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第82回日本循環器学会学術集会(JCS 2018)2018年3月23〜25日,大阪
AF患者における疾患やOACについての理解は不十分
2018.4.12
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JCS 2018取材班
赤尾昌治氏
赤尾昌治氏

リアルワールドの心房細動患者における疾患の知識や経口抗凝固薬のベネフィット/リスクについての理解は十分ではなかった。患者への教育的介入により,理解度や転帰がどう改善されるか調査を行う予定-3月23日,第82回日本循環器学会学術集会にて,赤尾昌治氏(国立病院機構京都医療センター循環器内科部長)がTASK-AF Fushimiパイロットプログラムについて発表した。

●背景・目的

脳卒中は心房細動(AF)の重篤な合併症であり,経口抗凝固薬(OAC)はその発症抑制に有効である。しかし,OACの有効性はアドヒアランス不良により低下する。アドヒアランス不良の原因の1つに,患者の疾患と治療に対する理解度が低いことがあげられる。

「TASK-AF(Take Action for StroKe prevention in Atrial Fibrillation)」は,わが国のAF患者における脳卒中予防の現状や課題を明らかにし,患者とその家族,および社会的・経済的な負担の軽減を目的とする,全国的な疾患啓発プロジェクトである。Fushimi パイロットプログラムでは,本プロジェクトの一環として,AF患者の疾患と治療に対する理解度を評価し,その理解度と臨床転帰の関連について検討した。

●方法

国立病院機構京都医療センターにおけるOACを服用している外来AF患者から235例を無作為に選択し,全14問から成る「病気についての理解度アンケート」を行った。本アンケートは全問自由回答方式で,本研究で対象となるのは以下の4項目である。

  • あなたの心臓病の名前はなんですか。(疾患名)
  • あなたの服用している抗凝固薬の名前はなんですか。(薬剤名)
  • その薬を服用することで,どんなメリットがありますか。(OACのメリット)
  • その薬には,どんな副作用がありますか。(OACの副作用)

この4つのアンケート項目の正誤と臨床転帰の関連性を検討した。臨床転帰は,Fushimi AF registry*のデータを用いた。

●患者背景

平均年齢は70.6歳,男性は66.0%,平均体重は59.0kgであった。AFの病型は発作性が41.7%,永続性37.4%,持続性20.9%であった。平均CHADS2スコアは2.0点で,脳卒中/全身性塞栓症12.3%,心不全39.1%,高血圧70.2%,糖尿病29.0%であった。

●結果

4つのアンケート項目の正答率はそれぞれ,疾患名40%,薬剤名56%,OACのメリット46%,OACの副作用26%であった。平均点(1つの質問につき1点,4点満点)は1.68点,内訳は0点31%,1点17%,2点17%,3点21%,4点14%であった。年齢別の平均点は,59歳以下1.96点,60~69歳2.25点,70~79歳1.38点,80歳以上1.26点と,70歳以上の高齢者で低い点数であった。

併存疾患別の検討では,心不全,冠動脈疾患,脳卒中/全身性塞栓症のある患者では,ない患者にくらべ,合計点が有意に低かった(p<0.05)。CHADS2スコアが高くなるほど合計点が低くなる傾向があり,高リスク患者ほど疾患や治療に関する理解度が低かった。

合計点別の脳卒中/全身性塞栓症累積発症率は0点7例(9.5%),1点5例(12.2%),2点1例(2.6%),3点3例(6.1%),4点2例(6.3%)で,患者の理解度とイベント発症との間に関連は認められなかった(p=0.48)。

質問ごとに脳卒中/全身性塞栓症累積発症率の解析を行ったところ,疾患名を誤って回答した患者集団は正解した患者集団にくらべ,オッズ比(OR)が高く(OR 3.54,95%CI 1.00-12.6),疾患名の理解度と臨床転帰に関連があると考えられた。一方で,薬剤名(OR 1.67,95%CI 0.63-4.40),OACのメリット(OR 1.39,95%CI 0.52-3.72), OACの副作用(OR 0.70,95%CI 0.25-1.97)については関連がみられなかった。

●まとめ

AF患者における疾患名やOACのベネフィット/リスクについての理解は十分ではなかった。患者への教育的介入により,理解度や転帰が改善されるかどうか検討する予定である。

*:京都市伏見区のAF患者を可能な限り全例登録し,長期追跡を行うことを目的として開始された前向き登録観察研究で,伏見区内の80施設(心血管センター2施設,小~中規模病院10施設,プライマリーケア診療所68施設)が参加している。2011年3月に登録を開始し,2015年11月までに3,731例のデータが得られている1)

文献

  • Yamashita Y et al. Current Status and Outcomes of Direct Oral Anticoagulant Use in Real-World Atrial Fibrillation Patient –Fushimi AF Registry– Circ J 2017; 81; 1278-85.


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