期間 追跡期間は90日。1994年3月登録終了。試験期間は1992~1994年。
対象患者 620例。18~80歳(平均65歳)。中等度~重度の半球性脳卒中症候群(中等度~重度の半側不全麻痺,感覚障害,構音障害,非流暢性失語,半側視野欠損)の患者。登録時CT所見で重篤な初期梗塞の徴候がなく,脳卒中発症後6時間以内に治療開始が可能な例。
【除外基準】半身麻痺,意識障害および/またはforced head and eye deviationなど重篤な半球性脳卒中症候群,およびSSS スコア>50,重度の神経障害の既往など。
治療法 rt-PA投与群(313例)とプラセボ群(307例)にランダム化。
rt-PA群:rt-PA 1.1mg/kg(体重補正)を100mgを上限として投与。全投与量の10%を1~2分でボーラス投与し,残量を60分間静注。heparin静注,経口抗凝固薬,血液粘度低下薬,脳保護処置は安全性を考慮し,治療開始後24時間は投与禁止。その後のheparin静注は担当医の裁量に委ねた。
エンドポイントの他,有効性のパラメータとして神経症状の早期回復(2,8,24時間後および7,30日後のSSSスコア),入院日数, NIH stroke scale(1,90日後)を測定。
プロトコール非適合の109例を除いた511例(rt-PA群247例,プラセボ群264例)でtarget population(TP)解析を実施。
追跡完了率 プロトコール逸脱率は17.6%(109例:rt-PA群66例,プラセボ群43例)。
【脱落理由】CTスキャンによる診断が不適正,最初の24時間以内のheparin静注など。
結果

●評価項目
90日後のBIスコアはITT解析,TP解析ともに有意差なし(ITT解析:p=0.99,TP解析:p=0.16)。modified RSスコアはTP解析においてrt-PA群で有意差が認められ(スコア中央値:rt-PA群2 vs プラセボ群3,p=0.035),90日後のSSSスコアでも同様の結果が得られた(43 vs 37,p=0.04)。BI/RS複合スコアは両解析で有意差がみられた(ITT解析:97.5 vs 90,p=0.003,TP解析:100 vs 90,p<0.001)。30日後の死亡は,ITT解析ではrt-PA群17.9%,プラセボ群12.7%(p=0.08,相対リスク1.22),TP解析では14.6% vs 11.7%(p=0.36,1.17)と有意差は認められなかったものの,rt-PA群で多かった。
SSSにて測定した神経症状の回復速度は,ITT解析でベースラインから7日後,TP解析では30日後までrt-PA群で有意に良好であった。入院日数はrt-PA群で有意に短縮された(ITT解析p=0.002,TP解析p=0.004)。NIH Stroke Scaleスコアは24時間後にrt-PAで有意差が認められ(ITT解析 p=0.03,TP解析 p=0.004),90日後ではTP解析で有意であった(p=0.01)。
90日後の全死亡は117例(18.9%)であった(rt-PA群69例:22.4%,プラセボ群48例:15.8%,p=0.04)。

●有害事象
脳内出血の発生率は両群で差はみられなかったが,実質型出血はrt-PA群で有意に多かった(p<0.001)。

文献: Hacke W, et al for the ECASS Study Group. Intravenous thrombolysis with recombinant tissue plasminogen activator for acute hemispheric stroke: The European Cooperative Acute Stroke Study (ECASS). JAMA 1995; 274: 1017-25. pubmed
関連トライアル alteplase静注における治療時間の遅れ,年齢,脳卒中重症度の影響, ASSET, ECASS III, ECASS III additional outcomes, ESCAPE, IST-3, J-ACT, LATE 1993, Martin-Schild S et al, Mori E et al, NINDS rt-PA Stroke Study 1995, PHANTOM-S, SAMURAI rt-PA Registry early neurological deterioration, Schellinger PD et al, SWIFT PRIME, TIMI 4, TIMI II Pilot and Clinical Trial, TIMI II Pilot and Randomized Clinical Trial, Toni D et al, TPA Bridging Study, 虚血性脳卒中患者に対するrt-PA療法, 血栓溶解療法後の頭蓋内出血, 前方循環閉塞に対する血栓溶解療法, 発症からalteplase静注までの時間と転帰
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